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SLUMDOG  作者: 朝日龍弥
六章 初陣
49/425

日は昇る

 絶え間無く鳴り響いていた銃声が止み、地上部隊は動きを止めた。


「終わった……のか?」


 急に訪れた静寂に不気味さを感じ、嫌悪感を抱いていた銃撃音が聞きたいようにも思えた。


「各部隊、報告しろ! ダリル! ワルドナー! 早く来い!」


 長時間の移動と戦いにストレスを感じ、呆けていた少年兵達は、ティムの一喝で現実に引き戻される。


「は、はい! 報告します! 基地の南西から南東まで、敵影見られません!」

「第二部隊小隊長殿がこちらにいらしてます!」


 部下の報告を聞き、ティムは北部を担当したエリックと落ち合った。


「ティム、こっちは片付いた。銃声が聞こえなかったから、そっちも粗方片付いたと思ってな」

「ああ。こっちも終わったようだ。あとは――」

「中だな」


 エリックがそう言うと、ティムはショウに連絡を入れる。


「地上部隊から第三部隊へ。地上の殲滅完了。中はどうなっている?」


 まもなく、ショウが応答する。


『こちらイーグル〇一。基地内部の殲滅も完了した。間も無く基地の入り口のロックが解除されるはずだ』

「こちらエリック。状況は理解した。この後は?」

『ティムとエリックは、各部隊の状況確認終了後、モニター室に集合してくれ』

「了解した」


 作戦の成功を確認し、二人は胸をなでおろした。


「じゃあまた後で――」

『ティム、エリック』

「ん? なんだ?」

『危険な陽動作戦を買って出てくれてありがとう。おかげでスムーズに事が進んだ』


 ショウから礼を言われ、不意打ちを食らった二人は目を見合わせた。


「やめろ気持ち悪い! 俺は基地内に入って狭い場所で戦うより、外の方が万一の事があっても逃げやすいと思ったからだ。勘違いするな!」

「そ、そうだぞ!? ちょ、調子狂うから、そういうのやめろ! 当然のことをしただけだからな!」

『ははは。悪かった。でも、俺はお前らと、もっとうまくやっていけると思ってる。じゃあまた後で。out』


 ショウとの通信を切り、二人はなんとも言えない表情のまま、固まっていた。


「変なやつだ」


 エリックはポツリと言葉をこぼし、自分の部隊の方へと戻っていった。

 ティムは心中で同意し、周囲を見回した。


「本当に……終わったんだな」


 緊張の糸が切れてしまいそうになったところを、辛うじて踏みとどまり、部隊の状況把握に努める。


「ダリル、部隊の被害を確認、ワルドナーは野戦病院の設置を急いでくれ。基地内の医務室が使えるようになっても、入りきらない可能性があるからな」

「「サー・イエス・サー」」


 二人の部下が慌しく動き出したのを見送ると同時に、横から眩い光が差し込んだ。左手で顔を覆いながら、朝日が昇ったのを確認する。


「朝……か」


 ――俺は俺にできることをする。いつまでもマクレイアに後れを取るわけにはいかない。あいつと、あいつらと肩を並べられるようになるんだ!


 暖かく、心地良い光を受け止め、生きている実感を改めて感じる。そしてそれは、ティムの覚悟をより一層強めた。




    *     *     *




 砦に陽の光が差し込んできたのを確認し、ペトロフは一人、司令室で静かな朝を迎えた。デンバー基地奪還作戦が始まってからというもの、ペトロフは一睡もせず、度々入ってくる報告を聞きながら、吉報を待ち続けていた。


 師団長のハミルトンとクルードは、作戦が終了するのは早くても明け方だろうと言って寝に入ってしまっている。そのおかげでバーグとニコラスが寝床で門番のように立たされているわけなのだが、ペトロフは相変わらずの緊張感の無さに溜息をついた。仮に寝ろと言われても状況が気になり、眠れるわけがない。そう思いながらペトロフはまた一つ大きな溜息をこぼした。


 席を立ち、朝日を眺めていると、バタバタと騒がしい足音が聞こえて来る。音の先を見やると、勢い余って司令室を通り過ぎそうになっている第四部隊小隊長のジャックの姿を捉える。


