45.新しい痕跡、見つからない足取り。
夏季休暇に入り比較的静かな修道院。——といっても、休暇中なのはシスター達だけでイギリス教会本部としては変わらず稼働中。だから、私達狩り人や神官は至って普通に通常業務で、かく言う私もデスクに向かって仕事を片付けていた。
「錯覚魔法?」
そんな最中、鑑識課から報告に来たレイの言葉に私は思わずオウム返しする。すると、彼女は理解の及ばない私に付け加える様に報告する。
「はい。先日、あかり、エカチェリーナら六名が対処した悪魔の現場で、僅かですが錯覚系魔法の反応が検出されました。」
そう答えてレイは捜査書類を手渡した。それを私は静かに受け取り内容を徐に読み上げる。
「事件現場数か所に亘って上記六名の魔力に属さない魔法、ないし魔術の反応あり。照合の結果、錯覚系に属するものである事が判明。——ただし、錯覚系のどの魔法のものであるかは痕跡の少なさから照合不可能・・・か。」
そういえばあの事件。当時、悪魔の存在に気付いた者はあかり達以外に居なかったって聞いたなー。それも、狩り人やシスターではないにしろ少なくない数の魔女が居たにも拘らず。——その理由がこれか・・・
「でも、どうしてこれを私の所に?あの悪魔の捜査なら、捜査二課の担当のはずだけど。」
「それが・・・」
私の問いかけにそう言葉を濁してレイは急に顔を曇らせた。というのも、今回討伐された悪魔の階級は中三級程度。中・下級の悪魔の捜査は捜査第二課の担当となる。でも、私が担当している捜査第三課は魔女や魔導兵器絡みの事件捜査が担当、だからレイが私の所に捜査資料を持ってくる通りはない。
レイのその反応に訳も分からず私が首を傾げて彼女の顔を覗き込むとレイは苦い顔をして徐に答える。
「その、検出された魔法が悪魔のものではない可能性が・・・」
「——っ。」
レイから出てきた予想外の言葉に私は再び資料を確認した。すると、そこには確かに六名だけではなく悪魔の魔力とも合致しなかったと記載されている。
でも、それって——
「検出された魔力が今回討伐された悪魔のものとも僅かに異なっておりました。それどころか悪魔特有の魔力も観測されず・・・その・・・」
「魔女によるものである可能性が高い、と・・・それで私の所に。」
苦しそうに捜査内容を説明したレイに私は椅子の背もたれに寄りかかって肩を落とした。
大方、行き詰った捜査の果てに担当外の痕跡が見つかったから、こちらに仕事を投げたって事かな・・・面倒だなぁ・・・
「痕跡は追えた?」
憂鬱な気持ちを抱えながら私がそう尋ねるとレイは表情を暗くして静かに答える。
「いいえ、なんせあの人込みでしたから。痕跡が混在してしまって・・・」
「そりゃそっか。」
「すみません。それと——」
「まだあるの?」
ただでさえ仕事が増えた事に憂鬱なのにレイは更に資料を手渡し面倒くさい事実を私に話す。
「検出された魔力の波長を過去のデータベースと照合した結果、以前街中で起きた通り魔事件、その現場で極僅かに検出された正体不明の残留魔力と波長がほぼ一致しました。」
「えっ、まさか・・・」
そう漏らして私は眉をひそめながらレイから渡された新しい書類に目を通す。そこには魔力波長の一致率九十一%という文言と一緒に二つの魔力の波長が重なる様に描かれたグラフが記されている。
「波長以外の類似性は?」
「確認できませんでした。ただ、これら二つは同一人物のものと見て間違いはないかと。」
私の言葉にレイは即座にそう答えた。———でも、そうだよね。魔力が一致したって事はそういう事になるよね・・・
