第33話:熱気の証明
合同稽古は、両校全員での激しい打ち込みから始まった。
道場内に響き渡る踏み込みの音と気合の声。成瀬康介は、青原中の生徒たちの動きに目を細めた。
「早川先生。青原中の生徒さん……以前より上手くなっておられませんか?」
「わかりますか」
早川先生は、竹刀を握る教え子たちの背中を見つめながら続けた。
「あの日、明鏡館の皆さんと試合をしてから変わったんです。明鏡館は、自分たちのような相手に、本気で、真剣に向き合ってくれた。自分たちも、あんな風になりたい……だなんてね」
「それは、指導者冥利に尽きますね」
「ええ。おかげで柄にもなく、私まで少し燃えてきまして」
稽古の強度はさらに増していった。明鏡館のメニューに、青原中の生徒たちは死に物狂いで食らいついていく。その光景を、瞬は驚愕の思いで見つめていた。
(……前より…強くなってる…)
七月半ば。道場内の温度は限界まで上昇し、空気が熱を帯びて重く停滞する。
「よし、休憩だ! 水分補給を忘れるな」
康介の声で、張り詰めていた糸がふっと緩んだ。
「あち〜……! 水、水だ!」
大吾がタオルで顔を拭いながら叫ぶ。守屋が手伝い、凛がジャグを持って動き出す。
「杉森くん、大丈夫?」
瞬が駆け寄ると、杉森は力なく笑った。
「キツイよ……桐谷くん、いつもこんな稽古してるの?」
「キツイだけじゃないですよ」
佐伯が汗を滴らせながら言葉を添えた。
「このメニューには、実戦に即した『理』が組み込まれています。繰り返すことで、何も考えていなくても身体が最適に動くようにね」
そんな和やかな光景を眺めながら、瞬は自分の右手のひらを見つめた。
相手は強くなっている。そして、自分は今、理論という巨大な壁の前で立ち止まっている。
「さあ、面をつけろ。地稽古だ!」
康介の鋭い号令が飛ぶ。
瞬は静かに面紐を結んだ。面金の向こう側で、世界が狭まり、研ぎ澄まされていく。
(いよいよだ……)
その胸の鼓動は、不安か、あるいは期待か。
瞬はゆっくりと、杉森の待つ立ち位置へと歩みを進めた。
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