闘技大会
闘技大会が始まる前、クロウとフィオは椅子に座り人の流れを見ていた。
かなりの人気がある大会の為大勢の人達が見に来ている。
まずは、余興の魔物討伐から始まり、トーナメントへと移る。
余興である魔物との戦いは、わざわざ魔物を捕まえて見世物にし殺すのはいかがなものかと一部、批判されていたりもする、伝統だ。
年々、そのせいかフェアに見せる為、かなり危険な魔物を用意する様になってきており、これの為だけに見に来る客も多い。
今回の目的は見物する事ではないので、この場にとどまる事にして本を読み時間を潰す。
「フィオ、行ってこい。
今日から闘技大会が終るまではどうしたって別行動だ」
クロウがそう言うとフィオは少し頬を膨らました。
「分かったよ、上でお前の活薬を見る事にする」
フィオが立ち上がろうと更にすると声がかけられた。
「やあ、やあ、お二方、余興は見ないのかな?
それがしが苦労して捕まえてきた魔物なのでござるが」
S級の最上。
「なるほど、それでこの街に来てたって訳か」
フィオがそう言いながら立ち上がる。
「悪いが、私は上に行くんでね」
「おっ、それがしもでござる」
それを聞きフィオは嫌そうな顔をしたが、まあいいかと諦め最上と共に上に上がっていった。
この施設は大きく分けて二つあり、一つは下にあるギルド。
二つは上に乗っかっている闘技場だ。
闘技場の選手は別の入り口から入るように設計されている。
クロウはその場で本を読み続け、時間と見るや外にある選手入り口へと足を進めた。
そこは塔となっておりその周りに闘技大会、参加者が多く集まっている。
トーナメント戦へまず出場するには最初の乱闘で残り8人になるまで戦わなくてはならない。
確実に残りそうな人物は見たところ一人…何者だろうか。
フードを被りマントを着ているが分かる。
ここの中では一番強い 鍛錬を積み重ねたであろう佇まい、雰囲気と言うべきだろうか、雑音が無く静かだ。
「あー!! ライエールさん!!」
後ろを振り向くとプワレが駆け寄って来ていた。
「闘技大会に出場されるんですか!?」
どうやら彼女がこの塔を担当しているらしい。
「そうだ」
「ライエールさんならきっと優勝できますよ!」
「そんな事より、ここには用があって来たんじゃ無いかな?」
その言葉にプワレは、はっとし慌てて塔の前に立った。
「えーっとこれより予選の大乱戦が行われます。
各自準備して、この塔の昇降機にお乗り下さい」
プワレがそう言い終わると塔の扉が開いた。
「ライエールさん、頑張ってくださいね」
クロウはそれに手を振り答えた。
プワレはそのクロウの行動に嬉しそうに手を振り返す。
塔の扉が閉まると少しして昇降機が動き始めた。
それはどんどん上に上がっていき、やがて闘技場の場所まで上がった。
扉が開くと天空橋がありその先に闘技場がある。
クロウはその闘技場の真ん中で観客席を見た。
騒がしい、どうやら最初のAブロックの大乱戦がかなり白熱したものだったらしい。
しかし今回はそうでも無さそうだ。
試合が始まるとクロウは立ったまま周りを見渡した。
戦ってくる者はいない、ふと騎士を見ると鞘から剣を抜かずに戦い相手をのしている。
「うおおおお!」
ようやくと言うべきか数人で襲って来た、おそらく裏で口裏を合わせた談合だろう。
クロウはヌラリくらりと剣を避け足を軽く引っ掛けて倒した。
空に指で模様を書く。
「ドルミーレ『眠れ』」
すると男達はピクリともしなくなった。
クロウは中央から離れ人々が戦っている中を堂々と歩く。
「おい!、そこの黒いやつ、端で数が少なくなるまで目立たず待つ気だぞ!!」