「・・・・確かあの時は、残留不十分で事件とは無関係だって判断されたんだよね。・・・それが、な~んでこんなものと・・・・」
そう言って私は資料片手に背もたれにもたれ掛かって天井を仰ぐ。当時もこの魔力は気にはなったけど、あまりに魔力が少ないから当然痕跡は追えないし誰のものか照合を掛ける事も叶わなかった。そもそも、事件当日に現場にいたかどうかも怪しかったくらい微かな痕跡だった。
そんな魔力が今回の錯覚魔法と魔力が一致した・・・一体、どうして———
「・・・そういえば、あの時紛失した魔導兵器・・・・図った様に痕跡が追えなかったな。——これがもし今回のものと同様に錯覚系魔法なら・・・・・・いや、でも———」
「・・・・・」
「分かった。調べてみる。」
「お願いします。」
そう言葉を残して事務室から出ていくレイの後ろ姿を見送って私は改めて自分の机に向かい合う。
まさか、この間の事件と通り魔事件とにつながりができるなんて・・・それも、知覚機能を鈍らせる錯覚魔法と、なんて・・・
同じ魔力が検出されたという事は同一の人物なり生物なりが関わっている事は確実——そして、あの通り魔事件でもし錯覚魔法で痕跡を偽装されていたのなら、紛失した魔導兵器にもある程度の説明はつく。
だけど、もしそうならその工作をした魔術の痕跡が少なからず残るはず。なのに、あの場で検出されたのはほんの少しの何者かの魔力だけで魔術的痕跡は無かった。それは、私を含め現場検証を行った狩り人・神官全員が確認している。
それに、あの量なら魔法を使ったとも正直考えにくい。よっぽど、事件が起きる随分前に偶然あの場を通りかかったといった方がまだ説得力がある。
ってなると、余計に分からなくなっちゃうな。あの魔導兵器はどうやって姿を消したのか。一致した魔力の関係性は何なのか。そして、二か所の騒動の現場に何故それは居合わせたのか・・・
悶々と巡る堂々巡りに頭を抱えた私は堪らず席を立ち修道院を飛び出した。机と向き合っていたって答えなんて出ない。もう一度改めて二つの事件の聞き込みをして、情報を集めるしかない。
・・・なんて、そんな事を考えながら息巻いて通り魔事件の現場に来たのはいいものの。流石に目新しい痕跡なんて残ってないよね・・・はぁ・・・
元々ここは人通りが少ない路地裏。だから、もしかしたらなんて思ったけれど。事件が起きたのはもう数か月も前、それだけ時間が経過していれば痕跡なんて風化して欠片も残ってない。
加えて、現場がこんな陰湿な場所じゃ聞き込みも期待できない。
「・・・・・」
私は諦めた様に肩を落として今度は街中の事件現場へと向かった。とぼとぼと重い足取りで不気味で薄暗い路地裏から出た私は日の当たる表通りに戻ると道なりに歩く。
ここまで来れば人通りも多くなり次第に街の人達とすれ違い始める。行き交うその人達は至って普通の表情で各々の目的地へ楽し気に、或いは黙々と歩いている。
ゆっくりと、町は日常の姿を取り戻し始めている。
「・・・・・」
そんな、ありふれた日常の光景にほんの僅かな不気味さを覚えながら私は視線を落とした。
・・・疑念は、まだ一つある。
今回街中で起きた悪魔討伐。現場で錯覚魔法が使われていたという事実があって、そして、現場に居た人間の証言から悪魔を認識できなかった事からも、第三者によって悪魔は意図的に正体を隠していたことは明白。
でもそれなら、どうしてあかり達は悪魔を探知する事が出来たんだろう。彼女達がもしも気づかなければ、おそらくあの悪魔の発見はできなかったでしょう。
なのに、見つけられた。正体を隠していた割には妙に杜撰・・・この矛盾は、一体なに・・・・?
———むしろ・・・・意図的にあかり達に察知させた?
