第19話 ~愛沙の戦い~
ここで正義とリオが合流します(ネタバレ)。
「……ふぁ………やぁぁっ………そこ…そこはらめぇぇ……」
「ほれほれどうした。集中力が切れとるぞ。もっと全身の魔力をコントロールして脳内のイメージを崩さずに(錬成術を)発現せんか!」
「そ、そんな事言われても……む…無理ぃ~(悶)」
「………」
佐夜の性格が元に戻った(?)次の日、アルガド爺さんが、
「せっかく来たから久しぶりにお主に錬成術の鍛錬をしてもらおうかの」
という佐夜にとってある意味苦痛の修業をしていた。いや、させられていた。
こちょこちょこちょこちょ─────
「ら、らんで(何で)敏感らとこばかり──ひゃぁっ!?」
「ほれ、ほれほれ」
「………」
錬成術の修業にはこれが一番安全で、かつ分かりやすい水の練成を行っていている佐夜の耳や首筋、更に方が露出している服に着せられている為、脇にも『大きな鳥から採取した羽』でくすぐられていた。
実はこれ佐夜が爺さんから錬成術を習う最初の頃からされていたセクハラまがい──いや、もうむしろセクハラと呼んでいい集中ジャマ-だ。これによりせっかく集中してイメージした物が台無しになり、錬成術も碌な発動がしなくなる。
そんな2人を縁側でジト目でずっと見ていたのは舞華。
先日色々な意味で裏切られ、闇落ちした彼女は佐夜達に救助されるも、闇落ちした影響でしばらく療養していて、昨日でようやく身体の怠さが無くなったそうで、リハビリも兼ねて社宅内や近辺を動き回っている。
で、帰って来た舞華が見たものは、庭で佐夜が何かをやっていて、その周りで佐夜にセクハラをしている爺さんの姿。普通、これだけ見ればすぐに止めるべきなのだが、被害に遭っている筈の佐夜が爺さんを振り解かない所を見る限り、何か意味があるのだろうと縁側に座り、その様子を見ていたのだ。
「……こういうのって普通ハリセン使うんじゃないの?」
が、何処をどう見ても修業というよりヤラシイ事をしている様にしか見えないので、舞華は遂に眉を顰めてツッコむ。
「お嬢ちゃん、それでは佐夜の修業──鍛錬にはならないんじゃよ」
「……。何で? 痛くされるのが嫌だから集中するんじゃないの普通?」
舞華の体型を見て『お嬢ちゃん』と言った爺さんに対してこめかみに青筋が入るが、ここはぐっと我慢して指摘する。
「普通はな。じゃがの、人は痛みには耐えられるんじゃが『快感』には耐えられんのじゃよ。痛覚が無い者でない限りはな」
「…つまり抓られる痛みには耐えられるけど、痒いのには耐えられないって事?」
「痒みって……まぁ、それも『快感』という人もおるじゃろうな。つまりそういう事じゃな」
「ふぅん……」
どう見ても戯れている様にしか見えない光景に、舞華は理解も納得も放棄した。
「ど、どうでもいいけど何で鼻をこちょこちょ───っくしゅんっ!」
舞華と話していた爺さんが持っていた大羽が丁度佐夜の鼻先で揺れ、クシャミした反動で錬成中の水が暴発し、佐夜は水浸しになった。勿論、この水浸しになった佐夜の姿もどこからか写真で納められ、総理や各国のお偉いさん方の以下略。
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佐夜が爺さんと舞華と修業している時、それ以外のメンバーは二手に分かれて、暴れているという怪人、災魔、そしてヒーロー達(……え?)の鎮圧をしていた。
そんな中、ユフィ達が来たのは怪人と災魔という、この異種同士が何故か争っている場面で、勿論その中には一般人や、駆け付けた仮面の人、魔法少女の姿もあったが、怪人と災魔の数が軽く千を超えていた為、多勢に無勢、あっけなく敗退し、陽菜々と愛沙(あと楓の部下数名)の手によって救助&回復されている。
「物理召喚『ラカ・ソアラ』!」
ダダン、ダダダダダダダダン──────!!
「「「「「ヒィー! ヒィー!?」」」」」
「「「「「ギャギャギャっ!?」」」」」
ユフィが召喚したのは建築で使うような角材(粗め)。それを上空から大量に降らし、文字通り敵を押し潰したり、間引いたりする召喚だ。
で、敵が空に気を取られている隙に、
「ほれ、こっちもじゃ『暗黒炎弾』!」
ボボボボボボボボボボボボボb──────
「「「「「───────っ!?」」」」」
ドォ─────ンッ!!