「で、伝令です! 二二三〇より開始されたデンバー基地奪還作戦が成功しました!」

「そうか! やってくれたか!」


 待ちに待った吉報に、ペトロフは大いに喜んだが、彼は作戦の成功よりも少年兵部隊の損害の方が気になっていた。


「ジャック上等兵。被害は?」

「は、はい。まだ明確にはわかりませんが、最小限に抑えられたとのことです」

「そうか……」

「あ、あの」

「ん? なんだい?」


 司令室を見渡し、顔をしかめるジャックの様子から、何を尋ねられるのか、ペトロフは大方予想が付いていた。


「ハミルトン大佐とクルード中将は……あと、他の教官は……」

「大佐殿と中将閣下は仮眠中だよ。私以外の教官達はその護衛」

「それ、作戦開始時と同じ返答ですね」


 眉間に深く皺を寄せた表情と、声からは憤りを感じる。ペトロフがいくら仮眠中と言っても、砦の一角で酒を飲み、気楽に話し込んでいた様子は哨戒任務に当たっている第四部隊には筒抜けだった。怪我をしている第四部隊の少年兵も師団の兵の代わりに駆り出されていたということもあり、ジャックは憤慨せずにいられなかった。


 今までの態度からはあまり見られなかった、部下思いな一面を見せるジャックに、ペトロフは思わず顔を綻ばせた。


「ジャック上等兵、報告ご苦労様。君も休みなさい」

「は? え? しかし……」

「君も寝ずに哨戒任務に当たってくれていたろう? 初めての戦場で疲れているはずだ。部下達だけじゃなく、自分も身体を休めなさい。私に報告する任務はもう済んだからね」

「確かに報告の任務は終わりましたが、哨戒任務は終わってませんので。それに……。いえ、なんでもありません。失礼しました」


 司令室から出て行こうとしているジャックにペトロフはそっと声をかける。


「ああ、最後に一ついいかな?」

「……なんですか?」


 ジャックは不満そうに、ペトロフを見やる。


「他の少年兵部隊が基地奪還に当たっているというのに、何故自分はここに居るんだ。と、思っていないかい? 哨戒任務と言っても、ただ立って周りを見張るだけじゃないか、と」

「それは!」

「勘違いしてはいけないよ。君にはここを守るといる大事な任務が与えられている。ここに敵が攻めてこないとは限らないからね。確かに君は他の部隊より被害が出てしまって、留守番する事になったのは事実だが」


 ジャックは悔しそうに顔をしかめる。


「悔しいと思うのはいい。でも傷ついた部下達を戦場に出すのは君も嫌だろう? 哨戒任務で手負いの部下が駆り出されていることに憤慨するほど、君は部下思いだからね」


 いつもの威勢の良い様子はなく、拳を握りしめ、ジャックはただただ俯いていた。


「多く被害を出してしまったことを悲観しすぎてはいけないよ。自分の力だけではどうしようもない時というのは誰にだって訪れることだからね」


 優しい声色で語りかけるペトロフの言葉に、ジャックは不満げに舌打ちをした。


「んな事はわかってんだ。仲間が死んだことを悲しんだって、あいつらは帰ってこねぇ。スラムにいる時だってそうだった。そんな事は言われなくてもわかってんだ」


 ペトロフは何も言わずジャックの言葉に耳を傾ける。


「……気にくわねぇ」


 俯いているジャックから消え入りそうな声が聞こえてくる。


「戦場でお気楽気分の無能どもも、あんたにここに残れと言われたことも、あんたのその達観しているような態度も、何もかも気にくわねぇ。そして何より自分が何もできねぇガキだって思い知らされることが!」


 ジャックは奥歯を噛み締めた。


「何もできないガキだっていいじゃない」

「は?」


 今の自分の発言の返しだとは思えないほど陽気な返答に、ジャックは拍子抜けした。そしてペトロフの飄々とした態度に苛立ちすら覚えた。


「あんた――」

「今は。だよ」

「は?」


 ピシャリと遮られた言葉に、ジャックは目を丸くした。


「今は何もできないガキ。何もできないは言い過ぎだと思うけど、確かに君は模擬戦の成績ではマクレイア上等兵……今は伍長か。彼に次いで良かったけど、実戦ではティム上等兵やエリック上等兵にも劣っていた」


