第17話 真剣PK勝負②
「えーっと、ここに受付を作って。ここを待機場所にして……」
麻衣と池谷が相談をしながらメモをしている。
生徒会が終わった今、俺も含めた三人はサッカーグラウンドで企画イメージを立てている。
「じゃあ、実際にPKやってみるか」
突然、池谷が俺の方を見ながら言った。
「坂東さ、キーパーに立ってみてよ。俺が蹴るからさ」
「え……、俺が?」
「まあ、遊びみたいなもんだよ。ちょうど一個サッカーボールが転がってるしさ」
当然、俺はサッカーを本格的に取り組んだ経験は無い。
「三回蹴るから一回でも止めてみなよ」
池谷は爽やかに言う。
……これは……。
絶対、麻衣に良いところを見せたいんだ!
麻衣の方を振り向く。
麻衣は心配そうな顔をしている。
断るのもカッコ悪いな……。
どうせお遊びだし。
「……分かったよ。三回だな」
「お。良いね! じゃあ、やろう。その前に、麻衣ちゃん、ちょっと」
そういうと、池谷は麻衣の腕を掴んで連れ出した。
俺から少し離れたところで、二人は何やら話をしている。
何の話をしてるんだ?
暫く話をしていると、話が終わったのか、池谷は転がっているボールを拾ってPKエリアに着いた。
「……お待たせ、さあ始めようか」
「分かった」
その言葉を聞いて、俺もゴールポストに着く。
麻衣もまたゴールポストの裏に来て、俺達を観戦する形となった――
――ザシュッ!
池谷が放った一発目のシュートが、ゴールネット右上に鋭く突き刺さる。
俺は一歩も反応出来なかった。
は、速え!
ま、いっか、どうせゲームだし。
捕れないのは仕方無い。
――ダッ!
――ピカッ!
え?
俺は再び一球目を蹴ろうとする池谷の前で、ゴールポスト前に立っている。
どうして?!
「これは右上よ」
麻衣が俺にちょうど聞こえるぐらいの声で囁く。
麻衣は答えを教えてくれようとしているのだ。
どうして?
――パンッ!
俺は池谷が蹴ると同時に右上にジャンプして、ボールをパンチした。
「な……」
池谷は、自分の渾身の一発が止められて驚く。
俺は得意な顔をして麻衣の方を振り向いた。
一発止めればいいんだろ、麻衣さん!
「次は決めるぜ!」
池谷は気合を吐いた後、二球目を蹴った。
――ザシュッ!
今度はゴールポスト左真ん中に突き刺さった。
俺はまたしても動けなかった。
まあ、一本止めてるんだからいいだろう。
――ダッ!
――ピカッ!
そして俺はまた池谷の二球目と向かい合う。
だから、どうして?
一発止めただけじゃダメなの?!
「これは左真ん中よ」
やはり麻衣が俺にちょうど聞こえるぐらいの声で囁く。
「次は決めるぜ!」
池谷は気合を吐いた後、二球目を蹴った。
――パンッ!
俺は池谷が蹴ると同時に左真ん中にジャンプして、ボールをパンチした。
「マジかよ……」
いよいよ池谷は焦燥感を込めて吐き出した。
麻衣さん、どうしてなんだ?
俺はハテナで一杯だった。
「最後は決めるぜ!」
――ザシュッ!
池谷の三球目はゴールポスト右上に突き刺さった。
――ダッ!
――ピカッ!
再び池谷の三球目と向き合う。
「これは……」
麻衣がコースを伝えようとする
……が、
「コースは言わないで!」
俺はそれを制止した。
何故そうしたか、自分でも良く分からなかった。
でも、これじゃフェアじゃない気がした。
とはいえ、俺もコースは分かってしまっている。
「池谷! 次は右だろう?」
俺は池谷に向かって声を掛けた。
「……さあな」
池谷は冷静に受け流す。
これでボールがどこに飛んでくるか分からない。
「な、なんで……?」
後ろで今度は麻衣が困惑している。
俺は振り返り麻衣をキッと見つめる。
「俺を信じて!」
麻衣さん、これで良いんだ。
「最後は決めるぜ!」
池谷が動作を始めた。
俺はその動きを注視する。
軸足は右を向いている。
が、それはきっとフェイント。
――パンッ!
ジャンプ一番、左真ん中に飛んだ俺は、池谷の三球目を弾き飛ばした。
「嘘だろ……」
池谷が膝から崩れ落ちる。
俺は麻衣の方を振り返った。
「どうだ!」
俺は満面の笑みで麻衣を直視した。
麻衣は顔を赤らめている。
「やっぱ真剣勝負はこうじゃないと楽しくないな!」
俺は自分で言いながら、やっと自分を理解できた。
やっぱり、勝負事は自分の力で解決しなくちゃ。
でも、どうして麻衣さんはこのゲームで、俺の勝ちに拘ったんだろう?
「池谷君、この勝負は洋祐君の勝ちよ」
「分かったよ……」
麻衣はとどめを刺すような言い方をした。
そしてもう一方の池谷はうなだれていた。
二人に何が有ったんだ?
その意味を教えてよ…麻衣さん!――
「ふーん、坂東君ね。良さそうじゃない……」
その時グラウンドの端からは、生徒会長の鈴岡奈美がその光景を見つめていた――




