第10話 涙のWデート①
転校初日と翌日は驚き満載の二日間だった。
が、その後は平穏な何日かが続いた。
たまに教室で麻衣が何かをミスったのかタイムリープをすることは有ったが、俺は慣れてしまっていた。
それよりも、それ以外に麻衣と接点が無いことにやきもきしていた。
――もっと距離を詰めたい……。
そう思っている矢先に、それは向こうからやってきた。
「ねえ、洋祐君……」
改めて麻衣から洋祐君と言われるとドキッとする。
「どうしたの、麻衣さん?」
「今度、一緒にネズミーランドに行ってくれない?」
「え?!」
俺の心臓は飛び出しそうになる。
「留美が、池谷君とデートの約束を取り付けたんだけど、二人きりじゃ緊張するから私に来てほしいって言われてて」
「池谷君って、あの池谷免太?」
「そう……」
――池谷免太……。
あだ名は、名前を略して「イケメン」。あだ名の通り、爽やかなイケメンだ。
女子から人気が有るので、転校して間も無い俺にも、嫌でも耳に入る。
「それで、どうして俺が?」
「私が行っても三人じゃ気まずいから、留美にはもう一人連れて行っていいかって聞いたのよ。そうしたら『それでもいい』って言うから」
「それなら他の人でも、何なら女子の友達でも良いじゃん」
「そうなんだけど……。洋祐君と一緒なら留美を色々サポート出来るかなって……」
ははーん。
そういうことか。
何かの時にタイムリープして、助ける余地を持っておきたいのね。
俺は察したところで、多少はショックを受けていた。
純粋なデートの誘いかと思ってたのにな……。
「オッケーしてくれる?」
俺は少し意地悪な気持ちになった。
「うーん……、どうしようかな……」
すると、麻衣は後ろを向いた。
マズい!
タイムリープされる!
「ちょ、ちょっと待って、麻衣さん」
「え?」
「うん、良いよ。ネズミーランド、行くよ」
「良かった!」
だって、断ったら何度もタイムリープするんでしょ?
断れないじゃん!
……と、心の中で毒づきつつ、心の底では喜んでいた。
麻衣さんとデートが出来る!(Wデートだけど……)
「それで、いつなの?」
「今度の日曜日、九時にネズミーランドの入口集合なんだけど、大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
麻衣は嬉しそうな顔をした。
よし、これはチャンス!
距離を縮めるぞ!――
日曜のネズミーランドは混んでいた。
俺は開門前のネズミーランドの入口で三人を待っていた。
「あ、坂東君!」
留美が俺に気付いて駆け寄ってきた。
北島留美―― 俺の認知するところでは、麻衣の一番の親友だ。
俺達のクラスメイトでもある。
「やあ、北島さん。皆は?」
「もうすぐ来ると思うんだけど……」
留美がそう言いかけた矢先、
「よう!」
「留美、洋祐君!」
池谷と麻衣が一緒に現れた。
「池谷君、麻衣! 一緒に来たの?」
留美の表情が少し蔭る。
「うん、最寄駅でばったり会って……」
麻衣が少し申し訳なさそうな顔で言った。
くそー!
イケメンの野郎、麻衣さんと一緒に来るとは!
「留美ちゃんと、その隣は?」
池谷が俺に目を向けて言った。
「俺、坂東洋祐。二年A組に転校してきたばっかなんだ。よろしく!」
「俺は池谷免太。よろしくな!」
池谷は爽やかな笑顔を振りまいた。
まあ、いい奴、なのかな?
「それじゃ、入ろっか」
池谷がやはり爽やかに先陣を切った――




