第8話 リープだらけの初デート④
次に向かった先は、意外にもゲームセンターだった。
もう夕陽が顔を隠そうとしている。
これが最後だろうか。
「へえー、金堂さん、ゲーセンなんて行くんだ」
「うん、行くよ! プリ撮ったりするし」
麻衣は何だか楽しそうだ。
「え? じゃあ、俺とプリクラ撮るの?」
「え?」
そう言うと、麻衣は顔を赤らめた。
「そ、そ、そんな訳ないでしょう?」
「そ、そうだよね」
俺は、一緒にプリクラを撮るという賭けに出たが、負けてシュンとする。
「今日は目標が有るの。これよ」
麻衣が指さしたのはクレーンゲームだった。
中にはネズミーランドのキャラクターがプライズになっている。
「あのミミーのぬいぐるみがずっと欲しかったんだ。でもなかなか捕れなくて」
麻衣は一瞬残念そうな顔をしたが、直ぐに得意気な顔を取り戻した。
「でも今日は一発で捕れそうな気がするの!」
……そうか、そういうことか。
「まあ、後ろで見ててよ」
そう言うと、麻衣はコインを入れてアームを動かした――
「なかなか捕れないなあ……」
麻衣は、既にタイムリープを十回以上繰り返していた。
俺にはまだ一回しかチャレンジしているように見えない体なのに、その言葉は脇が甘いぞ…金堂さん!
「アームの強さに設定が入ってるから、一回じゃ無理だよ」
「え? そうなの?」
「あと、これは持ち上げるのじゃ厳しいから、ズラす狙いの方が良いよ」
「え……、すご。坂東君、得意なの?」
「まあね。俺が捕ってあげるよ」
そう言うと、俺はありったけの小銭を投入した――
そして千円が消化されたところ。
「あ、今のしまったな。今のアームの設定は良かったんだけど、ミスっちゃった」
俺は、ここぞというチャンスを逃してしまったところで、敢えて麻衣に聞こえるように嘆く。
――ダッ!
――ピカッ!
よしよし、ここは察しが良いぞ、金堂さん!
そして、とうとう……
「獲れたー!」
「やったー!」
ミミーのぬいぐるみを捕ることに成功した俺は、麻衣と手を取り合って喜んだ。
『……!』
しかし二人はお互い気まずくなってその手を直ぐに放した。
「坂東君、ありがとう! 大切にするね!」
――ドキーン!
麻衣の見せた満面の笑顔に、俺の心は見事に射抜かれた。
やっぱり、金堂さんは…可愛い!
「じゃあ、次はね……」
こう言うと、麻衣は少し顔を強張らせた。
「プリ、撮ろっか……」
え?
ええー?!
「い、良いの?」
「今日の御礼と記念よ!」
麻衣はペロっと舌を出した。
――パシャ!
俺達はプリクラ機の中に入り、写真を撮っていた。
撮られた画像を何枚か見るが、今度は俺の顔はどれも強張っている。
一方、麻衣はどれも爽やかな笑顔だった。
今度はタイムループは無かった。
恐らく、このプリクラだけは、たった今の思い付きだったのだろう。
それが俺には嬉しかった。
「この写真でいいよね? えーっと……」
麻衣が写真を選んでデコレーションを入れる。
俺はその様子をただただ眺めていた。
「坂東君の下の名前は、洋祐よね?」
「うん、そうだけど……」
そう言うと持っているペンを走らせ、「ヨースケ」・「マイ」の二つの名前を書き出した。
「改めて、私は麻衣、金堂麻衣よ。今度から下の名前で呼んでよね!」
「え、あ……、うん。金堂さん」
「違うって。麻衣って呼んでよ、洋祐君!」
「う、うん……。麻衣さん」
俺は上の空だった。
俺の心は完全に奪われちゃったよ…麻衣さん!――