その声の方を見ると観客席でフィオが笑ってクロウを見ていた。
「たく、余計なことを」
クロウの背後で剣が振り下ろされる。
クロウは危なげもなくそれを、ひらりと間合いを取って躱し再び切りかかってきた所に手刀を首に放ち怯んだところで首を脇に抱え膝を腹に入れた。
「ぐはっ」
離すと男はひとたまりもなく、ぐったりと倒れ込んだ。
もう一人、走り寄って来た敵は次の瞬間クロウを見失った。
クロウは男に近づきざましゃがみ、回し蹴りを足に放つ。
足を取られ倒れると再び眠りのルーン魔術が放たれ男は先程の男達同様眠った。
「例え全員でかかってこようと負ける気はしないな…」
クロウは壁に寄りかかって時が過ぎるのを待った。
時が過ぎるに連れ人は減っていく。
「ディフェンド『守り』」
クロウがそう言い空中に書き終わると炎の魔法が飛んできた。
しかしその魔法は光の膜の様な物に阻害され火の粉となり消えた。
「一般魔法か…。
エウナフィアナ『炎よ』」
クロウが文字を書き終えると空中に出来た赤い文字から飛んできた大きさと同じ炎が飛び出した。
それは真っ直ぐに魔法を撃ってきた相手に直撃する。
炎は一瞬その者の体を包んで燃え消えた。
しかしそれでも男は崩れ落ち、気を失った。
弱めで放った魔法だが…。
「やはり、強い奴はあいつだけか」
クロウが見る先には入り口で見たフードの人物がいた。
…
闘技大会は3日行われる
一日目は大乱戦でトーナメントを決める。
二日目で2回戦いさらに数を絞る。
三日目でようやく準決勝と決勝だ。
クロウは何事もなく予選を勝ち抜きトーナメント戦の枠に入った。
トーナメント戦に出るものは部屋が与えられる。
クロウはその日すぐに自分の部屋に入り本棚を読み漁った。
…
「あの方が今回のターゲットです」
セシルがそう言い、メンバーを見た。
一行は全員黒ずくめ姿で夜闇に紛れている。
「ほ…本当にやるんですね」
イリヤは仕事にまだ不慣れな為、緊張しているようだった。
魔族達は頭に全員が2本の禍々しい角をはやしている。
夜になると魔族達はそれぞれ眠りに付きそれぞれ眠った。
しかし、見張りの兵と数人焚き火を囲んだ奴らは起きている。
「ルアは見張りやってください。
ルナ、イリヤ、私はあそこにいる人達を。
そしてクロウはターゲットの始末をお願いします」
セシルはそう支持を出し作戦は開始された。
もし、この作戦を失敗すれば自分達は多勢に無勢の状況に追い込まれる。
そして早朝の掃討作戦に影響が出るだろう。
リーダー各の者を殺さねば再び魔族を集められ同じ事が起こる。
そしてこれを放置すれば街に住む人々…一般の住人に多大な被害が出てそれは凄惨な事件となるだろう。
ミスは許されない。
それぞれに緊張が走る。
しかしイリヤ以外はそんな事を感じてないかのように正確に身を隠しそれぞれの役割を努める。
イリヤは手と足が震えてカタカタと音を立てており今でも兵士がこの音に気づいて止めるのでは無いかとセシルは懸念した。
イリヤは使い物にならないと判断したセシルは彼女をここでみはらせ待機させた。
セシルは剣を、ルナは鎌を持ち同時に襲いかかった。
数人、声も出せぬまま絶命し一人は最後に仲間に呼びかけようとしたところでルナの鎌に命を刈り取られた。
それを確認すると、クロウは静かに音も立てず夜闇に紛れてテントに近づき侵入する。
ルアもまた鎌を構え男の背後に忍びより手で口を抑えると鎌で首をかき斬った。
息をしなくなったのを確認しルアは静かに男を寝かせ、他の監視を探し行動する。
クロウもまた同様に静かに動いて剣を抜くと寝息を立てているターゲットに向かって声が漏れぬよう顔面にクッションを押し付けると刺し殺した。