 わかりきっていることを、改めて現実として叩きつけられ、ジャックは胸が締め付けられるような感覚を覚える。だが、なんとか喉まで出かかった物を必死で堪え、ペトロフの話を聞くに徹した。


「自分の身の程を知るのはいいことだ。客観的に判断する事はとても重要な事だと言える。今何もできないという事は、これからいくらでも成長できるという事だよ。出来ない事はこれから出来るようにするといい。君はまだ子供だし、何より――」


 ペトロフはジャックの肩に手を置き、優しく彼の目を見据える。


「生きているんだからね」


 ペトロフの表情に毒気を抜かれたジャックは、今まで重たく感じていた肩が少し軽くなった気がした。それがまた悔しくて、ジャックは顔をしかめた。


「失礼します!」


 ジャックは大袈裟に声をあげ、すぐさま司令室を出て行った。


 未だ少年である背中を見送り、ペトロフは軽く頭を掻いた。


「やれやれ、今時の子供は難しいなぁ」


 ペトロフは大きく溜息を吐いて、司令室のイスに腰掛けた。一息つこうと、両手のグローブを外し、首から提げているロケットを取り出した。


 中の写真には一人の女性と少年が写っていた。


「子育てとはこんなに大変だったかな」


 ペトロフはそっと写真を撫でる。


 横から照りつける朝日で、ペトロフの薬指にはめてある指輪が静かに光った。




    *     *     *




 デンバー基地を奪還し、第一師団本部が到着するまでに数日が経った。


 A派が先にサイラス率いる後方部隊を前線に出したことで、デンバー基地の兵力の底上げに成功。それにより、デンバー基地を拠点にしていたS派の兵は、ミシシッピ方面を担当する第二師団と、サイラス率いる後方部隊を相手取ることになった。挟撃を受けたS派の兵は一時撤退し、A派はなんとかS派の勢いを押し返し始めたのである。


 数日経った今、北緯四十度戦線はデンバー基地が奪還されたことにより、なんとか守りきることが可能と言われるまでになった。実際に、同じ北緯四十度戦線であるミシシッピ戦線は、敵から横腹を突かれることも、人員を割く必要もなくなった。


 前方の敵のみに集中できたことで、攻めに転じることが可能になったミシシッピ戦線では、両者の睨み合いが続き、膠着状態へと足を踏み入れることとなった。


「サイラス中尉の部隊からの報告ですと、今の所、敵に動きはないようです」


 デンバー基地の守護をする少年兵部隊長のショウが、遅れて到着したハミルトンへと現在状況を報告する。


 司令室の椅子にどっしりと腰を埋めるハミルトンの隣にはペトロフの姿と、パーシーの姿もある。


「そうかそうか! 大儀であった! 君達ならやれると信じていたよ! 下水を通るなど、汚いスラムの犬ならではの作戦! 見事だったぞ!」

「貴方様のような高貴なお方には無い考えでしょうね」

「ははは! 全くだな!」


 ショウは皮肉を交えるが、そんなことを気付かないハミルトンは、コロラド戦線の大勝利に機嫌は上々。


 それとは裏腹に、ショウやティム、エリックは、見張り台にいるマルクスに今すぐこの馬鹿の頭を撃ち抜けと言いたい気分だった。


「よしよし! 気に入ったぞ! マクレイア伍長! 貴様には軍曹の階級を確約してやる!」

「ありがたく」


 ハミルトンの言葉に、ショウよりもパーシーの方が反応していた。ショウはパーシーから恨みのこもった熱い視線を受けながらも、顔色一つ変えずに答えた。


「他の小隊長のー……貴様ら、名はなんだったか?」


 そう言って、ハミルトンはエリックに視線を落とす。


 エリックは直ぐに敬礼し、ティムもそれに続く。


「は。小官は少年兵第二部隊小隊長、エリック・サウザー上等兵であります」

「同じく少年兵第一部隊小隊長、……ティム・ノーマン上等兵であります」

「そうか。では貴様らには伍長の階級を確約しようではないか」

「謹んで拝命致します」

「うむ。後のことはペトロフに聞け。下がって良い」

「「「サー・イエス・サー」」」


 ショウ達は敬礼をして、司令室から出て行く。


「待て。そこの、ティムとか言ったか?」


 ハミルトンに呼びとめられたティムは、動揺を悟られぬよう、間をおいて振り向いた。


「なんでしょうか?」


 いつも以上に落ち着き払った声に、ティム自身、少し驚いていた。


「貴様……珍しい瞳の色をしているな」


 ティムの虹彩の色は金色。グレンヴィル家の血筋に高確率で出る金眼。グレンヴィル家の一人息子の顔は覚えていなくとも、長年仕えていた貴族の特徴を、ハミルトンは覚えていた。


