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内臓が乾いたような気分。

どうやら昨日のアカネの話を聞きながら飲み過ぎてしまったせいだろう。

私は水を飲むためにベッドから起き上がるが、何か物足りない。


「あなた?」


大声で夫を呼んでみるが、聞こえてくる返事はなかった。

今の時刻は9時。

今日は日曜日だから出勤したはずがない。


「どこに行ったんだろう? まさか··· 任務?」


まだ夫への疑念が晴れない私の頭の中には、再び恐ろしい考えが芽生え始めた。

私は無駄な心配に悩まされないように、頭を振って思考を振り払った。


「今はそんな場合じゃない! ミオに返事が来たかどうかから確認するんだよ。 夫に対する調査は··· その後からしても遅くないから!」


携帯を確認すると、幸いにもミオから返信が来ていた。


[ミオ!夫のことで聞きたいことがあるんだけど、明日時間ある? 会えるかな?]

[ごめん、今週は忙しくて時間がないんだけど、急用なの?]


そうだ。

これは緊急事項だ。

私の命がかかっていることだから!!

でも、私の悩みを他人に聞かれたら、ちょっとした誤解...

いや、過剰な妄想に陥った狂った女と見なされるかもしれない。

もちろん、ミオに夫が殺し屋だとか、政府の暗殺工作員かもしれないという悩みを打ち明けるつもりはない。

しかし、やはり夫の話をするなら、会って話したいので、残念だが、ミオから夫の情報を得るのは後回しにしよう。


[いや、そんなことはないよ。 ただ会いたくて··· あはは···。]

[私もひまりと会って遊びたいけど仕事のせいでできないね··· 今度は必ず連絡するね。]

[うん!ありがとう!]


ミオのOKの絵が描かれたステッカーを最後に対話が終わった。

自然と出るため息。

私はソファに身を投げ、静寂に身を任せた。


(どうすれば夫の正体を突き止めることができるのだろう······。)


尾行。

位置追跡。

誘導質問。

私が仕掛けた全ての罠を巧妙にすり抜ける夫。

正直、卑怯だと思う。

きっと私の罠に気づいていながら、知らないふりをして後ろで笑っているのだろう!

許せない...!

こうなってしまった以上、手段や方法を選ばず、攻め込むしかない!!


「この方法だけは使いたくなかったんだけど...もうダメだ!」


私は意気揚々と夫の書斎に向かった。

夫は会社の機密が漏洩してはいけないという理由で、この部屋への立ち入りを禁止していた。

妻まで疑うの? という質問はしなかった。

夫を困らせるのは目に見えているから。

それに、わざわざ夫が守りたいプライバシーを侵害する理由はない。

夫も私が何をしようが何の干渉もしないのだから。

しかし、今日だけは違う!

なぜなら、夫は確かに怪しいという確信があるから!

平凡な職場の人が人を拷問する内容を話すはずがないじゃないか!


「ふぅー.......」


夫の書斎に向かうドアの前に立つ私。

静かな緊張感

ドキドキする心臓...!

私を迷わせる静かな恐怖!

魔王のダンジョンに向かう扉の前に立つ勇者の気持ちがわかるような気がする。

やはり勇者は誰でもなれるものではなかった!


-勇者ひまりは剣を取れ!

-はい!

-貴様は魔王の首を斬る準備はできているか!?

-準備完了です!

-じゃあ、突撃しろ!!


王の命令を受けた勇者ひまり。

彼女は今、魔王のダンジョンに向かう入り口に立っていた!


「よし...夫に嫌われるかもしれないけど...バレなければいいんじゃないの!?映画で見た悪役は完全犯罪は無罪って言った!」


私は深呼吸をしてドアノブをつかんだ。


「行くぞ!!!」

(ガキッ)

「え?」

(ガキッガキッガキッ)

「えええ!!!!」


重厚な鉄の塊に阻まれたドアノブ。

書斎に向かう扉は固く閉まっていた。

当たり前かもしれない。

誰でも自分の1級秘密がいっぱい保管された部屋に向かうドアを閉めなかったはずがないから。

私が夫を甘く見すぎたようだ。


「くぅ···! 悔しい···!」


夫の徹底ぶりが恨めしい。

そして

私の安逸さがとても恥ずかしい。

魔王の部屋にも入れない勇者なんて...

私はただの村人Aに過ぎなかったようだ。

結局、私は膝をついて躊躇してしまった。


「くぅ···! 真実が目の前にあるのに諦めなければならないなんて···!!”


その時、私の頭の中に閃光のように何かが浮かんだ。


「そうだよ··· それがあった!!!」


確信に満ちた私は寝室に向かった。

そして衣類を収納している小さな部屋に入った。

この部屋の一番奥にある、爆弾が爆発しても耐えられそうな黒いキューブ。

私が思い浮かべたのは、金庫だ!

