40.神の従者と真実
「えっとご主人様、まずは彼女の処遇を急がないといけませんよ」
リタちゃんが何やら焦り気味で先ぱいに話し掛けている。
「そうね、あなたとソフィーリアとの話もあるでしょうけど、今はその子の対応を急ぐわよ」
「どういうことだ?」
お豊を見る、意識が無いようだ、しかも少し薄くなってる?
「早くしないと、彼女が消えてしまいますよ」
今度はソフィーが言った、何を知っているのか?
「その子に触れて、あなたの周りの残滓に絡めるように収めるようにしなさい」
「細かいことはいいですから、早くご主人様の仰る通りにしてください」
主従は焦っているようだ、特にリタちゃんが。
「触れて、残滓に絡める?俺の中に仕舞うようにすればいいのか?」
「そうね、そんな感じよ」
手を伸ばしお豊を掴むようにして、俺の中に引き込むようにイメージする。
「あれどこいった?」
「大丈夫です、お兄ちゃんの中で休んでいるはずですから」
なんのこっちゃ?
「旦那様、これが神の従者の正体なのですよ」
ソフィーは知っていたのか。
「リタちゃんもか?」
「はい、私もアンバーもラーラもです。この中で例外はソフィーリア様くらいです」
「まるで俺みたいだな?」
「とてもよく似ているけど、全くの別物よ。あなたは根幹の部分でしょう、この子達は神の力によって維持されているだけよ」
従者のシステムを予め話さなかった訳だ、俺が拒絶反応を示すとでも考えたか?
「自分で言うのもなんだが、今回の件で俺は結構壊れているのを実感したからな。死人だろうと気にはしないよ」
人間の頭に手突っ込んで記憶見たり、人間を指標に転移したりと倫理的には人間のそれとは違うだろうな。
「ん? リタちゃんはなんで肉体持ってんだ?」
「ご主人様に仮初の肉体を与えてもらっているのです。三か月しか保てませんが」
だから、三か月交代なのか。
「それと長い間起こしてはおけないのよ。肉体を与えることでかなり軽減はしているけど、精神が摩耗してしまうの」
「精神体のままにしておくと、かなり危険だってことだな?」
「そうなるわね、最終的に消えてなくなってしまうわ」
「じゃあ、暫くは放置だな、俺肉体なんか作れないし」
「どうかしら、今なら出来そうじゃない?」
そんな都合の良い話があるもんか。
「仮に作るとしたら、どうやるんだよ?人体を構成する要素は、どこまで再現してるんだ?」
「それは全てあなた次第よ、どこまで創り込むかも全てね」
「参考にならねぇな、入れ物であれば内臓など無くても構わないのだろう。最悪、皮だけでも?」
「なるべくなら生前に近い方がいいわ、あくまで摩耗低減のためなのだから」
ふむ、なるほどな。
「俺が一番覚えているのは、こいつがババアの時だな。人体の中身は記憶を頼るか、異常があった際は俺の中に戻せば平気なのか?」
「ええ、問題ないわ。長時間外に放置するので無ければ」
八十歳の頃を思い出す、元気なババアだったな。
身体構造は劣化させる必要は無い、全て新品だが大きさは大人のもの。五感くらいは再現出来ることを祈ろう。
頭を抱え込み思い出しながらイメージを構築していく、頭の中で人体模型や3Dモデルのように動かし確認する、問題はなさそうだ。女性の肌の柔らかさを思い出し適当に服も着せ、再びイメージを構築したら投影する。
目の前に当時の姿が再現されていく、固定化に取り掛かると人間に似せた器が出来上がった。
「こんなもんか? それでどうする?」
三人は興味をそそられたのか、つんつんしたり、肌を触ったりしている。
「人体の再現度が凄いわね、…ああ、引っ張り出して入れてあげなさい」
なんだよ適当だな、分かり易いからいいか。右手の掌を上に向けるお豊を呼び出し、掌に載せるようにイメージそのまま器に押し込む。
立たせたままだと危ないだろうから、鉛筆のように念じて動かし床に寝かせた。
「あなた、そんなことも自然に出来るようになったのね」
そういや、そうだな。
「放っときゃ目覚めるのか?」
そう訊いたら、リタちゃんが近寄っていきお豊の頬を叩いた。
「ん~んん、だれだい?」
冷静に見つめる、問題があったら即戻せるように。
「お豊、目は覚めたか?体の具合はどうだ、確認してくれ」
「あたしに体なんかあるわけ無いだろう、神様ならよく知ってるはず………! なんだいこれ? 感触があるよ!」
まぁ普通は混乱するよな、死んだのを覚えてる訳だし。
「試しに創ってみただけだから、どこかに不備があるかもしれん。確認しろ」
お豊には酷だろうが、面倒になってきた。リタちゃんはどこからか手鏡を持ってきて渡した。
「顔が年寄りなのに、体が肌が若いよ! 体が軽い! 若返ったみたいだよ!」
体の隅々を触ったり、腕を回したり、腰を捻ったりしている。
「構造的には問題はないようだな、五感は平気か?これ食ってみろ」
ウサオ用のキャベツらしき葉っぱを渡した。
「なんだいパリパリと美味しい葉っぱだねぇ」
味覚は平気なのか? イマイチわからんな。
「鼻は利くのか?」
「なにかいい匂いがするねぇ」
リタちゃんの料理か、問題なさそうだな。
「とりあえずは、それで過ごせ。また機会をみて確認をするからな」
顔の作りはババアなんだけど、体が二十代前半くらいと非常にアンバランスなのだが仕方ないか。
「この子は無条件に従者としたのだけど、構わないのよね?」
「事後承諾かよ! ここで消えられても後味が悪い。お豊そういうことだ、今日から俺の従者だからな」
「従者ってなんだい?」
なんて説明したらいい?周りの三方に視線で伺う。皆一様に首を横に振った。
「…丁稚みたいなもんだ」
「この歳になって丁稚とはね。まあいいさね、よろしく頼むよ神様」
「私の後輩になるのよ、覚えておきなさい」
ソフィーがやたらと高圧的だ、一番は死守したいのかね?
「お前ら同部屋でいいな? お豊に異常があっても対処しやすいからな。
しばらく様子をみて、それで判断するが大丈夫そうなら引っ越すぞ」
「はい、旦那様」
ソフィーの笑顔は相変わらず素敵だね…。例の件、話し辛いな。
お豊は首を捻っている、何も説明していないからな。
「まぁお豊にはメイドでもしてもらうか、ソフィーは俺の秘書みたいなもんだしな」
勝ち誇った表情をするソフィーに対し、何も分かっていないであろうお豊、なんと対照的なんだろうか。
「引っ越したら約束守りなさいよね」
まだ覚えていやがったか、飯の話だと食いつきが良いな。
「まぁ今回世話になったし、考えておくさ」
はぁ、俺の周りには若作りのババアしか居ないとか、なんとも言えん気分だな。
あ!俺もか…。
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