「・・・・まさか・・・ね・・・」
「サリー!」
考えの果てに私の口から漏れ出た言葉をかき消す様に遠くから同僚のケイの声が聞こえる。私は組んでいた腕を下ろしてその声がする方へ視線を向けると、かなりラフな格好のケイが私の元に駆け寄ってくる。
「ケイ、どうしてここに?」
「うちは今日非番だから。サリーこそ、どったの?」
呑気にそんな事を訊いてくる彼女に私はため息交じりに肩を落として答える。
「捜査よ、捜査。ほら、この間あかり達が討伐した悪魔の事件、あったでしょ?」
「ああ、あったね。」
「あの現場で錯覚魔法の痕跡が見つかったのよ。」
私の言葉にケイの表情が歪んだ。
「・・・え、錯覚魔法?」
「うん。で、それがまた魔女の仕業っぽいんだよね。」
「えっ、えっ、どゆこと?・・・」
そして、まるで意味が分からないといった表情で私に詰め寄ってくるから私は素直に肩を竦めて答える。
「ほら、あの事件。あかり達以外は悪魔に気付いてなかったじゃない?」
「あー、そーいえば、捜査二課の子がそんな事ボヤいてたなー・・・えっ。じゃあもしかして、誰かが気付かれないように細工してたっていうの?」
「その可能性が出てきたの。まだ分かんないけど・・・あと、その魔法の魔力が通り魔事件ともつながっちゃって——」
「通り魔事件とも⁇なんで?」
再び驚いた声を上げるケイに対して私はため息交じりに続きを話す。
「正体不明の残留魔力があったでしょ?それが選りにも選って錯覚魔法の魔力と一致しちゃったの。おかげで追加捜査よ。」
「あー・・・うん。大変ね。」
「他人事だな~、もう・・・こっちは頭が沸騰しそうだって言うのに。」
自分の担当じゃないからってお気楽なケイに妬ましさを感じながら私は肩を落とした。
「まあまあ。————しかし、穏やかじゃないわね。」
私を投げやりになだめるケイが急に真剣な面持ちでそう言葉を漏らす。そして、その言葉に私は視線を落として静かに同意した。
「もしこれが魔女の手によるものだったら、裏で悪魔を操ってる人物がいるって事でしょ?それもストレガで事を起こすなんて、相当の・・・」
「・・・・・」
ケイが濁した言葉に私は返す言葉を見つけられない。——実際、こんな芸当は人間の手によるものである可能性が高い。更に言えば修道院の神官や狩り人に気付かれる事なくこんな細工ができたという事は、相当に用意周到で高度な技術を持っている事は明白・・・
なら、これはきっと、私達捜査部には手に余る事案——
「・・・執行四課には報告した?」
低いケイの声が私に尋ねる。
執行第四課、捜査三課が魔女絡みの事件を捜査する部署なら執行四課は魔女や魔導兵器犯罪の刑罰を執行する部署。被害者の逮捕や討伐は彼女らの仕事になる。けど———
「・・・・まだ。だって、まだ疑念の段階だもの。不確定な情報を報告する訳にはいかない。」
ケイの言葉に私は小さく首を振って低く静かにそう答えた。
実際、魔女がやったとは今のところは断定していない。もしもこれをやったのが魔物であった場合も、当然悪魔の魔力は観測されない。何故なら、人間と魔物の魔力にはそれほど違いが無いから。そんな奇妙な事が起こるなんて考えにくいけど、人間がやったという証拠がない以上、これを否定はできない。
「・・・あんまり無茶しないでよ?あんたの仕事はあくまで捜査、刑罰執行は執行部にやらせればいいんだから。」
私の事を心配してケイがそんな事を口にする。その言葉に私が小さく頷くとケイは私の頭を優しく撫でてこの場を後にした。
彼女の手の温もりを深く感じながら急に撫でられた頭を押さえて私は彼女の後ろ姿を静かに見送る。
——でも、その私の脳裏に、かつての記憶がフラッシュバックする。
『————殺してやる!』
