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「俺が、悩んで……?」
「そうよ。辛気臭い顔してるって言ったでしょ」
辛気臭いと言われても、ノゾミは普段通りの表情でいたつもりだった。つまり、普段からから辛気臭い顔をしていたのだろうかと、少し不安になてしまう。
「どうしてわざわざ、見ず知らずの奴の相談にのろう、なんて思うんだ?」
ノゾミは率直な気持ちを述べた。自ら面倒事に首を突っ込むなんて、ノゾミからしたらあり得ないことだったから。
「だって、普通は悩んでたり困ってる人がいたら、力になりたいって思わない?」
少女はにっこりと笑って、そう言った。その笑顔は、この夏の陽射しのように眩しくて。
その輝きは、ノゾミを危険なほど明るく照らした。
「お前は相当のお人好しなんだろうな」
「よく言われるわ。でも、アタシは世界中の人に幸せになってほしいの」
世界中とは、また大きく出たものだと思ったが、それは心の中に潜めておいた。
自分の理想を語っている時に話の腰を折られたら、誰だって不快になるだろう。ノゾミにもそのくらいの分別はある。
「それで、アンタは何に悩んでたの?」
「…………」
そう言われて、ノゾミは戸惑ってしまった。
ミコトはノゾミにしか見えない。ノゾミ以外にミコトを探せる人は居ないのだ。その事実を伝えるべきか否か。いや、ここは適当にはぐらかしておいて彼女には手を引いてもらおう。見えない人を探すなど不可能だ。
「飼ってた猫が逃げたんだ。それで探してたんだけど、今日は暑いからもう諦めるよ」
咄嗟に猫と言ってしまったが、ミコトに悪気はない。ごまかすにはこれが一番だと思ったのだ。
それでも一応、心の中でゴメン、と謝っておいた。




