第16話 ~魔〇村 ベリアルの経緯~
ここでベリアルが魔界で何をやっていたのかが判明します。
「私はベリアル様の妻───コホン……婚約者、ですわ!」
「「「「「「はあああああ!?」」」」」」
「………(ゴリゴリボリボリ)」
突如エンカウントした謎の金髪灼眼の女性に一同驚愕。剛は我関せずといった感じで魔石をゴリゴリボリボリ食している。歯、砕けない?
「ち、ちょっと待て! 何でどうなってそうなった!?」
婚約者と言われて驚愕したベリアルも訳が分からないと言い張る。
「お、お前、俺達と逸れてる間ナニやってたんだ!?」←正義
「何もしてない! ただ佐夜を探していただけだ!」
「佐夜を探すだけで何で婚約者が出来るのか意味が分からないわ……」←舞華
「俺様こそ何故そうなったのかが分からん!」
「まさか犯罪行為でもやったのか?」←やすし
「『殺し』以外はやっとらん!」
「こ、殺しは犯罪じゃないのかなぁ?」←佐夜
「そうなのか!?」
「………(ボリボリ)」←剛(ジト目)
「何か言えよ!?」
仲間達に質問攻めに遭い、釈明(?)するベリアル。一人何も言わずにジト目で魔石を食うのがいるが。
「え~っと君。皆が混乱してるから説明してくれるかな?」
「んもうっ、仕方ありませんわねっ」
ガヤガヤしだしたのでヴァンがベリアルに引っ付いている女性に説明を求めた。
この金髪灼眼の『ですわ』口調の女性の名前は『ツァーヤ・ルナリスク』。この移動してきた魔界に住む吸血鬼でこの魔界の女王らしい。
何でも話しに聞くところ、百年前まで栄えていた魔界だったのだがここの所衰退の一途を辿っていて、前王だった父も二十年前に亡くなり、それを機に魔界で戦争が勃発。
その結果、現魔物達の多くは死に大地は荒れ果てて、大半以上が某・魔○村状態になってしまったらしい。その上、そんな環境で生まれてくる魔物達は知性がかなり低く、人語を介する程の生き物が生まれにくくなってしまったのだ。
なので人語を介す程の知性を持ち、尚且つ強者と呼ばれる程の魔力を持った魔物・魔族はツァーヤが知る限り、百人もいないらしい。
このままだと確実に魔界が滅ぶ故、前王の父から王の座を引き継いだツァーヤが自室で悩みに悩んでいた所、突如窓枠に現れた謎の魔物が現れ、その魔物の提案を聞き、ツァーヤがそれを実行した事がこの【魔界大移動】の実態だったのだ。
ツァーヤが魔界を謎の魔物の誘導に従って動かし、魔界の再発展に繋がりそうな世界へ直接ぶつけ、融合させれば他世界の生物との交配が可能になり、少なからず魔界に好影響をもたらすと思い、魔界とぶつかったのがあの物質界なのだ。
で、勿論ツァーヤも含め魔界に住む魔物達は皆好戦的で話し合いではなく侵略という形で相手側の世界を制圧して取り込もうと、女王であるツァーヤは人語を介する事の出来る数少ない部下達に魔物達を従わせ、ぶつかった瞬間に攻め込む為の準備をさせた。
「あ、そうそう。私にそう提案したのはそこで石を食べている者が(兎持ちで)持っている魔物に似ていましたわ」
「……やっぱりここでも提供者が関わっていたか」
ツァーヤがそう言うとヴァンが溜息を付いて頭を掻いた。
だが、魔界が物質界にぶつかる直前、集合させていた魔物達の群れの中心に突如転移してきた者によって物質界への侵攻を大きく阻害されたのだ。
「それってまさか!?」
「ああ、それは俺様だな」
目をくわっと見開き佐夜が当の本人を見て、本人があっさり答える。
何故か間違って魔界に転送されたベリアルに魔物達が興奮して襲い掛かり、ベリアルが当然それを駆逐しまくり、魔界が物質界にぶつかった時には既に魔物の数が半分以下にまで減らされたのだそうだ。
