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悪魔狩りの魔女  作者: 華井夏目
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19.Duel.鏡の魔女

 冷たい雰囲気のあかりの後を追って私達も店の外へ出た。二人の只ならぬ様子にカフェにまで付いてきたシスターだけではなく、偶然その場に居合わせたシスターも集まってきてさっきの噴水広場以上の人だかりが出来上がっている。


「やっちゃえあかり~!」


 一人テンションが上がったモニカが楽しそうに声を上げている。それはそれとして、やっぱりあかりの様子が気になる。どうにもいつもと違うような・・・


 気になった私は思い切って二人に訊いてみる。


「ねぇ、今日のあかりちょっと様子変じゃない?」


「そ~?」


 (エレナ)の言葉にヘレンは気の無い声でそう返す。だけど、フレンダは私と同じ違和感を覚えている様で眉をひそませて私に尋ね返してきた。


「エレナもそう思う?」


「フレンダも?」


「うん。今日のあかり、ぼんやりしてる事が多いって言うか、なんかちょっと不機嫌と言うか・・・」


 フレンダはそう言って怪訝そうに首を傾げた。フレンダから見ても今日のあかりはいつもと違う様子らしい。それを聞いて私はフレンダに確認するように「やっぱりそう思う?」と彼女に尋ねると彼女は小さく頷き言葉を続ける。


「でも、訊いても『大丈夫』って言うだけなんだよ?」


「う~ん。どうしたんだろ・・・」


 私も首を傾げてそう言っていると二人の準備が整ったのか戦闘前の重苦しい空気が辺りを包んだ。次第に二人の魔力が高まっていき、あかりの帯が徐に伸長して揺れ始める。


「言っときますけど、何時ぞやの彼女とは違って私は油断しませんので。」


「御託はいいわ。さっさと始めましょう。」


 冷たく静かに言葉を交わす二人。ヒリヒリと張り詰めた空気、辺りの音が風に流される様に消えていきまるで西部劇のワンシーンみたいだ。


肉体強化ブースト。」


「戦闘術式、展開。」


 二人が魔力を身に纏う。・・・始まる——


「花帯・桜!」


 開始早々、あかりが攻撃を仕掛ける。瞬く間にあかりの二本の帯が大きくしなりキアラに迫っていく。


 なのに、何故かキアラは回避行動をとらない。


「——鏡面叛射。」


 キアラがそう口にした瞬間、キアラは忽然と姿を消した。それと同時に対象物を見失ったあかりの帯が虚しく虚空を切り裂く。


「消えた・・・」


 フレンダが不意にそう漏らす。


 突如として消えたキアラの所在をあかりも含めて全員が探していると、別の場所にキアラが忽然と現れる。それを確認するや否や追いかける様にあかりの帯が地面を抉る。


 その時、キアラが腰のリボルバーを抜き取りあかりに向かって引き金を引いた。


 バン!と言う重厚な破裂音と共にキアラの左手に握られたリボルバーが発光する。でも、あかりはさも当然の様にその銃弾を防いだ。どんな反応速度よ・・・


「あれが彼女の魔法?」


 キアラのリボルバーを見て私がフレンダにそう尋ねると彼女は首を振ってそれを否定する。


「ううん。多分あれ、魔導兵器だよ。」


「え、じゃあ、彼女の魔法って——」


 私がフレンダにそう尋ねようとした時、隣のモニカが「魔導兵器って何?」と怪訝な表情をしながら尋ねた。その問いに私は彼女の残念な頭に分かりやすい様に必死に頭を捻って言葉を選んで答えを返す。


「えっと・・・簡単に言うと魔法が使える武器の事・・・?」


「そう。」


 私の曖昧な返答にヘレンが正解だと補足する様に言葉を重ねる。すると、それを訊いた当本人は淡泊な表情をして「へぇ。」と短く言葉を返した。私の努力を返してくれ。


 視線をあかりへ戻すと長く伸びた帯がキアラに迫っていた。かなり激しい攻撃だっていうのにそれをキアラは軽やかなステップで容易く躱している。あれだけの大口を叩くだけあって実力は確からしい。気に食わないけど・・・


 あかりの帯の猛攻がキアラを襲う最中、彼女の周囲に多数の鏡が出現する。その鏡は二人を包むように展開し二人の姿をその鏡面に映し出す。そして、鏡が増えるごとにキアラのあの瞬間移動が多くなる。


