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3-3-5

「俺、このままムクロを疑っててもいいのかな?」

 こんな事を聞いても何一つ解決しない。そう分かっていても、聞かずにはいられなかった。

「それはノゾ君が決めることです。僕たちはあくまでお手伝いしか出来ないのですから」


 全うな言葉で返されて、ノゾミは自らの境遇を再認識した。誰も『ミコトが四人全員を探してみせる』とは言っていない。ミコトの厚意を無下にした自分が、死にたい一心で四人を探すと決めたのだ。ショウは偶然に見つけることが出来たが、次からはそう簡単にいかないだろう。

「……ごめん」

「何に謝ってんのよ。アンタはアンタのやりたいようにやればいいじゃない」

「え?」


 それは〝意外〟と表現する他なかった。

「だって俺、二人の仲間を殺人鬼じゃないかって思ってるんだぞ」

「だったら、ムクロを見つけるか殺人鬼を捕まえるかしてみなさいよ」

 ノゾミはそこで、ぐっ、と言葉に詰まってしまった。どちらも即答することができなくて、それが余計に不甲斐なくて。

 奥歯を噛みしめ、拳を作った右手に力を込めるが、それは自らの弱さを煽り立てるだけだった。


「ノゾ君ならできますよ」

 ふと耳に届いた鈴のような声に、伏せていた目を見開いた。

 簡単にそんな事を言わないでくれ、と叫びたくて堪らないのに。

「ノゾ君が死にたいと願うなら、できますよ」

「で、でも……」

「これは、ノゾ君を殺す為に必要なことなんですよ」


(そうだ。俺がいつまでも逃げてたって、いつかはそうしなくちゃいけないんだよな……)

 もう自分に逃げ道は用意されていないのだ。逃げていても死ねない。死ねなければまた同じ壁にぶち当たる。その繰り返しが延々と続くだけだ。


「――分かった」

 ここで覚悟を決めなければ、ずっと自分は変われないままだろう。死ぬための第一歩を、ようやく踏み出したような気分だった。


「俺がムクロを、殺人鬼を……見つけ出してみせる」

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