で、生き残った魔物達は物質界とぶつかった直後、ベリアルから逃げる様に物質界へと流れ込み、協会機関メンバーや現地人達からの襲撃に遭って無残に散って逝った。
「ああ……だからあんな大げさな現象の割には敵の数が少なかった訳か」
「何だかんだでベリアルさんちゃんとみんなの役に立ってたのか……」
実際に魔物達と遭遇していたやすしと歌姫である佐夜が呟く。歌姫関係ねぇ。
「んで、転移直後に周りにいた魔物達を駆逐したのは話の流れで分かるが、それがこの女の求愛行動とどう繋がんだ?」
「だから回さないでってばぁ~~」
「あー……それなんだが………」
片手で魔石を食しながらもう片手で掴んでいるヨツハを暇なので再び縦回転でグルングルン回し、悲鳴を上げるヨツハを知る目にベリアルに事の展開を問う。
転移直後に襲ってきた魔物達を駆逐した後、何とか人語が話せるツァーヤの部下を捕らえ、「サヤはどこだ!?」と聞いた所、城に居ると聞き、敵に捕まっていると勘違いしたベリアルは城へ向かい、道中や城に居た魔物やツァーヤの部下の魔族達を悉く撃破した。
───勿論、裸パンツ(トランクス派)一丁と拾った(頑丈な)槍を持って。マジ、リアル魔○村(笑)。
で、最後の謁見の間に居たツァーヤを見て会話し、結局佐夜がいない事が分かったベリアルはそのまま去ろうと踵を返したが、パンツ一丁の奴に部下と大量の魔物達がやられたという事実を看過出来ないツァーヤがベリアルに襲い掛かり、あっさりと返り討ちにされた。
そしてその後、佐夜が城に居ない事を知ったベリアルは魔界中を走り回って彷徨っている所でようやく佐夜と正義と合流を果たしたのだ。
ちなみに何故ベリアルが『佐夜は城に居る』と勘違いしたのかと言うと、捕まえた部下は「ツァーヤは城に居る」と言っていたのがベリアルには「サーヤ」つまり「サヤ」と誤聴した故の勘違いだったのだ。
『ツァーヤ』と『サーヤ(サヤ)』。確かに早口で言うと聞き間違えそうだなと皆思った。
─────と、ここまでがベリアルが知っている話。
「ベリアル様に強烈な一撃を貰って私、確信しましたの。あの御方が私の運命の人だと!」
「え、ドM!?」
「つか何故そうなる!?」
うっとりトリップしながら言うツァーヤに舞華と正義がツッコんだ。
「私の王家の家系は代々、成人を迎えた後、決闘などで相手に完敗した場合、『その強者に嫁ぐ』という決まりがありますの」
「だからベリアルの嫁になると?」
「それもあるのですが……」
先代が決めた掟に従うのか?と聞いてきたヴァンにツァーヤは表情を暗くし、
「ドンドン衰退していく魔界には私以外、強い者などいないんですの。現に私を除いての魔界ナンバー2だった部下の者はベリアル様の人差し指だけで死んでしまう程、弱かったですし」
「「指先一つでダウンさ!?」」
「だからHOKUTOか!?」
自軍の部下の弱さに大きく溜息を付くツァーヤに元ネタを知っている佐夜、正義、ヴァンがツッコむ。
「だから私、運命の人となる強者と出会うべく、異世界の魔物からの誘いに乗って魔界ごと亜空間を移動させていましたの」
ツァーヤがそう言った事でようやく一同がツァーヤの目的を悟った。
つまりこれは自分以外の者が弱すぎて自世界では婿探しなんて出来ないツァーヤと提供者の思惑が噛み合い、互いに協力し合っていたのだろう。途中で提供者のプランはご破算になってしまったが。
「そして遂に見つけた。私よりも圧倒的に強い御方を!」
「う………」
だが提供者とは裏腹に、目的が叶ったツァーヤは瞳をキラキラさせながらベリアルを見つめ、珍しくベリアルが後退る。
「……そもそも何故お前、生きてるんだ?」
「? どゆこと?」
「いや、城でこの女を返り討ちにしたあの時、確かに殺した筈なんだが……」