ユフィの召喚術で上空に気を取られていた雑魚共を真桜の魔法で一掃。一見「真桜の魔法だけでよくね?」と思われるが、実は全くその通りで、単にユフィの魔力の無駄使いに終わった。
「ふぅー。久しぶりにぶっ放してスッキリしたわい」
「そうですね、物質界ですと中々大技は出せませんですし」
「そう考えると妾達の様な異能集団は物質界だと住み難いだけじゃ(溜息)」
「幻想界出身の私や陽菜ちゃんはともかく、物質界育ちの真桜さん達だと複雑ですね」
「まぁ、元の世界ではないからまだマシじゃがの」
一騎当千並みの魔力を持つ2人にとって、下手に魔法を使うとその世界が瞬時に破壊してしまう恐れがある為、少なくとも人がいる場所では、おいそれと大技は出せない。……先日闇落ち状態の舞華への『太陽神の裁き』は何だったんだと言いたいが。
「さて、後は陽菜ちゃん達の救助活動が終わるのを待つだけですね」
「うむ。そうしたいのは山々なんじゃが……あやつ等、どこ行ったんじゃ?」
「え……?」
ユフィ達が愛沙達がいた筈の場所に目を向けると、そこには治療を終えた怪我人しかおらず、
「きゅ? 愛沙さん、どこ行ったの?」
転移で怪我人を連れて来た陽奈々しかいなかった。
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「はぁ、はぁ、はぁ………」
その頃、愛沙は廃工場地帯を走っていた。
というのも、先ほど陽菜々が連れて来た怪我人から聞いた情報で親と逸れた子供が取り残されているとの事らしい。
本来なら転移が出来る陽奈々か、あちこちに分散して逃げていった化け物達を討伐している楓の部下達に頼めば良いのだが、運悪く今は誰も行ける人がいない。その上、この辺りには怪人や災魔、その他色々な化け物が潜伏している無人の地域らしく、陽菜々と転移する直前に化け物に追われる子供の光景を目撃したらしいので、子供の命は刻一刻と迫っている。
故に愛沙はその怪我人が言っていた場所へ向かって行った。勿論、愛沙の攻撃魔法は殆ど効果が無いのだが、逆に回復やシールドなどの防衛手段は一般人よりは高いの異能持ちなので、最悪敵と出くわしても『防御→目暗まし→逃げる』事が可能なので今、こうして迷子になっている子供の捜索に来たのだ。
「───っ、いた!」
「っ!?」
そしてようやく迷子の少女の元に辿り着く。突然何かが出て来た事でビクッとした少女だったが、それが人であると同時に安堵した。
「大丈夫? 怪我は無い?」
「う、うん……転んだだけ」
「そっか。よかった………」
少女がいた場所は特殊な金属を作る廃棄された広い工場。跡地と言っても建物自体は残っていて、機材だけが無い空っぽの工場だ。少女はそんな工場の消火剤が入っていたであろうドアの中にいた。見たところ本当に軽い怪我だけで済んでいる様だ。外を見れば少しではあるが、ウルフ系や大きな昆虫系の魔物、やけに大きいカエル(多分魔物だと思う)が周りを徘徊していて、「よく見つからずにここまでこれたね」と少女の頭を撫でながら回復魔法を掛ける。
「え、お姉ちゃん……魔法使い?」
「魔法って…いうか殆ど回復と盾の魔法しか使えない『回復師』だけどね。はい、怪我は治ったわよ」
「わぁ! ありがとうお姉ちゃん!」
「ふふ、どういたしまして」
少女に感謝される愛沙だが事実、回復と盾の魔法に関してはかなりの腕があるのに対し、攻撃手段としての魔法はアンデット系によく効く『ホーリー』と、『バインド(小さめ)』しかないので、愛沙だけでは敵に遭遇した時、逃げるしか方法が無い。
「じゃ、モンスターに見つかる前に早くここから逃げるわよ」
「う、うん」
「来る前には敵に見つからなかったけど帰りは2人。人数が増える分、敵に見つかりやすいから気を付けて着いt───っ!?」
治療を終えて少女と共に撤収しようとした時、愛沙が何かに気付く。
「ど、どうしたのお姉ちゃん?」
「しっ……」
「むぐ?」
愛沙の異変に気付いた少女が声を上げようとし、愛沙が少女の唇を人差し指で塞ぐ。
───シーン、ドシーン………
「この音って……いや、まさかね」
ドシーン、ドシーン、ドシーン………
「音が大きくなるこの足音。……嘘でしょ!?」
「え? 何? 何っ!?」
その足音は幻想界【アルフィーニ】で聞いた事がある音で、愛沙はその正体が来る前に既に驚愕し、何も知らない少女はその大きな足音に怯える。
バキバキバキ─────
「あ、あああ………」
「………やっぱり」
少女が腰を抜かし、愛沙は苦痛を浮かべながら少女の前に立つ。
「GOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!」
いくつものドアを壊し、入って来たのは『ゴーレム』だった。
「? ストーンゴーレム……じゃない? もしかしてアイアンの方!?」
しかも最悪な事に、文字を削って破壊出来ないタイプの奴だ。石ならまだ勝ち目はあったかもしれないが、金属で出来ている以上、愛沙にはその金属を削るだけの体力は無い為、勝ち目はない。ていうか、最初から戦う理由も戦力も無いんだけども。
「GOOOOOOOO!!」
ブゥン────
「「っ!?」」
ドォーン!
