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やりたい放題シンデレラ~ヒーローは変態ばかり~  作者: お米うまい
第三章 メアリー編

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第38話 何も知らない外野

「俺達双子は、代々クロスバーン家に執事やメイドとして仕える家に生まれた。生まれた時からアイツの傍に居たし、親からはアイツの為に生きて、アイツの為に死ねと言われ続けて来た。そして俺たちもそれが当然だと思っていた」


(無理もありませんわ……)


 教育とは酷く偏ったものの見方をすれば洗脳とも言えるものです。


 幼少の頃から当たり前のように教え込まれてしまったものは、良い悪いを判断するどころか疑う事も出来ない常識として根付いてしまう事が多々あり、それは習慣や癖として根付いて中々変える事が出来ません。


(……クロスバーン? はて、どこかで聞いたような気がするのですけれど)


 と、メアリーはそこで首を傾げて考えます。


 クロスバーンという家名が、どうも頭の隅の方で引っ掛かったからでした。


「そんな俺達にアイツは友達になって欲しいと言ってくれた。いつでも貴方の為に死ぬ準備は出来ているって言った俺達に、俺の為に死なないでくれ。自分の事を考えて自分の為に生きて欲しいって言ってくれた。言われた時は意味なんて解らなかったし今でも解っているとは言えないけど、それでも心配そうに俺を見詰めるアイツの目が何だか嬉しかったのだけは強く覚えている」


 相変わらず淡々と語るクイナですが、表情は穏やかで微笑みすら浮かべていました。


(まあ、確かにその話だけを聞いているなら好感が持てそうなものですが……)


 話だけ聞くなら、身分を鼻にかけず相手を思いやる気持ちを持った大層な青年ではありませんか。好感こそ持てども、嫌いになりそうな要素はありません。


(それがどうしてあんな変態に成り下がったのやら)


 しかし、残念な事にフォックスは妹を押し倒して下着を剥ぎ取ろうとした変態なのです。


「世間一般での好きだの慕うという気持ちが俺にはどうだか解らない。ただ、気が付けばアイツが傍に居るのが当たり前になっていた。モノでも何でも構わないからアイツの傍に居たい、離れられたくないって気持ちが抑えられなくなった」


「い、意外と情熱的ですわね」


「だから俺は言ったんだ。身も心も捧げる準備は出来ているから、俺の全てをお前のモノにして欲しいって。どんな事でも受け入れるから、捨てないで欲しい。死ぬまで傍に置いて欲しいって」


「な、なんと熱烈なプロポーズ……」


 男装をしていても大人しそうな雰囲気を持つ彼女の、予想すら付かない激しい告白に思わずメアリーは頬を赤く染めます。


「……俺にそんなつもりはなかった。便利な道具でも都合の良い女でもいい。メイドどころか奴隷だってよかった。ただ傍に居たかったんだ。それだけだったのに、アイツも勘違いして俺なんかを許婚にしてくれた。俺もずっと好きだったって、泣いて喜んでくれた」


(あんな情熱的な告白を聞かされて奴隷宣言だと思う人間が居たら、それこそ嫌ですわ)


 ここでクイナが言っている奴隷は、下世話な意味で身体を使われる奴隷でしょう。


 借金も何もないのに、いきなり仲の良い女が奴隷宣言してくる男なんて頭がおかしい上に変態で更にナルシストでもない限りは有り得ません。


 それはともかく。


「好きな女に告白されるまで待っているなんて、情けない男ですわね」


 自分から告白する気もなく、相手からの告白を待つような男だったのかと、思わずメアリーの口から呆れるような声が漏れます。


「違う! アイツは自分から告白したら俺が嫌だったとしても断れないと思ってたんだ。いくら仲良くなっても、俺が身分を気にして頼みを断れないって気付いていたから、アイツはどんな時だって俺に頼み事なんかしなかった」


(……今更そんな話を聞かせて頂いても、下着泥棒な上に、鞭で叩かれて喜ぶ変態にしか思えないのが悲しいところですわ)


 クイナの語るフォックスと、メアリーの知っているフォックスが全くの別人にしか感じない事がメアリーには残念で残念で仕方がありませんでした。


「馬鹿なヤツだよ。対等な友達とか自分で言ったくせに、自分が一番遠慮してさ。頼み事一つしない友達の何が対等なんだか……」


 相手が命令に逆らえないというなら命令しない。頼み事や願い事もしない。


 どう頑張っても対等な立場になんてなれないのを解っているからこそ、強要にならない事は徹底的に避けたのだ。


 ――それだけが自分に出来る誠実の証明だと信じて。


「それでも最近は上の人間らしくなってきたかな。別れの言葉も言わずに捨てたと思ったら、今度は再会する為じゃなく自分の用事の為に会いに来て、碌に話もせずに帰っていった。都合の良い友人だよな」


「それは違いますわ」


 皮肉混じりに呟いたクイナを、メアリーは強い言葉で否定します。


「彼は男のフリを続けるクイナ様でなく、許婚であったシイナさんを今でも愛しているんです。クイナ様と一緒に居るとシイナさんの事を忘れてしまいそうで怖かった。だから逃げ出したと言っていましたわ」


「そうか。それなら俺もこうして茶番を続けている甲斐がある」


 同様を見せずに答えるクイナでしたが、その表情は酷く寂しげに見えて――


「ですが、それなら尚更に貴女は正体を明かすべきではないですか? これでは貴女の幸せの為に身を捧げたお兄さんが無駄死にではないですか!」


 思わずメアリーは声を荒げてクイナを怒鳴り付けます。


 兄であるクインがシイナの為に死に、シイナもフォックスも愛し合っている。何よりもクイナの表情が男装なんてせずにフォックスと会いたいと物語っている。


 それなのに、クイナが男装を続けているのが意味のない意地にしか思えなかったから。



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