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第14話 ~暗闇からのgraduation~

今回で提供者との戦いは終わります。ネタバレ。


 色々な異能の力を解放して己の力としたノーンが異様なオーラを纏いつつ再び舞華を殺さんとばかりに一気に距離を詰める。


「ぐっ!?」

 正義達にもはっきりと聞こえる位の大きな打撃音を放ちながら舞華の顔にノーンの拳が突き刺さる。


「まだまだまだぁー!」


 ドドドドドドドドドd──────


 大きく仰け反る舞華を更に追い詰めるべくどんどん攻撃を繰り出していくノーン。その攻撃は粗く、ただ色んな異能の力を身体能力UPに回し、拙い肉弾戦ではあるものの、その攻撃力は半端無く舞華の身体を貫き、ボロボロにしていく。


「おいヴァン! もういい加減止めさせろ! 舞華の奴死んでしまうぞ!」

「………大丈夫だ。まだ終わってねぇよ」

「終わって無くてもアイツの身体はもうボロボロで、HPなぞ0を超えてマイナスってるだろ!」

「だから何だ? どんなに不利な状況だろうが当の舞華本人の目がまだ死んでいない以上決着は着かない。それにあの2人には背負っている物が違う」

「は? 何言ってんだ?」

「……見てりゃ分かるさ」

 そう言ってヴァンは正義から目を離し、視線を戦う2人に向けた。


 そうこうしている間にも舞華の華奢な身体からはどんどん痣や出血が酷くなり、最早拳の一つも繰り出せない───いや、既に死んでもおかしくない程のダメージの筈なのだ。

 そしてそれはノーンも知ってはいるが舞華が何時までも倒れない故、ガンガン攻撃する。


 が、

「はぁ、はぁ、はぁ……何だ? 何で死なない?」

 もうかれこれ10分くらい舞華に物理接近戦や遠距離魔術、その他の超常現象を駆使した攻撃を食らわせたのだが、それでも舞華はふらふらと立ち上がる。


「だったらこれで───どうだっ!」

 いくらやっても倒れない(死なない)舞華に業を煮やしたノーンは乗せれる分の魔力(+その他の力)を両手に乗せ、顔とお腹の両方を狙う山突き(腹の方は貫手バージョン)で舞華に止めを刺そうとする。


 グシャッ!


「舞華っ!」

「………っ」

 流石にこれは正義どころかヴァンも危ないと思った攻撃で舞華の顔にノーンの魔力全力パンチ(仮)がめり込み、遂に舞華が立ったまま動かなくなった。


「ふぅー。やっと死んだか……。意外としぶとかった───なっ!?」

 すると突然ノーンが驚いた声を上げた。


 そこには舞華の顔の他に山突きで腹に放った貫手ぬきてを舞華が左手で受け止めていた。

 その事だけで驚く事も無理は無いが更にノーンが驚いたのは舞華によって掴まれた手が抜けない事だ。アレだけ攻撃を受けたのにも関わらずどこにそんな力が有ったのかとノーンが思った時、


「……何…で……」

「っ!?」

 それまで黙ってノーンの攻撃を受け続けていた舞華が言葉を発し、ノーンがビクッとなる。その訳は舞華から感じる怒りと悲しみの感情。


「何で……アンタの攻撃はそんなに軽いの?」

「軽い……だって?」

「うん……軽すぎるわよ……」

 舞華に軽い攻撃と言われて怪訝な顔をするノーンに舞華は悲しみの表情を浮かべ、


 ボッ──────


「っっっっっ!!!?」

 掴んだノーンの手を後ろに引き、自分に引き寄せた所に開いたもう一つの拳で思いっきりノーンの腹を打ち抜いた。

 まさか防御ならいざ知れず、反撃にも凄い力で受けてしまったノーンは5メートル程吹っ飛び、吐瀉物としゃぶつを吐き散らせながら膝を着く。


「アンタに騙されて闇落ちして……無理矢理戦わされた私の仲間達や他の人達の攻撃の方がよっぽど……よっぽど重かったわよ!」

「ぐぅっ!?」

 今まで溜まりに溜まっていた鬱憤を吐きながら早歩きでノーンに近付き膝を着くノーンの顎を思いっきり蹴り上げ、ノーンが後回転しながら吹っ飛ぶ。


「モモ、可憐、ロロット、亜紀……そして聖花。あいつを滅ぼす力を私に貸して」


 そしてノーンが自分から大きく離れた時を見計らい、舞華は仲間の4人が残した遺品である変身アイテムの一部を両手で握り、そこから発生した光が舞華を包み、戦乙女の衣装が分解され、元々の魔法少女の衣装に仲間の衣装の一部が追加され、色鮮やかな恰好をした綺麗な舞華が現れた。ノーンに受けた傷や痣も光に包まれたその時に聞こえた仲間達の声によって回復してもらったのだ。