「ねえ、もしかしなくてもキアラの魔法って——」


「鏡の魔法、あかりと同じ武装系の魔女だよ。」


 私が尋ねるとフレンダが即座にそう答えた。じゃあ、あれ全てが彼女の魔法。


 鏡の魔法がどんなものか分からないけど、鏡に比例してあの瞬間移動が増えたという事は、あれは鏡を使って自分を別の場所に移動させているのか。


 一般的に、武装系は魔力消費が自然系より少ないとは言うが、だとしても多重展開は相当な量を消費するはず。それを容易くやるという事は魔法の才も彼女は優れていると言う事になる。


「あかり・・・」


 依然あかりの帯が猛威を振るう中、キアラが突然あらぬ方向にリボルバーを向けた。その行動にあかりは警戒しつつも構わず攻撃をすると、彼女は小さく呟く。


「鏡面叛射。」


 その言葉と共にあかりの身体がリボルバーの銃口の先に移動する。あの瞬間移動、移動させられるのは自分だけじゃないの⁉


 突然の事にあかりも流石に動揺を見せた。そのあかりにキアラは不敵な笑みを浮かべるとリボルバーの引き金を絞る。そして——


 何故か、あかりは防御しようとしない。


 リボルバーの銃弾はあかりの頭を捉える。衝撃であかりは打ち飛ばされ地面に叩き付けらされた。


「あかりが・・・撃たれた?」


 咄嗟の事だったとはいえ予想外の出来事にフレンダがそう言葉を漏らした。撃たれたあかりは痛みに耐えながらもすぐに立ち上がろうとする。


 そこへリボルバーを構えたキアラが近づいて行く。そして、再び銃声。なのに、またもあかりは防ごうとしない。私は思わず声を上げる。


「何やってるのあかり⁈ちゃんと防御して!」


 余りに無防備な彼女の姿に見てもいられなかった。何であかりは防御姿勢を取らないの?そんな事をしたら不利になるのは自分なのに。


 すると、急にヘレンが真剣な表情で私の言葉を否定する。


「無理だよ。」


「なんで?」


 私が咄嗟に尋ねると彼女は意味不明な事を口にする。


「たぶん、動けない。」


 その言葉が理解できずヘレンにその理由を尋ねようとすると再び銃声が響き、あかりが石煉瓦の地面を痛々しく転がる。その表情から苦痛と焦りの感情が伝わってくる。


 銃口から上がる煙をそのままにキアラは余裕の表情であかりを見下している。すると、あかりの帯がゆっくりと動き——


「花帯・杜若!」


 その声と共にあかりの帯は凄まじい速さで振り上げられキアラのリボルバーを弾き飛ばした。そして、あかりは無防備になったキアラにすぐさま帯で攻撃を仕掛ける。しかし——


「残念、ハズレです。」


 キアラの言葉と共に突然あかりの身体と伸びた帯が〝静止〟する。それはさながら時間が止まったみたいに彼女の動きがピタリと止まったのだ。


 ヘレンが言ったのはこういう事だったんだ。防御したくても、そもそも身体が動かせなくなっていたなんて・・・


 その姿を横目にキアラは弾き飛ばされたリボルバーの元へ向かいながら話し始める。


「流石と言うべきなのかしらね。これをやられると大抵混乱して何もできないのだけど、あなたは即座に対応した。でも残念、あなたの動きを止めていたのは何もこの銃じゃありません。」


 キアラは地面に転がったリボルバーを拾い上げあかりへ銃口を向ける。


「そして、結局何も分からないまま。あなたは私に倒されるの。」


 その言葉と共に銃声が響く。


「嘘でしょ・・・あかりが、あんな一方的に・・・」


 私はそう漏らした。彼女の実力はフレンダからよく聞いている。かなりのものだって。グリゴリ事件だって相応の実力が無ければ生き残る事なんて間違いなく不可能だろう。


「やっぱり、変・・・」


 急にフレンダがポツリと呟いた。その言葉が気になって私は「変って、やっぱり何かあるの?」と彼女に尋ねるとフレンダは怪訝な表情をして答える


「分からないけど、なんか、今日のあかりの動き少し単調な気がする。なんて言うか無駄な動きが多いって言うか・・・」


 そう言われてみればそんな気がしてくる。どこか動きがぎこちない様な、何かに気が取られているみたいな。


 そんな事を考えながら首を傾げていると、再び目の前のあかりの身体が静止し銃声が辺りに響く。銃弾があかりの胸部に命中し、衝撃に耐えきれずあかりは地面に倒れ込む。


 そこへ追い込みをかけるようにキアラがにじり寄り、左手に持ったリボルバーを器用にリロードしながら余裕気な様子で終わりの言葉を口にする。


「ブーストもそろそろ限界ね?残念だけど、これで最後よ。」

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