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終焉への反抗者《レジスタンス》  作者: 獅子王将
『3度目の終焉《サード・ラグナロク》』、参戦
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第20話 『緊急招集』

朝8時半。

俺たちは割とギリギリで教室に入る。

「お。おはよう将真、ちょっと遅かったな」

「おう、まあHRには間に合ったんだし大丈夫だろ?」

自分の席に着いて、響弥と軽口を交わす。少し他愛もない話をしていると、先生が入ってきてHRが始まった。連絡の報告を受け、HRが終わる。そこまではいつもと一緒だった。

だが、終わった直後はいつもと少しだけ違った。

「片桐、時雨、鬼嶋……莉緒。お前達はすぐに学園長室へ向かえ。学園長から直々に呼び出しだ」

「は? 柚姉から?」

一体何か。

よくわからなかったが、俺たちは学園長室に向かう。そこに何故か、響弥も付いてくる。

「……なんで?」

「まあまあ、そんなに気にする事はないだろう?」

「……まあ、いいや」

確かに、早期にする事でもないだろう。

しばらく廊下を歩き、学園長室の前に来る。すると、前方から3人の生徒が歩いてくる。

「おっ、美緒みおじゃないっすか」

莉緒が声をあげて、3人の中で水色の髪を持つ少女へと話しかける。よく見ると、目元が眠たげだということを除けば、美緒と呼ばれた少女は莉緒と良く似ていた。

「ん、莉緒。おはよう」

「任務帰りっすか?」

「うん、野営してきた。でも、帰ってきてすぐ呼び出されて、おかげで休む暇もない」

無表情だが、残念と言いたげな雰囲気を彼女は漂わせていた。

「あ、お前……!」

「ん?」

すると、今度は向こう側の男子が俺を指差して声を上げる。

「あの時はよくもやってくれたな……!」

「……俺、なんかしたっけ?」

「覚えてねぇだとこの野郎!」

いや、俺本当に何も覚えないんだけど。すると、リンが隣で耳打ちをするように小声で話す。

「あの人は御白猛みしろたける。確か序列は115位で、将真くんの序列線初戦の相手だった人。覚えてない?」

「いや、思い出した」

言われてようやく。

あの時近くで火弾を目の前の至近距離でぶちかましてくれやがった奴だ。

あの場面であそこまでやる必要は無かっただろうに、忌々しいことこの上ない。

「で? 何か用か?」

「何かじゃねぇ! ずっとタイミング逃して文句言えなかったんだよ!」

「は?」

「お前のあの一発のせいで、腕の骨が逝っちまって、次戦でまともに戦えなかったんだよ!」

「……それって、俺のせいなのか?」

「さぁ……」

意味がわからずリンに問いかけるも、彼女もわからないと首を振る。

それはつまり、肉体強化ができてなかったということだろうか。だとしたら、怪我をした要因はどう考えても猛にあると思うのだが。

「肉体強化してたのにそれを貫通するとか、どんな技使ったらお前みたいな魔導士なりたてがそんな芸当できるんだよ⁉︎」

「しらねぇよ! お前の実力不足だろ、俺のせいにするな!」

「何だとテメェ!」

「まあまあ、落ち着いてくださいっす」

ぐぬぬ、といがみ合う俺たちの間に、莉緒が仲介に入る。さらに美緒が、

「猛」

「何だよ」

「うるさい」

「何だと……いってぇ!」

猛が怒鳴った瞬間、誰も何もしていないというのに、額を押さえて蹲った。

「う・る・さ・い」

「ぐ……」

流石に黙る猛。

「将真さんも、もういいっすよね?」

「……まあ、いいけど」

「それよりも早く入ろう? 呼び出し受けてるんだし」

リンの言う通りだ。それに、こんなところで騒いでいては周りの迷惑になる。

俺は、学園長室の扉を開ける。

そこには、すでに先着がいた。

「あ、杏果ちゃん」

「リン? どうしてここに?」

「私が呼んだのよ」

答えたのは柚葉だった。椅子に腰をかけ、顔の前で手を組むその姿からは、いつもあまり感じられない、強い真剣さが伝わってくる。

「何か__」

あったのか、と言おうとして、先に口を開いたのは杏果の方だった。

「全く、何してたんだか。遅いわよ__響弥」

「……え?」

思わず俺は、響弥の方を振り向いた。

周りも同じような反応をしていた。対して響弥は、静かに笑みを浮かべた。




「学年序列6位、柊杏果よ」

「学年序列9位、荒井響弥だ」

「学年序列19位、朝倉静音あさくらしずねでーす」

柊チームの3人が自己紹介をする。

すると今度は、美緒チームが自らを名乗り始める。

「学年序列3位、鬼嶋美緒」

「学年序列58位、雨宮佳奈恵です」

「学年序列115位、御白猛だ」

そして、俺たちも黙ってるわけにもいかず、自己紹介を口にする。

「学年序列4位、鬼嶋莉緒っす」

「学年序列13位、時雨リンだよ」

「学年序列261位、片桐将真だ」

ちなみに、ここ数日の任務達成の成績のおかげで、序列を上げることはできたが、それでもやはり低いままだ。

「さて、自己紹介も終わったし、そろそろ本題に入りましょうか」

柚葉が手をパン、と合わせて笑顔で言った。

お互いの自己紹介をさせたのは彼女だった。何の意味があったのかはわからないが、取り敢えず今は置いておこう。

「で、何があったんだよ」

