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「俺、このままムクロを疑っててもいいのかな?」
こんな事を聞いても何一つ解決しない。そう分かっていても、聞かずにはいられなかった。
「それはノゾ君が決めることです。僕たちはあくまでお手伝いしか出来ないのですから」
全うな言葉で返されて、ノゾミは自らの境遇を再認識した。誰も『ミコトが四人全員を探してみせる』とは言っていない。ミコトの厚意を無下にした自分が、死にたい一心で四人を探すと決めたのだ。ショウは偶然に見つけることが出来たが、次からはそう簡単にいかないだろう。
「……ごめん」
「何に謝ってんのよ。アンタはアンタのやりたいようにやればいいじゃない」
「え?」
それは〝意外〟と表現する他なかった。
「だって俺、二人の仲間を殺人鬼じゃないかって思ってるんだぞ」
「だったら、ムクロを見つけるか殺人鬼を捕まえるかしてみなさいよ」
ノゾミはそこで、ぐっ、と言葉に詰まってしまった。どちらも即答することができなくて、それが余計に不甲斐なくて。
奥歯を噛みしめ、拳を作った右手に力を込めるが、それは自らの弱さを煽り立てるだけだった。
「ノゾ君ならできますよ」
ふと耳に届いた鈴のような声に、伏せていた目を見開いた。
簡単にそんな事を言わないでくれ、と叫びたくて堪らないのに。
「ノゾ君が死にたいと願うなら、できますよ」
「で、でも……」
「これは、ノゾ君を殺す為に必要なことなんですよ」
(そうだ。俺がいつまでも逃げてたって、いつかはそうしなくちゃいけないんだよな……)
もう自分に逃げ道は用意されていないのだ。逃げていても死ねない。死ねなければまた同じ壁にぶち当たる。その繰り返しが延々と続くだけだ。
「――分かった」
ここで覚悟を決めなければ、ずっと自分は変われないままだろう。死ぬための第一歩を、ようやく踏み出したような気分だった。
「俺がムクロを、殺人鬼を……見つけ出してみせる」