「「きゃあああ!?」」
愛沙は初めて見るタイプのゴーレムに呆気に取られ、少女はいきなり現れた怪物に驚き、一瞬2人の行動が遅れ、愛沙達の手前にゴーレムの拳が振り下ろされ、その衝撃と破片と共に愛沙達が軽く吹っ飛ぶ。
「……というか何でここに魔物がいんのよ………」
外にいる魔物も含め、何故かこの一帯だけ幻想界の魔物がいる事に疑問を持つ。
「きゃあああ!?」
「っ、しまった!?」
折角元の世界───に近い世界にやって来たのにまた見慣れた魔物を見て思わず愚痴った事で更に反応が遅れ、2、3歩先にいた少女が狙われる。
「GOOOOOOOO」
「させない!『モーメント』!」
ゴーレムの振り上げた拳に光を当て、ほんの一瞬だけ動きを止め、少女を抱いて下がる。
ドゴーン、っと床に穴が開き下の階が丸見えになった。
「GOOOOOOOOOOOMMM!!!」
「っ、『シールド』!」
ガキィ───ン!!
「くぅっ!?」
これまで何度もお世話になった耐衝撃魔法『シールド』。愛沙はこの魔法の熟練していて、幻想界での強烈な攻撃も難なく防いできた自慢の防御魔法。
しかし世界が違うのか、このゴーレムの放った拳、一発で自慢のシールドにヒビが入り、若干ながら愛沙にも衝撃のダメージが入る。それでも今は堪えないといけない為、すぐにシールドを強化するが、
「GOOOOOMMMMMっ!!!」
ガンガン、ゴンゴン、ダンダン───!!
「~~~~~っ!!」
一発毎に壊されかけ、その度に修復するが、段々と修復が追いつかなくなり、ヒビが大きくなる。
ここに来る前、この少女を見たという怪我人の治療と共に、真桜達へ伝言もした。なので愛沙は真桜達が駆け付けてくれるまで耐えるつもりだ。
しかし、愛沙のその考えが甘かった事をすぐに知る事になる。
ここは廃工場、縦長床厚3階建ての2階。つまりその下には1階があるという事は、
「GOOOOOOOOO!!!」
ブォン─────ダァン!!
「きゃああああああ!?」
ゴーレムがやったのは拳を直接愛沙にぶつけるのではなくその下、床をぶち抜き、愛沙達の下から掬い上げる様にアッパーした。
防御魔法持ちは、シールドやバリアを張る際、どうしてもドーム型になる為、地面の下、つまり円形の形に展開する事が出来ない。いや、やろうと思えば出来るのだが、基本地面に接している為、地面までは展開されているのだが、ここは2階、それと今まで直接殴って来た事で、シールドを修復する魔力も全部上部に持ってきたからどうしても床の部分のシールドの効果が薄くなる。
よって1階部分からアッパーの要領でふっ飛ばされた愛沙と少女。愛沙の方は何とか意識を保っているが、少女は気を失っている。幸いゴーレムとの距離は愛沙の方が近い為、狙うとしたらこっちの方だ。
「GOOOOOOO!!」
「くっ………え?」
そして再び愛沙に振り下ろされる拳、それに合わせてシールドを展開───しようとしたが、何故か出なかった。
その原因は簡単、魔力切れだ。普段なら長時間シールドを張っていても無問題なのだが、今日は回復術の連発に、このゴーレムでのシールド展開&修復で予想以上に大量に魔力を消費してしまっていたのだ。
「ここまでね……」
戦闘派ではない愛沙がゴーレムの拳を受けるという事はすなわち『死』に等しく、おまけに回避するだけの力も残っていない。
なので愛沙が取った最後の行動はこのゴーレムと共に自爆する事。
そのやり方は簡単、自分の命を魔力に替え、爆発させればいい。勿論これをやれば相手は死ぬ。自分も死ぬ。そういう魔法だ。
(ああ……最後にせめて『正義』に会いたかったなぁ……)
と、走馬燈の様に未練を残しつつ、愛沙は両手を広げ────
「『覇導剣』!!」
ガキィン!
「GOOOOOOOO!?」
「───え?」
突然響いた懐かしい声と共にゴーレムが弾き押され、愛沙はその声のする方を向くと、
「よ、危ない所だったな愛沙!」
「正義!」
そこにいたのは【アルフィーニ】で離れ離れになった幼馴染の正義だった。
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正義が愛沙と再会した、その同時刻。
「さややー!」
「うわぁっ!? ってリオ!? 何時の間にこの世界に!? って、今は鍛錬中だからくっ付くなって───うわぁっ!?」
バシャン
「「きゃああ!?」」
「「あー……」」
タイミングが悪く、錬成中だった液体(水)が空中で弾け、佐夜とリオ、舞華がびしょ濡れになった。アルガド爺さんは自分にだけ結界を張って無事だったけど。
次回にチャア、義信が合流する予定です。