耳の奥にへばり付いた少女の甲高い声。
嫌味の様に煌々と照り付ける太陽の下に広がる真っ赤な血と横たわる少女の亡骸。
鉄臭い血と焦げ臭い硝煙の匂い
それらを目の当たりにして、私は強烈な吐き気と動悸を覚えた。
その光景、匂いに何の感情も抱かない周囲の人間にさえも・・・・
「・・・・・・・・」
知らず知らずの内に強く握り締めていた拳を開いた私は建物の壁にもたれ掛かり開いた手で顔を覆った。
忘れられない記憶・・・薄れる事のない、あの感覚・・・・
脳裏にこびり付いたかつての記憶に冷や汗が滴り落ちる。
「・・・・・はぁ・・・」
いつまでも、囚われている訳にはいかない。
前に・・・前に進まないと・・・・
「はあ・・・・やっぱりダメか・・・」
その後も諦めずに聞き込みをしたけど、有益な情報は得られず時間ばかりが過ぎた。これでもかなりの人数から話を訊いたんだけど、どれもパッとしない。
あまりの手応えの無さにただただ疲労が募る。
・・・無理もないか。なんたって状況が悪い。ただでさえ大勢の人が集まる町の中心街広場、そんな場所で尚且つパニック状態に陥っていた市民が現場を鮮明に覚えているとは思えない・・・
「はあ・・・・」
もう、私の口からはため息しか出てこないんじゃないだろうか。そう思えてしまう程に気が付けばため息を吐いてる。
捜査は根気勝負——なんて、分かってるけど、こうも戦果が無いとやる気も落ちる。新たに発覚した事実も事実だし、もういっその事こんな仕事を投げ出したい・・・
なんて早くも挫折しそうな私は近くにあったベンチに腰を下ろした。その瞬間、身体が泥の様にベンチにへばり付き力が抜け落ちる。
「・・・・・」
見上げた青い空、白い雲。じりじりと刺す様な日射しの暑さに私はうなされる。
時々、町を吹き抜ける風に僅かな涼しさを感じるけど、絶えない暑さがその清涼を塗り替えてしまう。
この暑さがまた、私の思考を鈍らせてる気がする・・・
「・・・・・」
現状、分かっているのは一致した謎の魔力と追えない痕跡。そして、とことん情報が無い事———現場を処理したあかり達にも改めて聴取しないとはっきりとは言えないけど、これじゃあまるで、幽霊でも相手にしているみたい・・・
———むしろ、たまたま一致しただけなのかな・・・?
「おつかれさま。」
私が考えに浸っていると急に背後から声を掛けられる。唐突に掛けられたその声に驚いた私が聞こえた方へ視線を向けると、そこに立っていたのはリンの同僚のヴィクトリア・バルツァだった。
「ヴィクトリアさん。どうしてこちらに?」
急いで身だしなみを整えた私がそう尋ねると彼女は仄かに笑みを浮かべながら首を傾けて答える。
「出張の帰り。これから修道院に報告ってとこ。そしたら知ってる顔が見えたから、寄ってみたの。それよりサリーは?何してるの?」
「私は捜査ですよ。新しい痕跡の報告が上がってしまって、その再捜査です。」
「あらそう、それは大変ね・・・・あ、そういえばリンから聞いたよ?ストレガでの悪魔討伐。またあかり達が関わってるんだってね。」
「あ、はい。でも、今回討伐に至った要因は———」
「聞いてる。エカチェリーナの暴走だったらしいね。いつも冷静な彼女にしては珍しく。それで、あかりはそのサポートだって。」
そう言いながらヴィクトリアは私の隣に腰を下ろした。そして、傍らに置いた小さめのスーツケースからチョコのお菓子を取り出して私に勧める。
でも、私がやんわりとそれを断ると彼女は寂しそうに差し出した手を引っ込めて代わりに自分がそのチョコを食べた。
「——にしたって、彼女も無茶するよね。」
「無茶、というと?」
どこか楽し気に発したヴィクトリアの意味深な言葉に思わず私は同じ言葉を尋ね返した。すると、彼女は私に静かな笑みを浮かべて答える。
