大根ルーム
※大根という単語をたくさん聞くとアレルギー反応がでる方はご遠慮ください
「うみうみ。誰?お空からお胸の小さい子が降りてきたよ?」
声は違うがまた子供の聞こえてくる。
つんつん
声の主は何処からとも無く降って来た人物に興味津々で突いてみる。だが反応はない。
「うみうみ。この子も『クロックオフ』しちゃった子なのかな?」
よく分からない用語を使っているが女の子はその用語に悲しいイメージを連想させる声をして話していた。
すると女の子は落ちてきた人物の心音を確かめるために胸に耳を当て始めた。
チクタクチクタクチクタク
心臓からは時計が織り成す刹那を刻む音が聞こえた。
「まだこの子は止まってないの!」
「う…んぅ。誰?」
僕は胸に女の子の頭を乗せたまま目を覚ました。
目を開けるとまず目に入ったのは明るい蛍光灯の光。周りを見回すとベッドや収納家具が置かれた寝室と思われる場所だ。僕はそこのベッドではなく木製の地べたに仰向けになって転がっていたらしい。まぁ、フローリングだな。
ここは一点を覗いては普通の女の子の部屋だった。一点だけを抜かせばの話だが。一点だけおかしな点が目に入る。
なぜ部屋に花ではなく大根が飾られているのか………。花瓶に大根、壁に二本の大根をクロス、芳香剤代わりなのか大根おろしを小瓶に入れて置いてある。
「起きた!」
とりあえず、今は少女の名前を知らないし大根女と称しておこう。彼女は僕が起きると活気溢れるいい笑顔で仰向けで寝転がる僕の顔を覗いてきた。見た目は声とは別に、もっと加齢をして高校生とかそんな歳具合に見える。
美しい銀色の髪は飾りなど何一つなく凛と流れるように伸びていた。服装は見たことも無い服装だがイメージで言えば袖口は巫女服などに似ている、だからといって胴体部分はウェットスーツの様にぴっちりしている。ぴったりとした着衣は体のラインをくっきりと見せ付けて胸の貧相なことが露呈されている。一言で言うとエロス。
そんな心の隙間を作るような姿をしているが僕は決して屈しないぞ。
「絶対に僕が貧乳好きだなんて事を悟られないようにしなければ」
ここは何処だろうか。
「うみうみ、絶対に考えてることと言葉が逆になってるの」
「悟られた!」
くっ、不覚!
考えていることと逆になっていることを見抜かれたことに驚き僕は体を起こして再度自分の居場所を確認。
冷静に一呼吸入れてついさっきの空気を入れ替えるように発言をした。
「えっと、大根少女さん?でいいのかな?ここは何処だろうか」
「うみうみ、ここは私の部屋なの。んで貧乳な君が落ちてきたところでもあるの」
「貧乳?僕は男だ。胸なんてあってたまるか。あと、僕はここに落ちてきたのか?」
「男?」
不思議そうに僕のことをじろじろと見つめる大根少女。そもそも大根少女に対してなんの反論もないと自分が阿呆のようでは無いか。少しぐらい反応してくれ。
「お前、男を見たことないのか?」
「男って何?」
なんと生産性の乏しい発言だろうか。根本的に男子と言うものを知らないらしい。これは女子高育ちとかそういった方面の方ではなく男を見ないで環境で育ったとしかいいようが無かった。
「男ってのはあれだよ。うんとな………簡単に言えば胸が無い女だとでも思っとけ」
結構色々端折りました。
「おぉ!ならお胸の小さい人が好きな君は男が好きって事なの!」
「んなわけねぇだろ!」
やっぱり説明はきちんとするべきだったらしい。
「まぁどうでもいいけど、ここは何処なんだ?あ、別にお前の部屋だってことはもう聞いたからいいとして、僕が聞きたいのはこの建物全体のことと他諸々な。」
「うみ、男が好きな君が落ちてきた此処はアイちゃんのアパートなの。んで、この世界は『エンデツァイト』って呼ばれる世界で、日々アタシたち電子側とマナ側が争っている場所なの」
その場で僕は蹲って絶望した。
争っている。つまりそれは先ほど僕のスネに一発かましたアイオーンが言っていたものだろう。そして大根少女は電子側だと言った。それ即ち僕も電子側の人間だということだろうか。
目覚めて異様な場所(大根部屋)にいると思いきや、やはりさっきのは夢ではなかったという事実が僕を蹲るに至らせる。
「うみうみ」
妙な言葉を発しながら、同情かなんかを掛けているのか知らないが大根少女は蹲る僕を突いていた。
「まぁ、しょうがないか。これも、徹夜して部屋の掃除をした報いだと思えばなんのその………くっ」
しょうもない理由でありすぎて自分に嫌気がさして来る。だが、意味不明なまま死亡して輪廻転生の輪に入らなかっただけマシなのかもしれない。マシ、なだけだが。
「うみ、どうでもいいけど、朝ごはんを食べたいの。えっと」
「あぁ、僕は三木草 戦太郎だ」
「うみ、名前が長いし面倒だから源助でいいの」
「よくねえよ!!明らかに、どこも源助の要素が無かっただろう!」
「うみ、まぁアイちゃんもご飯待ってるだろうから早くご飯食べるの。ちなみに私の名前は功刀 紗蘭なの。よろしく」
「くそっ、まったく変な奴のところに落ちてきたもんだな」
結局そのまますーっと部屋のドアを開けて出て行ってしまった紗欄を追いかけるほか無く僕は何がなんだか訳の分からないまま、アイちゃんとやらに会うことになるらしい。
そもそも、戦うために送り込まれたであろうモノが飯を作らなきゃって今絶賛戦乱の最中じゃないのかよ、などツッコミどころを残したままもどかしさは消せずにいた戦太郎だった。
ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!ダイコンっ!
うっへへへ………すいません、もう大根おろしするのは疲れたんです。
アルバイトとは言え、三本の大根を摩り下ろす作業は非常に腕に負担がかかるんです。




