マドレーヌ14歳、夏。~忘れたかった記憶〜
夢を見た。
ベルベットのように深く濃く温かな白い霧の中で抱き合う相手は、闇夜を照らす満月のように明るい金色の持ち主。それが突然、黒髪の、まだあどけなさが残る青年に変わり。辺りも白い霧からテレビとこたつのある部屋に変わった。
こたつの上には2人で包んで焼いた餃子、唐揚げ、生姜焼き、お揚げと芹の炊き合わせ、あり物で拵えた和え物に生姜を効かせた野菜と塩昆布の浅漬け。それらの地味で代わり映えしない部屋と料理に似つかわしくない高価なシャンパンのボトル。リボンのかかったブランド物の包み紙。
そうだ。あれは大学卒業と就職祝いで、ハンバーグとナポリタンとエビフライとオムライスなんかをお子様ランチ風にワンプレートに盛り付けて呆れられたっけ。2人は角を挟んで座っていて、料理を摘みながらダラダラ飲みながら、偶にテレビを観ながら、明日に迫った別れを惜しんでこれからを祝していた。のに。
『れいちゃん』
『んー?』
呼ばれて振り返ると柔らかい衝撃があった。
それがキスだと、初めは理解出来なかった。
『もう寝る、おやすみ』
驚いて何も言えないわたしに、あの子は少し傷ついた顔をして。それが、生きている彼の姿を見た最後になった。
―ああ、そうだ。
酒に酔っての、一時の気の迷いだ。
勝手にそう結論づけて、時が経てば忘れると、有耶無耶のまま。ずっと年下の、家族だと思っていた彼から向けられた真っ直ぐな想いから逃げたのだ。答えを出すのが、家族で居られなくなるのが怖くて。
―きっとそれは、今も、まだ。