「市民を守る為にわざと攻撃を受けたんでしょう?」
「あー、はい。悪魔の攻撃を自ら受け止め、その際に腕と肩を負傷しました。ですが、自ら治療した為に大事には至ってません。魔力汚染も確認されませんでした。」
「そう。無事なら何より。———でも、少し気になるね。彼女。」
「・・・気になる?」
中々本質が見えてこないヴィクトリアの話に私が改めて彼女に尋ねると、彼女は神妙の面持ちで眼前の街を眺めて徐に語り出す。
「彼女は悪魔の攻撃から市民を、仲間を、文字通り身を挺して守った。それ自体は実に素晴らしい功績だし、私達狩り人であれば別に不思議な事ではない。けど・・・彼女はまだシスターだよ?それもまだ、入って一年足らずの。」
「・・・・・」
「そんな彼女が、仲間や市民に悪魔の攻撃が及ぶ事を飛来する僅かな一瞬で理解し、死の恐怖を顧みず自ら受けて被害を防いだ。・・・とても、修道院に入りたてのシスターが下す判断とは思えないなぁ。それどころか、こんな事現役の狩り人でさえもできる者がどれだけ居るのか・・・」
低く真剣な声で語るヴィクトリアの言葉に私は何も答えない。———いや、答えられなかった。
「今回の事だけじゃない、彼女はグリゴリの時の事もある。彼女の行動と判断は、明らかにシスターの枠組みから逸脱している。それを喜ばしいと捉えるべきなのか。それとも危険だと判断すべきなのか——実に、悩ましいところね。」
「そう、ですね。」
私も、感じた。あかりのあの異質さ。
あの事件の後、彼女が言ったあの言葉、あの笑み。彼女は明らかに街中での戦闘の危険性を理解していた。
理解した上で、自らあの戦闘に加担したんだ・・・
だからきっと、彼女の行動や思考は私達狩り人とそんなに違いは無い。
でもそれは、それだけ戦闘の経験があるという事。それも、決して少なくない数の実戦を彼女は経験している。それは、私達にとって即戦力であると同時に、修道院の外で戦闘等の問題を起こす危険性を秘めているという事。ヴィクトリアが素直に喜べないのもそういった事があるから。
・・・・でも、あかりはそんな子じゃない気がする。
これは、完全に私の主観だし希望的憶測でしかないかもしれないけれど、あの時の、あの表情を見せた彼女は・・・なんだか———
「あ。到着予定時間過ぎてる。」
悶々と巡る私の思考を遮る様にヴィクトリアが気の抜けた声で爆弾のような言葉を漏らした。その言葉に私はかなり動揺して慌てて彼女に状況を確認する。
「えっ。そ、それって不味くないですか⁇」
「うーん。まあ、大丈夫でしょう。」
「大丈夫な訳ないじゃないでしょう!早く行ってください!」
状況と相反してマイペースなヴィクトリアに私は声を荒立ててそう言い、移動を促す様に彼女の背中を押す。
「わかったわかったから。じゃあサリー、ばいばい。」
私に急かされて渋々そう言ったヴィクトリアは手を振って修道院の方へ歩いていく。そののんびりとした雰囲気に、私は肩を落としてため息を吐く。
時々、私は彼女が心配になります・・・
・・・そんなこんなで捜査にもヴィクトリアにも翻弄された一日は過ぎていく。
結局、特にこれといった情報も得られずに一日の捜査が終わった。
分かったといった事といったらやっぱりとことん痕跡が少ない事と、動揺と人が多すぎて誰も何も思えていない事。あと、子供がでかい蜘蛛を見たって言ってたっけ——でも、それくらい。
これは、思った以上に面倒な捜査になりそう・・・・
「・・・はぁ。本当に、なんでこんなもの・・・」
頭を抱えながら鑑識の資料に目を落とした私は静かな部屋で一人すっかり氷が解けて薄くなったカフェオレを口にした。




