上田龍
隆史は、妻の真琴が上田龍と一緒にいる所をイメージしようと試みたが、まったくと言っていいほど思い浮かばなかった。真琴はただのOLで、上田龍との接点がまず思いつかない。真琴は一般人の中ではきれいな方ではあるが、芸能人に囲まれている上田龍からするとパッとしないだろう・・・と思う。何故彼は真琴をそばに置いたのだろうか。そもそもの出会いはなんだ? 疑問は尽きない。しかし、少ししかない時間の中で、重要な質問だけを確実にピックアップして聞いていくしかない。それは三か月も前から温めていたはずなのに、今更くだらない嫉妬心が出てきて色々問いただしてしまいたくなる。隆史は呼吸が乱れそうになるのを必死で深呼吸をして抑えた。
「すみません、児島様で間違いないでしょうか?」
背後から声が聞こえる。隆史は、ああ電話でさんざん聞いた声だ。と思った。丁寧な口調でいながらも、絶対に譲らない意思を感じさせる不思議なマネージャーだ。
「どうも、児島隆史と申します。本日はお時間とらせて頂きありがとうございます。」
「いえ、そうお固くならずともよろしいですよ。初めまして、上田龍のマネージャーをしております、佐藤守と申します。初めまして、といった感じはしないですね、はは。ではご案内いたします。」
エレベーターに乗り込む佐藤守の後をついていく。エレベーターのボタンは50階まであるのだが、その一番上、50階を押している。隆史は、雰囲気に呑まれないように気を付けようと唾を飲み込んだ。
「電話では15分~30分と申しましたが、上田の方から1時間取るように承りまして、児島様のご都合に合わせて1時間以内でよろしくお願いします。」
「そうですか。それならありがたい限りです。時間には十分気を付けますので。」
隆史は、上田龍が時間を多くとってくれたのは、きっと彼も隆史に聞きたい事があるからだろうと思った。上田龍が俺に嫉妬するだろうか? 本心は想像もつかない。妻のことでさえわからなかった俺に、その不倫相手のことまでわかる筈がなかった。
異様に長く感じるエレベーターに、不安と焦りが募る。最早何の不安で何の焦りであるかわからなくなっていたが、営業経験が少しだけ功を制し、うまく緊張をほぐしていた。
そして、50階に到達したエレベーターが開く。
「私が付き添えるのはここまでとなります。5015のお部屋です。ではまた後で。」
「ありがとうございます。ではまた。」
エレベーターを出て、廊下を右にまっすぐ行くとすぐに5015室のドアが見えた。
ノックをする。するとすぐにドアが開いた。