貴重品を入れるために買った金庫。

金庫の中にはこの家のすべてのドアを開けられる···

マスターキーが入っている!


「くっくっくっく...!クハハハハハハハハハ!!!」


私はパスワードを入力してドアを開けた。

現金と貴金属の間で銀色に輝く小さな鉄片。

私は簡単にマスターキーを獲得した!!

堂々とマスターキーを意味する大文字のMが刻まれた鍵。

これはまさにエクスカリバー!


「ふふ、あなたもこれは思いつかなかったでしょ!?」


鏡がないので確認できないが、私は今邪悪な笑みを浮かべているだろう。

かまわない.


この戦闘に勝つことさえできれば、私は何でもできる!

私はすばやく夫の書斎に駆け込んだ。

そして、マスターキーを勇者の剣のように持ち上げた。


「私の勝利だ!」


私はためらうことなく鍵をドアノブに入れて回した。


(ガキッ)

「え?」

(ガキッガキッガキッ)

「.......」


石で頭を殴られた気分。

私は今の状況を納得できない。

いや、理解すらできない。


「なんで!?どうして!?なんでマスターキーが効かないの!?」


何度も鍵を試したが、やはり扉は開かなかった。


-勇者は魔王に挑戦することすらできずに敗北しました。


これが私の勇者物語のエンディングだ。


「認められない! なんでこんなに攻略が難しいんだ!?」


私は罪のないドアを拳で殴った。


「痛い!!」


私は赤くなった拳を抱えて、流れ出そうとする涙をこらえた。

全てが嫌になった。

この状況が!

この家が!

この世界が!

すべてが憎い···!


「本当に酷い!」


悔しさに勝てず、もう一度ドアを叩いたが、手だけが痛いだけだった。


「痛い...。」


ところがその時、突然ドアノブが回る音と共にドアが開き始めた。

そしてゆっくりと···

夫がドアの向こうから姿を現した。

心臓がお腹まで下がったような気分。

一瞬にして顔の筋肉が硬直するのを感じた。


「あ, あなた?」

「ど,どうしたの? こんなにドアを叩いて···。」

「······。」


脳がスタンガンで撃たれたような感覚。

何の考えもできない。


「え?ひまり?大丈夫?」 どうしたの?」

「私は··· だから··· 。」

「ひまり!!手が···!」


夫は赤く腫れ上がった私の手を握ってあちこち様子を見た。


「血が出てるじゃん!!!」


夫は躊躇して座っていた私をそのまま持ち上げた。


「まず治療しよう。」


夫は私を寝室に移した。

そして、薬が入った箱を持ってきて、丁寧に傷口に薬を塗り、その上に絆創膏を載せた。

治療が終わると、夫はため息をついて私を見つめた。

矢張り腹が立っている。


(部屋に入ろうとして怒ったんだろう···。)


私は夫の口から出る次の言葉がとても怖かった。

ただの一度も怒ったことのない夫なので、今の状況がとても怖い。


「ひまり。」

「.......」

「ひまり、私の目を見てくれ。」


私は苦労して夫の顔を見た。


「ごめん。」


予想外の夫の謝罪。

なぜだろう。

謝るべきは私なのに...

むしろ夫が私に謝っている。


「ヘッドホンをつけていて、私を呼ぶ声が聞こえなかった。 でも、さっきのようにドアを叩く行動はしないで。 今のように怪我をするかもしれないから......。」

「うん...。」

「たくさん怒った?」


私の頬を注意深く触りながら、心配そうな目で私の表情を見つめる夫。

このような夫の優しさに、この時までの恨みと悔しさがすっかり消えてしまった私がとても情けない。


「何を言ってるの··· 謝らなければならないのはむしろ私だよ··· ごめんなさい···。」

「いや、ひまり。 私が軽率しすぎた。 次からは気をつけるよ。」


何をどう答えたらいいのかわからず、私は答えの代わりに夫を抱きしめた。

そしてそれに応えるように、夫も私を抱きしめた。


「これで仲直りするんだろ?」

「最初から喧嘩したこともないよ...。」

「ありがとう、ひまり」


いつも怒ることなく、私の気持ちを気にかけてくれる優しい夫。

こんな夫を疑うのは何か悪いことのようだが···

やはり私は夫の正体がとても気になる。

だから、優しい夫の正体を突き止めようとする私の闘いは続くだろう。


「ところで、手に持っているのは何だ?」

「え? あ、何でもないよ!」

「ふふふ...そうやって隠すと、かえって気になっちゃうよ...何を隠してるの?」

「何でもないよ!!!」

「えっ!?逃げた!?」

「キャー!ついてこないで!」


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