「あれは………」

「ふっ………」

 舞華の還元変身を見て正義は言い意味で驚き、ヴァンはふっと小さく笑みを溢す。


「……今こそ、皆の無念を晴らすとき。覚悟!」

「っ!?」

 還元変身を終えた舞華が地面に平伏すノーンに一瞬で迫り、ノーンが慌てて体制を立て直す。


 その後、さっきまでの劣勢はどこへやら。

 ノーンの攻撃が『軽い』と言っていた舞華の攻撃は死んでいった皆の無念が乗っている故に物凄く『重く』、ノーンが敷いた魔法陣や特殊な結界などの防御がことごとく貫通し、物理防御でも腕にダメージが通り、仰け反ったノーンに追撃を加え、完全に形勢は逆転した。



 しかし、

「ぎゃはぁっ!? ──────っ!!」

 舞華の蹴り上げた足で上空に飛ばされたノーン。だがノーンは空中で制止し、キッと眼を鋭くしてさっきまでのお返しとばかりに手を上にげ、今までの数倍をもの魔力や気功、その他の力を合わせた巨大なエネルギーを両手に集め始めた。


「キャッ!?」

 舞華もそのエネルギーのヤバさにノーンの攻撃を阻止しようと跳ぶが、ノーンの目が光り、跳んだ舞華の手前で小さな爆発が起こり、後ろに戻される。


「おいおいおい……」

「……マズいな」

 ノーンの攻撃に地上へ戻された舞華を見て正義とヴァンに緊張が走る。


「この攻撃を避けれるもんなら避けてみな! 避けたらこの世界の核をこのエネルギー弾でぶち抜いて君達諸共心中するけどねぇ!!」

 そう言ってノーンは間髪入れず限界まで溜めたエネルギー弾を打ち出す。


「デッド砲!!」

「名前、だっせぇ!?」

 手出しが出来ない正義がノーンの名付けたダサい必殺技にツッコんだ。勿論ツッコミ時に入れる裏平手も含めて。


 正義がツッコむ瞬間にノーンの放ったエネルギー弾『デッド砲(仮)』が舞華に着弾し、舞華は両手をクロスしてガードする。

 しかしその『デッド砲』は今までの攻撃より破壊力が凄まじく、舞華はどんどん後ろに後退していく。おまけにその背後には崖があり、そこに落とされればバランスを崩しそのデッド砲をもろに受け、死に至る可能性があり、舞華は全力でそれを返そうと必死に堪える。


 するとそこに今まで倒れていた人物が舞華の元に駆け付けた。


 言わずもがなその人物とは佐夜の事だ。


===============================


「くっ……かはっ……っ!」

 今からほんの数分前、ノーンのパワーアップ直後の攻撃を最初にクリーンヒットで受けてしまった佐夜は地面に平伏して吐血しながらも立とうとするが、腹に受けたダメージが大きすぎて腹筋に力が入らない。


 平伏した佐夜の視界にはノーンにボコボコにされながらも必死に耐えている舞華の姿があり、男である筈の自分が女の子の舞華より先にやられてしまう事に佐夜は歯痒む。……今は己も女の子なんだがその事には全く自覚は無い佐夜。


 コツン……

「ん?」

 すると歯痒む佐夜の左手に何かがぶつかり、佐夜がそれに目を向けるとそこには先ほど舞華が苦悩しながら倒した元仲間の聖花が使っていた聖剣があった。


「そっか、ここはさっきの場所か……。っ!?」

 そう言って少し回復した佐夜はうつ伏せから胡坐座りに体制を変え周りを見渡すとそこには半透明になった舞華の仲間達が居た。

 いやよく見ればその他にもやすしに殺しの救いに逢った(?)者達や剛と共に転移してきた者達(勿論死人)までいる。

 半透明という事はこの人達は恐らく幽霊(亡霊)なのだろう。


((((ォ……オレモ………))))

((((ゎタシ達も……))))

「え……何?」

 するとその幽霊(亡霊)達が佐夜に話しかけてきたが一斉に話すので上手く聞き取れなく、聞き返した。


(((((((((俺(私)達も……君達と一緒に戦う!!)))))))))

