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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
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3.寮の部屋、ルームメイト

 驚くべき事に、人間の女性には魔力に対する強い耐性がある事が判明した。それによって魔力による汚染被害を受けずに魔法を行使することが可能である様だ。更には動物や植物にも同様に魔力に耐性があり、同様に魔法の行使が可能である事が判明した。


 しかし、それらに反して人間の男性は魔力の耐性というものが著しく欠落しており、僅かでも抵抗値を超えてしまうと魔力に呑み込まれてしまうと言う脆弱性を持っていることが発覚した。


 その為、人間の男性は魔法を使うことは出来ない。


 ————『終焉(第四章五節)』ルイス・カルバーナ 著



 エリの案内で無事に寮へたどり着いた私は寮長のソフィーに案内されて自分の部屋に案内される。


「もう。なかなか来ないから心配したじゃない。遅くなるなら連絡くらい入れてくれないかしら。」


「すみません。」


 キャリーケースを引きずるように持ち上げて階段を上がる私は息切れしながら力なくそう答えた。お金が掛かるからって荷物を郵送しなかったのは間違いだったかもしれない。


 ・・・などと、ここにきて後悔する。


 そんな私のどうしようもない後悔も余所に、息も絶え絶えな私を気にすることなくすいすいと歩いて行ってしまうソフィーに私はほんの少し憤りを感じつつ必死に後を追う。


「他の子はもうとっくに着いてるから挨拶を忘れないでね。くれぐれもケンカなんかしないように。鍵はオートロックだから生徒証を忘れないでよ?門限は特にないけど、あんまりにも遅くなるようなら連絡を入れて。何か質問は?」


 目まぐるしく説明したソフィーに圧倒されながらも私は質問を一つ尋ねる。


「何で生徒証なんです?」


「カードキー替わりよ。中にICチップが入ってるの。寮だけじゃなくて修道院の特定の教室に入る時とかも使うわ。ただ、学年によって制限があるから気を付けなさい。」


 そう言い終わるとソフィーはある一室の前に止まった。ソフィーにつられて私も立ち止まると彼女はようやく私を見て言った。


「ここがあなたの部屋。さっきも言ったけどもう他の子は中にいるからケンカしないように。寮生活していく中で何か必要なものがあれば、申請さえしてくれれば可能な限り用意するから。」


「分かりました。ありがとうございます。」


「ドアのここに生徒証をかざせば鍵が開くから。それじゃ、何かあったら言って。」


 そう言い残すとソフィーは去っていった。


 なんだかちょっと厳しそうな人だったな。なんて思いながら私はソフィーに言われた通りに生徒証をかざして鍵を開けた。


 扉を開けて中へ入ると中は想像以上に広く・・・・・・というかあり得ないほど広かった。


 廊下のドアの間隔から中は結構狭いはずなんだが、普通に家として住めるくらいの広さがある。


 玄関を入ってすぐに大きな窓の付いた広いリビングがあり、その脇にはキッチン、振り返れば吹き抜けになった二階とそこへ上がる階段、更に他の部屋につながる扉が下と上を併せて六つもある。


 何?ここにある物は全てが全て規格外に大きくて広くする規則でもあるの・・・


 そんな馬鹿げた事を考えていると、二階の一室のドアがガチャリと音を立てて開き、中から長い茶髪の少女が現れた。その子は灰色のスエットにジーンズのショートパンツ、黒色のベストを羽織っている。


