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「とにかく、今のアタシじゃ力になれることは無いと思うわ。でも、あの殺人鬼が鍵となるかもっていうのは同意見ね」
ショウはそう言ってノゾミにちり取りを手渡す。その意味を察したノゾミは、腰を屈めてそれを構えた。
集められた落ち葉がちり取りの中へ納められていくのを眺めながら尋ねる。
「お前たちは、頻繁に逢ったりしてるのか?」
「頻繁ではないわね。約束をして逢うことは殆ど無くて、行き当たりばったりみたいな感じよ」
なるほど。成り行きに任せていれば、この二人が千年も出逢わない道理だ。
「ミコトはどうなんだ?」
「僕は、ショウと最後に逢ってからレイとムクロに逢いました。二人とも変わりなかったですよ」
「因みにそれは何年前だ」
「……レイが七百二十年、ムクロが九十年前、くらいです」
全く当てにならないとまではいかないが、さすがに情報が古すぎる。と言っても、ノゾミが産まれるより遥か昔から生きているのだ。直近の情報が得られないのも、いくらかは予想の内に入っていた。
「二人とも、サトリって奴にはしばらく逢ってないのか?」
ここでいう〝しばらく〟は、一般の尺度からは大きく外れている。二人の時間感覚に合わせてそう言っておいたのだ。
「サトリは一匹狼みたいな子だから、あまり逢わないわね。アタシが最後に逢ったのは千六百年ぐらい前かしら」
「僕は、まだ二回しか逢ったことないです……」
その台詞に違和感を感じたのは、ミコトが気まずそうにしていたからではなかった。
「二回? 少なすぎないか」
「でも、本当にショウの言う通りで。独りでいるのが好きなのかもしれないです」
「なら、そのサトリって奴が怪しいのか?」
ノゾミは立ち上がって、二人と視線を同じにした。自分だけしゃがんでいたせいで、置いてけぼりを食らっていた気がしていたのかもしれない。
「ちょっと待って。まだそう決めつけるのは早いんじゃないかしら」
「えっ?」
思わぬ反論に若干の戸惑いを覚えたものの、何か重要な事があるなら、聞かない理由は無い。
「あの人とイコールで結びつけるなら、ムクロの方が怪しいんじゃない?」
「どうしてそう思うんだ」
ショウは先程、思い当たる節はない、と言っていたはずだが。それを問うと、さっきは忘れていたのだと詫びてから改めてムクロという名が出てきた訳を話す。