「うお、ハモった……」

 すると幽霊達は皆、一斉に口を揃えて言った為、実に聞きやすい。


「ん~、気持ちはありがたいんだけどそれを承諾して参加させちゃったらあそこにいるヴァンが言っていた『金(禁)の誓約』に引っかかるんじゃないか?」

 誓約の条件は『ノーンVS舞華&佐夜との決闘に第三者が干渉しない事』だからな。


(それなら多分問題ないと思う。さっき君が殴り飛ばされた時、私達がクッションになったけど何ともなかった)

「幽霊クッション!?」

(それにかなりのダメージを受けて気絶した君に回復ヒールを掛けたけどもその誓約に引っかからなかったし)

「幽霊なのに魔法使えるのかよ!?」

(後、性転換した君のおっぱい、とても柔らかかった……)

「何やってんのお前等!?」

 手をワキワキさせながら満足気に話す女の幽霊達。その背後では男の幽霊達が何故か前屈みになっている。……っておい。


 その後、色々と聞いて分かったのだが、ここは『魔界』。所謂『死者が集う場所』という事で、この場に出現している幽霊達は皆『魔界という場所に湧いて出ている置物オブジェ』扱いなんだそうだ。つまりそこら辺に転がっている石や金錆(腐木)などのゴミと同等に思えばいいらしい。

 ふと舞華の方を見てみると、いつの間にか今までの戦乙女ヴァルキリーの恰好ではなく、色鮮やかなフリフリの魔法少女スタイルになっていて、その事を幽霊達に聞いて納得した。

 舞華が還元(+超)変身するのに使った仲間達のアイテムの欠片に直接仲間の魂が宿っているのである意味第三者の干渉と言えなくも無いのだが、誓約には引っかかっていない事が確認出来たのでこの幽霊達は皆こうして佐夜に直接コンタクトを取ってきた、ということらしい。


「……分かった。どの道このままだとあいつに勝てないからな。やるからには魂の消滅を賭けてでも協力してもらうぜ!」

 佐夜は聖花の聖剣を手に取ってからそう言い、幽霊達も黙って頷いた。


 そして佐夜はデッド砲を腕でガードする舞華の元に走って行った。


===============================


「舞華ー!」

「佐夜!?」


 ギィン!


 腕でガードする舞華の上から聖剣でデッド砲を受け直す事で舞華の蓄積ダメージを減らす。


「アンタあいつに殴られた所は大丈夫───っていうかそれ聖花の聖剣じゃない。何でアンタが持ってんのよ?」

 2人でデッド砲を受けているので多少の余裕が出来たのか舞華がいつも通りのテンションで話しかけてくる。


「殴られたお腹はなんとか。そしてこの聖剣は偶然殴られてふっ飛ばされた所に落ちていたから拾った」

「拾ったって言っても佐夜、その聖剣は『純粋な乙女』にしか使いこなせない代物で闇落ちした私じゃ使いこなせないわよ」

「そんなのやってみないと分からないだろ。それに……」

「それに?」

 言い難そうに口をモゴモゴする佐夜に舞華は首を傾げる。


「実に不本意だけど、今の俺、女の子!!」


 ・・・・・・・・・・・・・・・。


「あ、あーあー。そうだったわね。アンタ本物の女の子になっちゃってたっけ」

「自分の意志で成ったわけじゃないけどなっ!」

 やや、キレ気味で言う。


 忘れているかもしないけど今の佐夜は『刻詠の腕輪』に宿っていた『美里』の残留思念が憑依した時の影響で女性化しているのだ。しかもEカップ!(いぇあ)


「それにここにいるのは俺だけじゃないぞ。ほれ」

「え? それってどういう────」

 佐夜が首を後ろに振って舞華も後ろを見るとそこには────

(((((舞華。私達も一緒に戦う)))))

「聖花!? それにみんなまで……っ」

 先ほど舞華が屠った筈の5人が幽霊となって舞華の側まで来ていた。ちなみに他の幽霊(女)達もすぐそこにいる。


「舞華、色々と言いたい事はあるだろうけど黙って聞けよ。この人達はこの魔界にある置物オブジェみたいな扱いになっているらしいからヴァンが交わした『金(禁)の誓約』には引っかからないんだ。だからみんな奴を倒す為に協力しに駆け付けたらしい」

「そ、それじゃあ……」

「ああ、最後の最後になるけれど、この一撃にみんなの魂を込めて奴を討つ!」

 佐夜の言葉に幽霊達も頷いて同意した。


「じゃあ舞華。舞華もこの聖剣を握ってくれ」

「え……で、でも………」

 佐夜に聖剣を握れと言われて戸惑う舞華。

 実は過去に聖剣を借りようとしたことがあったが聖剣に拒まれて触ると電流が走った事から舞華は自分が純粋な心を持っていない事を知っている。そんな自分がそれを触る事が出来る筈がないと舞華は拒否ろうとしたが、


