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 指輪が完成してから2週間後、私と由梨さんは、特急列車に乗って出かけていた。目的は太一郎さんのお墓参りに行くためだった。

「私、T県に行くの初めてです。」

窓の外の移り行く景色を見ながら私が言った。

「そうなんだ。...まぁ、何もないところだよ。すごくのどかなのが良いところかな。」

由梨さんは軽く笑っていた。


 指輪を受け取ったあと、由梨さんは私をお墓参りに誘ってくれた。

「実は、まだちゃんとお墓参り行けてないんだ。亡くなってすぐはとてもじゃないけど、行ける気持ちになれなくて...まだ、現実を受け止めきれなかったから。お姉ちゃんの家を出て、一人暮らしを始めてから、行かなきゃいけないって何度も思ったけど...やっぱり、辛くて、ダメだった。タイちゃんが死んだこと、完全には認められてなかったんだと思う。

でも、円香ちゃんと一緒なら行けそうな気がするの。一緒にお墓参りに行ってもらえないかな?

...お墓の前で、私また泣いちゃうかもしれないけど...。」

由梨さんが勇気を振り絞って言ってくれたのが分かった。断る理由はなかった。

「私でよければ、ご一緒させてください。太一郎さんに会えるの楽しみです。あと、この前も言いましたけど、いくらでも泣いてもらって大丈夫です。泣くと、心の中が少しずつ整理されていくと思うので...。あれだけ辛い経験したんだから、この先もいくらでも泣いてください。」

私がそう答えると、由梨さんは、早速、少し泣いていた。


 太一郎さんのお墓がある墓園は、特急列車の駅から鈍行列車で2駅進んだ駅から、バスで15分ほどのところにあった。

 太一郎さんのお墓は少し汚れがついていたので、二人できれいに掃除した。由梨さんはとても丁寧に墓石に水をかけ、雑巾で拭いていた。

お花を備えて、お線香に火をつけた。もう10月だと言うのに、まだ暑い日だったが、夕方も近くなり、涼しい風が吹いた。線香の香りが辺り一面に広がった。

 由梨さんと私はお互いに手を合わせた。私は目を閉じて、心の中で太一郎さんに話しかけた。


 初めまして。桜木円香と言います。今日は挨拶に伺いました。私は由梨さんのお友達です。友達になってから、まだ3ヶ月ちょっとなのが信じられないくらい濃い時間を由梨さんとは過ごせている気がします。

 初めて由梨さんを見たとき、その美しさに驚きましたが、それ以上に、悲しそうな姿が気になって仕方ありませんでした。だから、その後、たまたま由梨さんがナンパされて困っているのを見たとき、居ても立っても居られなくて、気づいたら声を掛けていました。

 そのおかげで、由梨さんと話せるようになりました。由梨さんは、私がやる遊びに付き合ってくれて、楽しんでくれました。とても嬉しかったです。勝手に大人しい人なのかなと思っていましたが、意外と毒舌で、話してみると面白くて...大好きな友達になりました。

 彼女に何があって、あんなに悲しそうにしていたのかは、彼女が話してくれたら聞こうという気持ちになりました。由梨さんに興味を持った入口は、その悲しげな姿からでしたけど、それが気にならないくらい、ただただ、大切な友達になっていました。

 そして、由梨さんは太一郎さんの話を教えてくれました。由梨さんは本当にあなたのことが大好きです。今も。

太一郎さんも由梨さんが大好きで、大切で、守りたくて仕方なかったんですよね。由梨さんを残して先に逝くのは、きっととても辛かったと思います。

 私はこれからも由梨さんの友達として、彼女の側で寄り添いたいと思います。由梨さんの話だと、私がおそらく初めての友達になると思うので、太一郎さんの代わりは無理でしょうが、少しは支えられるかなと思います。

 あと、由梨さん曰く、私はどうやら太一郎さんに似ているそうなので。ビジュアルとフィジカル面は全く違うと思いますが、どうやらメンタル面の方が。

 ...どうかこれからも、由梨さんを見守ってください。今後ともよろしくお願いします。


 心の中で言い終えて目を開けると、また涼しい風が吹いた。なんとなく太一郎さんが近くで見てくれている気がした。


 私が目を開けてからしばらくすると、由梨さんも目を開けた。その目には涙が浮かんでいた。

「...円香ちゃんありがとう。なんか、前に進めてる気がする。」

そう言って少し笑う由梨さんの左手薬指には、指輪が光っていた。

「良かったですね。私も太一郎さんにしっかり挨拶できました。...なんとなく、歓迎してもらえてる気がします。」

私がそう言うと、

「それはそうだよ。だって、私に初めてできた友達だもん。「友達ができて良かったね」って思ってくれてると思う。」

由梨さんがそう言って、私達は顔を見合わせて笑った。


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