「うん。緊急招集なんて初めてのはずなのに、察しがいいわね。まあ、みんなは経験あるだろうから、薄々何かあったんだろうと予測はついたと思うけど」

そして柚葉は、一拍開けて続ける。

「2年生のあるチームが3日間の遠征任務に出ていてね。そこまではいいんだけど、ちょっとピンチっぽいのよ」

「ピンチ?」

「そう。何でも、オークの群れに囲まれたらしいわ。それも総勢軽く100体は超えるって」

「……オークって確か、人型の豚っぽいやつだっけ?」

「うん、そうだよ」

俺の疑問に、リンが答えた。

それにしても、数は凄いがオークってそんなに強い魔族なのだろうか。いやまあ魔族である以上人間より強いのは間違いないのだが、あんまり強くないイメージしかない。

少なくとも、高等部2年生で遠征任務に出られるような人たちが手こずるような相手とは思えない。

だが、次の柚葉の言葉で俺以外の全員が納得の意を示した。

「どうも統率がとれてると思ったら、キングオークまで出てきてるみたいだから、迂闊に動くと危ないんだって」

「き、キングオークですか……それは厄介ですね。その上でオーク100体以上……それなら、呼ばれる意味はわかります」

リンが渋い表情で唸るように言った。

そこで浮上したいくつもの疑問を、俺はリンに問いかける。

「キングオークって言うのは?」

「大体オークの2、3倍程の大きさがあって、その分身体も丈夫だし、元々物理攻撃が効きにくいから、簡単にはやっつけられないの」

「……2年生の人たちの序列は?」

「そうね、平均80前後ってところかしら」

これに答えたのは柚葉だった。

「じゃあ、普通に考えて、その序列でキングオークを倒すのは可能か?」

「うーん……2年生だし無理ではないと思うけど、確かに彼らには決定的な一撃を与えられる生徒はいない。倒そうと思ったら、地道にダメージを与えていくしかないわ」

「……それで3日も持ちこたえられるものなのかな」

「どういう事?」

「いや、これが罠だっていう可能性は?」

最近の授業にもようやくついていける程度にはなってきて、基礎知識はついてきた方だ。

魔族は人間と同じく知性を持つ。ならば、罠だという可能性もある。

より多くの魔導士にんげんを集めて、まとめて殺そうとしている、という可能性が。

だが、柚葉はそれを否定する。

「多分ないと思うわ。確かにオークにもちゃんと知性はあるけど、そんなに高くない。奴らは低位魔族と呼ばれる部類だからね。それに、たとえ罠だとしてもおかしいでしょう? だって、オーク自体そんなに強くないのに、そこに送り込まれたのが高位序列者だったらあっという間に殲滅される可能性があるのは向こう側よ?」

「そうなのか……いや、でも待てよ?」

だが、まだ頭の中に違和感が残る。その違和感が形になるのを待たず、俺は自分の考えを口にした。

「魔族にも、国のようなものがあるって授業でやったんだけど」

「そうね。それがどうかしたの?」

「……もしも、高位魔族が奴らを差し向けたんだとしたら、罠としては成り立つんじゃないか?」

「っ! ……それなら確かに、罠としては上等ね」

助けに向かった魔導士を皆殺しにする。その程度なら何ら問題はない。高位序列者を送ればいいのだから。

だが、それを見越して高位序列者を送ったとして、目的地で更に高位魔族が襲ってきたらどうなるだろう。恐らく、無傷では済まない。

高位魔族には、それくらいの戦略が立てられてもおかしくない程度の知性を持っている。

「吸血鬼とか、鬼人とか……とにかく、そう考えると確かに危険ですね」

「でも、助けに行かないわけにはいかないんじゃないっすか? 助けられるんなら助けないと、こっちの戦力だって落ちてしまうっすよ?」

「……そうね」

柚葉は、難しそうな表情をして考え込む。

だが、杏果がその考えを吹き飛ばすように自信に満ちた声で言い放った。

「そんなもの、助けに行くに決まってるでしょ? この9人の中には十席が4人もいるのよ? 加えて、序列20位以内のリンと静音もいるわ。しかも、序列は低いくせに序列2位といい勝負をしたやつもいるのよ? オーク100体以上? 高位魔族? この面子メンツで、そうそうやられるわけがないでしょう」

「そうだな。しかも鬼嶋莉緒とこの柊杏果は単騎の殲滅力が高いし、それは俺も多少はいるけど。あと、鬼嶋美緒は広範囲の殲滅力に長けている。オーク如きに遅れはとらねぇどころかこんだけ揃ってりゃオークの方はいないも同然だ」

まあ、本当に高位魔族が裏で牛耳ってるならの話だけどな、と響弥が付け加える。

それを聞いた柚葉は、重々しく頷く。

「……わかった。やっぱりお願いしてもいいかしら?」

「もちろん」

杏果が頷く。そして、賛同するように俺たちもこくりと頷いた。

「では、あなたたち3つのチームは、現時点を持って中隊とします。任務が達成され次第、中隊は解除します。いいわね?」

「了解っす」

と、莉緒が。

「……大丈夫」

と、美緒が。

「もちろんです」

と、杏果が。それぞれ了解の意を示す。

「2年生のチームを救出して、誰1人欠ける事なく、任務を達成しなさい!」

『了解っ!』

俺にとっては初めての、大規模な戦闘が、この先に待ち受けている。

俺は気を引き締め直し、中隊の仲間とともに、急いで目的地に向かうのだった。

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