「大丈夫。自分と仲間を信じろ!」

(今の舞華ならそれを取れる。私が保証するわ)

 佐夜と死んだ聖花が舞華を鼓舞したことで舞華は恐る恐る聖剣に振れる。


 電流は───走らない。


「掴め…る?」

 昔は触れる事すら出来なかったのに何故とばかりに戸惑う舞華だが触れられるのなら掴める事も出来るのですぐに聖剣を掴んだ。


(舞華。さっきは死ぬ寸前だったから言えなかったけど、楽しい事も苦しい事も貴女と過ごせて私は幸せだったわ)

「うん。私もよ。………貴方達が捕らえられた時、助けに行くどころか気付きもしなくて本当にゴメンね」

(それは仕方ないわよ。それも全てピックル……いや、あの提供者ノーンが仕組んだ悪い事なのだからね)

「それでも私は……っ」

 舞華が聖剣を掴むと、その上から聖花の手が舞華の手に添えられ互いに先ほど時間切れで言えなかった言葉を交わす。


(それでも舞華が罪の意識を感じているのなら、あの提供者ひとを倒そう。ここにいるみんなと一緒に)

「……うん。戦おう。みんなと一緒に!」

「そうだ。俺達のやるべき事は一つ────」

 聖花、舞華と続き、佐夜が言葉を引き継いで言う。


「「(あの提供者くそったれを討ち倒す!!)」」


 パァァァァァァァ──────


 聖剣を掴んだ3人がそう言うと背後に居た他の霊達が丸々魔力の塊と化し聖剣に吸い込まれ、聖剣が澄んだ蒼色に光る。

 そして魔力MAXになった聖剣の先を提供者のノーンに向け、


「「(深い闇からの(ロード・オブ)卒業(・グラデュエーション)!!)」」


 そう言って放った『蒼の波動』は瞬く間にノーンの放った『色々混じってマーブル状になったデッド砲』を飲み込み、ぐんぐんノーンの方へ向かって行く。


「なっ……何だと!? く……っ」

 まさかの反撃に衝撃を受けるノーン。ここでデッド砲の出力を上げようとするも、即席で己の中に解放した色んな力が互いに干渉しあって思う様に出力が上がらず、どんどんデッド砲が押し戻されていく。


「だ、だめだ……か、回避を…回避をしなくては……っ」

 今更になって欲張って手にした力が全然機能していない事に気付いたノーン。デッド砲とグラデュエーション砲(仮)ではどう見ても出力で負けている事は明白。なのでこれ以上デッド砲にエネルギーを回しても意味が無いという事でデッド砲を止め、グラデュエーション砲(仮)を回避しようと身体を動かそうとした。


 しかし、

「っ!? か、身体が動かない!?」

 何故かノーンの身体はその場で固定されていて普通に動かそうとしても、特殊な力(魔術&その他)を用いて動こうとしてもその場から1ミリたりとも動く気配が無い。

 そしてノーンは自分の身に起こっているある事に気付く。


「な……っ、き、君達は……っ」 

 ノーンの身の周りに死んだ男の戦隊&仮面ヒーロー達、その他の男性ヒーロー達がビッシリがっしりとノーンを取り囲み、その場からノーンを絶対動かさない様に物凄い表情をしながらしがみ付いていた。それほど皆、提供者ノーンへの恨みは大きいのだ。


「ぁ…あああ………」

 そしてその間にも着実に聖剣から放たれたグラデュエーション砲(仮)は確実にノーンに迫り、


「「(((((((くたばれーっ!!)))))))」」


「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ──────!!!!」

 大量のヒーロー霊達(+舞華)による怨念がこもった蒼き波動がノーンに直撃し、ノーンは外側(蒼き波動)と内側(ノーンにしがみ付いていた男性ヒーロー霊達)から同時に身体が崩壊しながら絶叫を上げた。


「あああああああああああ───────っ、っ─────」


 そしてノーンが消滅する寸前に見た物は、


「───ああ────やっぱり──来ていたんだ────ね……」

 遠くからでこちらを『撮影』していた別の提供者のアバター『ヨツハ』の姿だった。


 そして長年、『惨劇バッドエンド』を手掛けていた提供者のノーンは「こんな終わり方(グッドエンド)(勿論舞華側の方)も悪くないなぁ」と思いながら完全に消滅した。

 


ノーンが消滅して一見解決した様に見えますが、問題は別にある事をまだ佐夜達は知りません。

詳細は次回へ。

では。

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