3-4-1 進展無し
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「〜〜ッ、やっぱそんな簡単に手がかりが見つかる訳ないよな」
ノゾミはリビングのフローリングに仰向けになり、疲れた目を休めるために瞼を下ろした。
あれから10日程が経つが、ノゾミはその間図書館に通い詰めている。そこにある各社の新聞に目を通し、例の事件に関するものは重要なところをメモ帳に書き出してまとめた。その作業と並行して過去の事件現場を訪れたりもしたが、核心に迫る情報は得られていない。
(つーか、これって警察の仕事だよな。素人の俺にそれを越える成果を出せってゆーのも、到底無理な話なのかもしれない)
大きく息を吐き出すと、自然に空気が肺に流れ込んでくる。試しに息を止めてみたが、すぐに限界がきてしまう。
「――っは、ごほ…っ」
「ノゾ君!? 大丈夫ですか」
胸を上下させて噎せ込んでいるとミコトが駆け寄って来た。何だか恥ずかしいところを見られてしまったようで気まずかったので、顔を背けて短く答える。
「……ああ」
「何か手がかりはありましたか?」
ミコトはまだ読み書きが堪能ではないので、主にノゾミの見解をムクロと関係しているかどうかの判断を手伝ってもらっている。
「いや、相変わらずだ」
起き上がってローテーブルの上のノートパソコンと再び向き合うと、スリープモードになっていたそれを起動させた。
インターネットからも情報を得ようとしているのだが、如何せん犯人が現場に証拠らしい証拠を殆ど残していないので、込み入ったものは期待できない。
「にしても逆に関心するよな。こんなに完璧に人を殺すなんて」
別に殺人鬼を褒めている訳ではないのだが、警察の方も捜査が難航しているらしいというのを聞くと、もしかしたらいつまでもこの事件は終わらないのでは、とさえ思えてくる。
だがそうなってしまえば、ノゾミはいつまで経っても死ねない訳で。
二進も三進も行かない状態を歯がゆく見つめるだけではやりきれない。今のノゾミは、そんな執念に近いものにただただ従っているだけだった。




