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3-3-6

 二人に向かって告げると、途端に風が吹き止んだ。ノゾミはそれを、今後自らに降りかかる苦難の前触れだと受け取った。

 考えなしにこんな発言をした訳ではないが、口にするほど簡単に遂行できるとも到底思っていなかった。


「やっと言ってくれた。アンタがムクロを見つけてくれるの、待ってるから」

 それはノゾミの背中を押すと同時に、重圧としてのしかかった。ショウはムクロが殺人鬼ではないことを信じている。それがノゾミに背徳感を自覚させるのだ。


「ああ……」

 力なく返事をすると、地面に置きっぱなしだったちり取りをショウの手元に戻した。

「じゃあ、今日はもう帰るよ。突然来て悪かったな」

「それは別に良いんだけど。頑張りなさいよね」

「分かってるって。ミコト、行くぞ」


 来た道を振り返ってショウに背を向けると、ミコトは別れの挨拶を告げてから横に並ぶ。

 そして帰途へ足を踏み出そうとした時、ショウの声がノゾミの背中にぶつかった。

「もしかして、あまり力になれなかったかしら?」

 ノゾミの様子を不審に思ったのだろう。しかしこれはノゾミの気持ちの問題だ。


「いや。ムクロっていう重要人物も浮かんできたし、お前の立派な家も見られたし。収穫としては十分だ」

 できるだけ相手を不快にさせないように。本心を悟られないように。これだけは子供の頃からの得意技だった。心の中を読まれない限りは。


「なら良かった」

 その言葉に、ノゾミは(ひそ)かに安堵(あんど)の溜息をついていた。これでもう話すべき事もないだろう、と歩き始めるが、またしてもショウの声に引き留められる。


「でも、一つだけ訂正させて。ここはアタシの家じゃないの。居候(いそうろう)みたいなものよ」

 それが妙に気になって、数歩歩いたところで立ち止まり、首だけで後ろを振り向いた。が、既にショウもその門に手をかけて中に入ろうとしてしまっていた。


(まぁ、いっか)

 恐らく今回の件とは関係ない。そう判断して、深く首を突っ込むのはやめておいた。

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