 彼女は不思議そうに私を見つめるとゆっくりと口を開く。


「あなたが最後のルームメイト?」


 そう言って彼女は階段を下りて私の元へ近寄ってくる。私は彼女の言葉に同意してすぐに言葉を返した。


「はい、梅沢あかりです。これからよろしくお願いします。」


「そんな堅苦しくならなくていいのに。私エレナって言うのよろしく。」


 優しく微笑んだ彼女に私は少し安心する。寮長は厳しそうだったけどルームメイトは優しそうだ。


「それで、そこのソファーで寝てるのがヘレンね。」


「へ?」


 いきなり言われて驚いた私はすぐに振り返りエレナが指さした場所に目を向ける。すると、そこには確かにもう一人少女がソファーに横になって眠っていた。


 エレナにヘレンと呼ばれた彼女は淡い紫色のだぼだぼの服に黒色のパンツを履いており、紺色の髪色をしたボブヘアーを広げて寝息を立てている。


「私とヘレンは幼馴染でね、小学生の頃からずっと一緒なの。」


「へ、へぇ。そうなの。」


「ヘレン、ちょっとヘレン起きて、最後のルームメイト来たよ?ちゃんと挨拶して。」


「あ、そんな無理に起こさなくても・・・」


 そんな私の言葉は彼女には届かず、エレナはヘレンの身体を揺すって彼女を起こす。ヘレンは嫌そうにうなだれながらも泣く泣くその重い目蓋を開けて起き上がった。


「もう朝?」


 寝ぼけているのか眠そうにそう言ったヘレンに、エレナはため息を吐いて呆れたように言う。


「そんな訳ないでしょ?もう・・・」


「えぇ・・・じゃあ寝る。」


 そう言ってヘレンは再びソファーに横になった。


「ちょっと、だからって寝ないで。てか、これからご飯にするんだから起きてよ!もぉ~!」


「・・・大変だね。」


「ホントよ、全く。えっと、実はあと一人いるんだけど今出かけてて・・・もうすぐ帰ってくると思うけど——」


 エレナがそう言った傍らからガチャリと音を立てて玄関の扉が開く音がする。そして、玄関の方から誰かの声が聞こえてくる。


「ただいま~」


「あ、ちょうど帰ってきた。」


「ごめんなさい。ちょっと寄り道してたら遅くなっちゃいまし、た・・・」


 リビングへ現れたその人は、ほんの少し前に修道院で私が助けた少女だった。服装は白いブラウスに若草の様な淡い緑色のロングスカート、その上にピンク色のカーディガンを羽織っている。髪はボブより少し長いくらいかな。


 赤みがかった茶色の髪を揺らして驚きの表情を見せる彼女に私は言葉を漏らす。


「あなたさっきの・・・」


「ん?なに?知り合いなの?」


 怪訝な表情でそう尋ねたエレナに私は少し言いよどみながらも言葉を返す。


「うん、修道院でちょっとね。」


「さ。」


「「・・・さ?」」


 少女の不自然な言葉に思わず私とエレナの声が重なる。どうしたのかと私達が思っていると少女は私に向かって深々と頭を下げると声を張り上げて言った。


「さっきはありがとうございました!あなたが居なかったどうなっていたか・・・」


「・・・え、何があったの?」




「——へぇ、そんな事が。」


 リビングのソファーに腰かけた私達は修道院での事を大まかに話すと、それを聞きながらエレナは私と少女にお茶を出してそう言った。出されたそのお茶を受け取った少女は更に言葉を加える。


「はい。あの時、私は動揺して頭が真っ白になっちゃってたので、あなたがいてくれて助かりました。本当にありがとうございました。」


「いえ、怪我がなくてよかったです。」


 私がそう言って微笑むと彼女は思い出したように私を見て話した。


「あ、自己紹介がまだでしたね。私、フレンダ・ハミルトンって言います。」


「私は梅沢 あかり。これからよろしくね。フレンダさん?」


「フレンダって呼んでください!あかりさん!これからよろしくお願いします。」


「私もあかりでいいよ。」


 私達の自己紹介が終えると突然エレナが立ち上がりどこからか出したエプロンを着て言う。


「さて、ルームメイトとの交流もいいけどさ、そろそろご飯にしない?」


「そんな時間ですか⁈・・・ほんとだ。そうですね!じゃあ私手伝います!」


「ありがと。あかり、あなたはその荷物を自分の室に置いてきなさい。」


「はい。」


 エレナにそう言われて私はまだリビングに置きっぱなしだった荷物を持って二階へ上がる。


「あなたの部屋は階段上がって一番奥だからねぇ!・・・ちょっとヘレン‼いい加減起きてよ!」


 エレナのそんな声を聞きながら私は自分の部屋に入る。


 個人部屋は一般的な寮の一室といった広さだろうか。ベッドに机と本棚があり、クローゼットや押し入れまである。これだけあれば一人部屋として不自由はないだろう。


 だが、一番奥の壁には何故か窓がついていて外が窺える。窓の方向は多分廊下側だから穴を開けても外は見えないはずなんだけど——


 ・・・そもそもこの寮の部屋自体がいろいろとデタラメだから今更と言えば今更か。


 私はキャリーケースをベッドの片隅に置いてベッドに腰を掛けた。


 ここにきてエリ以外の人と会話をしたけど不審に思われなかっただろうか?周囲の人から変な目で見られないように女子としての話し方や仕草はエリに叩き込まれたんだが、別に変な事してなかっただろうか?元々人付き合いというものが苦手だから自分の言動に不安が過る。


 そもそも元男の私が女子としてあの話の輪に入るのは少し複雑な気分ではある。


 でも、悪そうな人たちじゃなさそうだし多少は許してくれるだろうか?


 俯いた顔の隅から流れ落ちる髪に触れながら悶々とそんな事を考えていると下の階からエレナの声が聞こえてくる。


「あかり~!そろそろ下りてきて!ご飯にしよ~!」


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