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「さってと、どうすっかな〜」
ノゾミは、ぐーっと伸びをして空を見上げるが、木々の葉の間から見えるそれは、太陽の光が明るすぎて真っ白だった。
「眩し……」
だが、以前なら眉をしかめて目を閉じてしまうようなその光も、今はなぜか目を細める程度で十分だった。
「ミコトの髪が真っ白だから、慣れたのかな」
目が、少しだけ光に慣れた気がする。
それは、ノゾミにいつもより上を見る機会を与えていた。
「よし、行くか」
ノゾミはもう一度ミネラルウォーターを流し込むと、空になったペットボトルをくず入れに投げ捨てた。
ショウは人の役に立てるのは素敵なことだと言っていたが、ノゾミにとって素敵なことは、早くこの命を捨てることだ。人のために、なんて考えたこともない。だが自分のため、と思ったこともない。
人と関わるのが怖くて、殻に閉じこもってばかりで、その殻の中で自らへの興味すら失った。そんなノゾミが、自分のためにこんなに走ることになるなんて。
「待ってろよ。絶対に見つけてやる」
ノゾミはベンチから立ち上がると、地面を踏みしめ、一歩一歩確実に進んでいく。日陰からでると、そこは光に溢れていて。
やはりそれは、ノゾミをうるさいほどに照らしていた。




