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昼間が近くなって、地面から照り返す熱が身にこたえてきた頃。ノゾミは少しでもこの暑さを誤魔化そうと、ミコトにこんな質問をしてみた。
「なぁ、ムクロってどんな奴だったんだ」
するとミコトは、逡巡した様子を一切見せずに答える。
「ムクロは物腰が柔らかで紳士的ですけど、怒るとちょっと……かなり怖いですね」
"ちょっと"を"かなり"と言い直したあたり、腹を立てると相当おっかないのだろう。
「怒られたことあるのか?」
「いいえ、僕は無いです。よっぽどの事でないと怒りませんよ」
ということは、普段は大人しい性格だとみて良いだろう。そんな彼が豹変するきっかけがあるとすれば、それは少なからず衝撃的なものだったに違いない。
「そいつが殺人願望を見せたことは無いんだよな?」
「はい。そんなもの微塵も感じられませんでしたよ」
そこまで言われては、ムクロが犯人だという信念が揺らいでしまう。
そもそもムクロは、あの殺人鬼と背格好が似ていると言われたから怪しいと踏んでいるだけで、物質的な証拠は揃っていない。
だがこれまでの考察からして、殺人鬼にはミコトが見えていたはずだ。ミコトが見えるということは、彼が四人の内の誰かだということを何よりも明確に証明している。
(いつもは紳士的な奴が、殺人鬼……?)
この二つが頭の中で捻れて、どうにも上手く繋がらない。一体どちらが本当の顔なのか。
それこそ、彼に重大な事情でもあるのだろう。
「それで、これからどうしますか?」
「そうだな……」
無計画に動いても無駄骨になるかもしれない。ここはノゾミが元来持っている冷静さが発揮される時だ。
「まずはあの殺人鬼が絡んでいる事件について調べる。そしたら、何か見えてくるかもしれないからな」
今朝のニュースだけでは得られなかった情報もあるはずだ。そしてそれをムクロと関連付けられるのはノゾミたちだけ。
今はとにかく、自分たちに出来る事を一つ一つ実行していくしか真実に辿り着く方法は無かった。




