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「辛気くさい顔で悪かったな。こんに暑くちゃ適わない」
「そうね、いきなり悪かったわね」
「え、いや、別に……」
まさか謝られるとは思っていなかったため、逆に面食らってしまった。
「ねぇ、アタシちょっと暇なの。隣座ってもいい?」
少女はノゾミが腰掛けているベンチを指して言った。
「まあ、良いけど……」
特に断る理由が無かったので承諾した。
(何だ、暇つぶしの相手にされただけか……って、それはそれで失礼だな)
一体彼女は何者なのか。普通は見ず知らずの相手に声をかけて、暇だから話し相手になって、などと言わないだろう。話し相手になれ、とまでは言われてないが、彼女の口ぶりだと明らかにその意味を含んでいる。
「アタシはショウっていうの。アンタは?」
浴衣を着ているからか、それとも彼女の性格なのか、少女は意外としとやかにベンチに座った。
「男みたいな名前だな」
「そうね。でも、アタシはこの名前気に入ってるわ」
そう言われては、女っぽい名前が好きではないノゾミも、素直に名を名乗るしかなかった。
「俺は……ノゾミ」
「可愛らしい名前じゃない」
「う、うるさい。俺はお前と違って、女みたいな名前は嫌いなんだ」
どうして、よりにもよってミコトと同じことを言うのだ、と少し動揺してしまった。その言葉には深い意味など無いはずなのに。
「それより、なんで浴衣なんか着てるんだ。祭りでもあるのか?」
「そうじゃないけど、アタシはいつもこの格好なの」
「ふーん……」
今時浴衣が普段着だなんて、ますます変わった子だ。いや、ここは風情がある、とでも言った方が良いのだろう。
「で、何だってこの暑い中俺なんかで暇を潰そうと思ったんだ? どっかのカフェで休んでれば良かったじゃないか」
「嫌味な言い方ねー。アンタが悩んでそうだったから、相談にでものってあげようかな、って思ってたのに」