「そうでもないです。私は、ただの、ノーマン出身の、汚いスラムの犬ですから」

「……そうだったか。すまなかったな。私の知り合いに似ていたものでな」


 切って捨てた臣下の事を、覚えていたのかと、ティムに流れるグレンヴィル家の血が沸き立つのを感じた。


 その感情の半分は喜びだった。


「貴様のような堂々とした物言いができるものが、無様で弱々しい家系の者の訳が無いな」


 最後の発言で、ティムの中の喜びと忠誠心は消え去り、どうしようもない怒りに支配された。


 ティムは真っ直ぐにハミルトンを見据え、ゆっくりとホルスターへと手を伸ばした。が、ティムのその行為はショウに阻まれた。


「お話しのところ申し訳ありません。ティム上等兵は体調が優れないようなので」


 ショウがハミルトンからティムへ視線をずらすと、ティムは額から大量の汗をかき、息が上がっていた。


「大佐殿、話は終わりましたかな? 私は彼らに次の指示を出さねばなりません。それに、私は彼を今直ぐ医務室に運ばせたいのですが」


 直ぐさまペトロフの助け舟がでると、ハミルトンも納得したかのような顔をする。


「ああ、そうだな。悪かった。もう下がって良い」

「はっ」


 ショウはティムを連れて司令室を後にする。


「止める必要があったか?」


 司令室の外で一部始終を見ていたエリックが、ショウに呆れたように話しかける。


「なぜ止める必要がないと思った?」


 ショウは鋭い眼光でエリックを睨む。


「そんな目で見るなよ。俺にはティムがあの大佐を撃つ理由はわからないが、お前が止めるとわかってたし、俺がでる必要ないと思っただけだ。それにもし、ティムがあのお高くとまってる貴族の頭を撃ち抜いてくれるなら、爽快な気分になるだろうと思ってな」

「そうかよ」

「マクレイア……もう離しても大丈夫だ」


 力んでいたティムの腕から力が抜るのを確認し、ショウは手を離す。ティムは未だに息が上がり、身体が小刻みに震えていた。


「本当に大丈夫か?」

「大丈夫……な訳ない。今からでもぶち殺してやりたい」

「落ち着け」

「落ち着けだと? 俺は――」

「今はその時じゃない」

「おいおい」


 物騒な発言に、エリックは呆れたように言葉をこぼした。


 ショウは構わず続ける。


「何も殺すなとは言ってない。俺にその気は無いしな。ティム、お前はそれでいいのか?」

「それでってなんだよ」

「殺すだけでいいのかって聞いてんだ」


 ショウの発言に、ティムとエリックは固まった。


「え……あ……」

「お前……」

「なんだ?」


 ショウは二人の固まってる様子を見ると、溜息を吐いた。


「少しは頭冷えたか?」

「え?」


 いつの間にかティムの震えは止まっていた。


「ティム、さっきのお前は冷静さに欠けていた。わかるな? 今、奴を殺したって、お前にはなんのメリットもない」

「……ああ。ああ、分かってる」

「ならいい」


 ショウはそう言うと、さっさとその場を後にした。


 エリックは何がなんだかわからない様子で首を振り、ティムの肩を軽く叩いてショウの後を追う。


「ちょっと待て、マクレイア」

「なんだ?」


 エリックの呼びかけに、ショウは足を止める。


「なんだかよくわからんが、お前さっきのどう言う意味だ?」

「さっきのって、何がだ?」

「殺すだけでいいのかって」

「どう言う意味って、そのままの意味だ。まぁ、そうさせるつもりはないが。ああいった方が頭も冷えるだろう」

「ならいいが。流石に肝が冷えたぞ」


 訝しげに見るエリックに、ショウはふっと息を吐く。


「もうすぐペトロフ准尉が来る。モニター室に行くぞ」

「ああ」


 エリックは呆然とショウの背中を見て、目を細めた。




    *     *     *




「さて、紳士淑女諸君。君達のこれからを話そうじゃないか」

「あの、ペトロフ准尉。ここには淑女はいませんよ?」


 モニター室に集まった各小隊長とその副官達の前で大見得切って話し始めたペトロフは、なぜそんな間違いをしたのか、不思議そうに首をかしげるコナーに出鼻を挫かれるような形となった。