「さり気なく殺したとか流石強奪魔人……」
出来れば敵対した者を簡単に殺すのは止めてもらいたい………。
「え、だって私『吸血鬼』で『不死者』ですから♪」
「何?」
『吸血鬼』ではなく『不死者』というワードに剛が食い付く。
「ですのであの時確かにベリアル様の一撃で身体を真っ二つにされましたが、それと同時にベリアル様の深い愛を感じましたわ♪」
「無い無い。愛は込めて無い」
身体をクネクネしながら言うツァーヤに無表情でベリアルは言う。
「───ってあら? ベリアル様、目から血が出てますわよ」
「ああ、これは佐夜に───」
「サヤ!? それはまさか貴方様の言う私の恋のライバル!?」
ベリアルが全てを言う前に『サヤ』という単語にツァーヤが過剰反応を示し、周りを見渡して該当する人物を探す。
ベリアルは愛しい人なので排除対象外。
ヴァン、正義、剛、やすしはどう見ても男性なので対象外。
舞華は変身が解け、ロリ状態なのでおそらくベリアルの恋愛対象外。
と、いう事は、
ギギギ……ギギ………
「うひぃっ!?」
錆びたロボみたいにギギギと首を動かして赤い瞳にロックオンされた佐夜が悲鳴を上げる。
「貴女ですわね? 『サヤ』というベリアル様の意中の人は」
「た、確かに俺が佐夜だけど、俺はベリアルさんの事、何とも思ってないから!」
「っっ!!?」
この場においてベリアルの恋愛対象となる佐夜を特定したツァーヤが佐夜に向かって歩きながら言うと、佐夜はそれを真っ向から否定し、ベリアルに衝撃が走る。
バタリ。
「あ、死んだ」
「ベリアル様ー!!」
佐夜に振られてショックで真っ白になったベリアルがパタリと倒れ、ツァーヤが駆け寄った。
「おのれ……ベリアル様を誑かす女狐……私と戦いなさいな!」
「いやいやだから誑かしてなんかいないし! それにそもそも俺、『男』だし!」
「男………?」
ツァーヤに詰め寄られて決闘を申し込まれる佐夜は自分の見た目と性別の違いを唱えてツァーヤを納得させようとする。
が、
「そ、そんな大きなお胸の塊をぶら下げておいて、貴女のどこが『男』ですの!?」
「っ!?」
「バカ……」
そう言われて佐夜は忘れていた事に気付かされ、舞華が呆れる。
そう。今、佐夜の身体は女性化しているのだ。
「そんな言い訳にもならない事で誤魔化される私ではありませんわ。という事で、いざ、尋常に勝負!」
「え、いや、ちょっ、待……っ!?」
有無を言わさず攻撃を仕掛けてきたツァーヤに佐夜は狼狽え、周りにいたヴァンや正義達もまさか佐夜が本気で命を狙われるとは思っていなかったらしく、急いで佐夜を庇おうとするが、距離的に舞華以外誰も間に合わない上、佐夜も舞華も先ほどの戦いで魔力がほぼ空だ。防護壁を出そうにもMPが足りない。
「エレキ・ガ・マギナ!」
「「っ!?」」
いきなり攻撃力の高い雷魔法を撃ってきてそれが佐夜と舞華に迫る。こうなったらヴァン達が庇いに来るまで耐えるしかなく、2人は身構えて防御を固める。
するとそこに、
「魔法防御!!」
ガキィン!
「「「っ!?」」」
佐夜と舞華を球状のシールドが包み、ツァーヤが放った電撃がかき消される。
更に、
「闇炎!」
ボボボボボ─────
「っ、く……っ」
両サイドから放たれた黒い炎玉をバックステップで回避するツァーヤ。
「全く、2人の帰りが遅いからこっちから来てみれば────」
「まさかこんな展開になっておるとはのぅ」
「え……」
「おいおいまさか───」
そして声のする方へ佐夜と正義が振り向くとそこには───
「「愛沙、真桜!」」
物質界に置いてきた筈の正義の幼馴染、愛沙とその魔王妹の真桜が仁王立ちでそこに居た。
愛沙、真桜も合流し、次回で魔界を出て物質界へ戻ります。
では。