「あー、冗談はさておき。今北緯四十度線はどこも膠着状態に陥っている。だが、現在北緯四十度線を越えることができる地域ができた。それが今いるココの地域だ」


 ペトロフはボードに貼り付けてある地図を指差した。


「今、S派の部隊全体が、サイラス中尉の部隊により撤退を余儀なくされている。なるべく深追いはしたくはないが、その点は問題ない。彼に任せておけば、退き時というのは間違えないだろうからね。そこで、だ」


 ペトロフは向き直り、続ける。


「攻め込める場所ができたところで、ミシシッピ戦線に駆り出される予定だった新規の部隊が、こちらに投入されることとなった」

「その新規の部隊とは?」


 ヨダの問いに、ペトロフは頷く。


「いい質問だ。この新規編成された部隊は今現在我々A派の兵の中で選ばれた、精鋭部隊だ。人数は少ないが、少数精鋭という言葉通り、期待はできる。私の教え子もいる、実力は保証するよ」

「准尉殿。我々はどう動けば?」


 エリックの問いを受け、ペトロフは地図を指し示す。


「しばらくはこのプレーリー大平原周辺のキャンプで哨戒任務にあたってもらう。精鋭部隊が到着し、我々の後続の部隊も到着したら、君達は一旦我らが宿舎に戻れることになった」

「戻ってどうすんの?」


 胡座(あぐら)をかき、つまらなそうに話を聞いていたソルクスが手を上げる。


「ソルクス、ちゃんと話聞いてたんだな」


 目を丸くするティムに、ソルクスは青筋を浮かべる。


「てめぇ、ティム。馬鹿にしてんだろ?」

「いや、そういうわけじゃ……」

「おやおや。いつからお二人はそんなに仲良くなったんですかねぇ? ハイ」


 二人のやり取りに、ヨダは興味深げに見やる。


「はいはい。私語はそこまで。君達は大きな戦いを、大きな勝利で切り抜けた。充分役目は果たしたよ。今君達には休息が必要だ。もちろん後方支援という仕事はあるし、次の命令まで待機するという事もあるがね」


 ペトロフは静かに微笑んだ。


「さぁ、後ちょっとだ。これから第四部隊のみんなとも合流して、第一師団と連携をとる予定だ。シフトは後ほどね」

「今後はわかりました。今は何を?」


 指示を仰ぐショウに、ペトロフは優しく微笑みかける。


「マクレイア伍長。今は、休みなさい。さっきも言った通り、君達は大きな戦いをした。勝利を勝ち取ったが、代償もあったろう? だから君達にはこれからだけでなく、今、必要なんだ。休息がね」


 全員が顔を曇らせる。被害を最小限に抑えたと言っても、被害が出たことに変わりはないのだ。


「寝床はある。それぞれ割り振っておいたから、各自確認しておいてくれ。これが終わったら帰ろう。みんなで」


 ペトロフの言葉に、ショウは目を伏せる。


「みんなで……か……」


 ショウは自分の首に提げてあるドッグタグを静かに撫でた。


どうも、朝日龍弥です。

彼らの初陣が終わりました。

それぞれの感情が入り乱れ、忙しなく過ぎ去る戦場。

彼らは仲間の死を胸に、これからも戦場を駆けていきます。

次回から七章に入ります。かなり長いです、ハイ。

よろしくお願いします。


次回更新は、2/27(水)となります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ペトロフさん、やはり凄く良いお父さんをしてらっしゃる……………………! そして、休息。連戦はきついですもんね! 束の間であったとしても、故人を忍びながらでも、皆さんには羽を伸ばしてたっぷ…
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