軍規違反
砦内の司令室に向かうと、そこには既に各小隊長が集まっていた。
「悪い、少し遅れたか」
「お待ちしてましたよ、ハイ。お? コナーも一緒ですか」
先に着いていたヨダが、ショウとコナーを快く迎え入れる。
「チッ。自分で呼んどいて遅れるなよな」
ジャックは出会い頭に悪態を吐くのが既に挨拶と化しているようだが、ショウは気にもとめない。ショウの後ろにいるコナーは少し肩をすくめていた。
「おい、なんでそいつがここにいるんだ? 副官じゃねぇーだろ」
コナーの少し怯えた様子を見たジャックは、鋭い目つきで睨む。コナーは目をそらすが、一度目を閉じ、再びジャックと目を合わせる。その目は力強くあった。
思ったのと違う反応に、ジャックはコナーの視線から驚いたように目をそらした。
「コナーの判断力と頭脳を買って連れて来た。特に支障がないと思うが?」
「別に構わん」
「まぁ、今はマクレイアが俺達の指揮をとっているから、俺達がどうこう言える立場じゃない……よな?」
エリックとティムがすんなりとショウの意見を呑んだのをみて、ジャックは驚きのあまり目を見開き、声を荒げる。
「おいおいおい! お前らいつからコイツの部下になったんだよ!!」
「え? いや、でも……」
ティムは肩をすくめ、エリックの方を見る。
「部下になった覚えはない。だが、まとめ役はマクレイアだ。俺は別に人数が一人増えたところで何も問題ないと思うが? ここで私情を挟むのは、小隊長としての適性を問われる事に――」
「さっきから聞いてりゃ何だよ! 澄ました顔しやがって――」
ジャックはエリックの胸倉を掴み、上から怒鳴り散らす。
「前から思っていたんだが、そうやってすぐ暴力に頼ろうとするところをとったって、どうしてお前が頭を張っているのか疑問でしょうがない」
「てめぇ! 言わせておけば!」
「お、おい! 喧嘩してる場合じゃ――」
エリックに噛みついていたジャックは、仲裁に入ったティムへ標的を変える。
「お前もお前だ! ティム! 誰彼構わずヘコヘコしやがって! 俺が小隊長として適性がねぇなら、俺よりも成績が悪いティムはどうなんだよ! え? エリックさんよぉ!」
「うっ……」
ティムは言い返せず、俯いてしまう。エリックは呆れたように溜息をこぼす。
「図星を突かれたら、今度は人を蔑むことしかできないのか……」
「てめぇ!」
「お前らいい加減に――」
「いい加減にしてください!!」
ショウが声を出すより先に、隣にいたコナーから大きな声が発せられ、その場にいた全員が驚いて固まった。
「あなた達は、仮にも各部隊の代表ですよ!? なのに何をしているんですか!? 誰がどうとか関係ないです! 今は全員が一致団結するときじゃないんですか!?」
「お、おう……」
「あ、ああ。すまなかった」
コナーの声に完全に虚をつかれた二人は、さっきまでの威勢はなくなり、ジャックはエリックから手を離す。
「いやー、コナーもあんな声出るんですねぇ、ハイ」
「ヨダさん。茶化さないでください」
「おっと、これは失礼しました、ハイ」
「さ、さて、コナー二等兵のお陰で場も整ったことだし、各小隊の被害の確認と、情報交換をする……でいいんだよな?」
ティムがぎこちなく話を始める。
「ああ、始めようか」
ショウはコナーを見て微笑んだ。
「ショウさん?」
「いや、何でもない。さて、まず第一部隊から始めてくれ」
ショウの言葉通り、ティムが発言し始める。
「第一部隊はどれも軽傷ですんで死者はなし。左翼端から攻めたから砲撃の被害にあったやつはいない」
「死者なし?」
死者なしという報告に、ショウは舌を巻いた。
「あ、ああ。ほんとに運がよかった」
「次いいか?」
エリックが急かし、報告に移る。
「第二部隊は半数が負傷。死者は部隊の三分の一程度といったところか。こちらも砲撃の被害にあったものはいない」
「第三部隊も同じだ。負傷者は多かったが、殆どが軽傷だ。進軍に支障はない」
エリックに続き、ショウが報告を終えると、ジャックは目を見張り、顔を背けた。
「第四部隊、残ってるやつらの殆どが負傷兵だ。死者は……部隊の半数以上だ」
ジャックの報告を聞き、エリックは鼻で笑った。
「成績ねぇ?」
「てめぇ!」
「やめろ、ジャック。エリックも喧嘩を売るな」
「すまない。続けてくれ」
ショウの言葉に、エリックは素直に謝罪する。
ジャックは悔しそうに舌打ちをし、拳を握る手に力が込められた。
「あ、あの! 重傷者の方々についてなんですが! 先程治療に当たったところ、どの方も命に別状はありませんでした。僕たちの到着が、間に合わなかった方も……いましたが……」
俯くコナーに、エリックとティムが声をかける。
「いや、間に合った奴も多い。俺の部下も助かった。衛生兵部隊の手際の良さはお前のおかげだろう? 感謝する」
「あ、俺の部隊の衛生兵も、お前の指導を受けたらしいな。手際が良くなったと思う」
「あ、ありがとうございます!」
手放しで褒める二人に少し戸惑いながらも、コナーは役に立てていると嬉しく思った。
「あ、私から少しいいですかねぇ、ハイ」
「何かあったか?」
手を上げるヨダに、ショウは報告を求める。
「隊長殿に言われて、上空からパーシー少尉の部隊を観察したところ、作戦通り狙撃兵を配置しようとしていました」
「で、その狙撃兵はどうした」
不機嫌なジャックに、ヨダは嫌そうに首を横に振る。
「焦らないでくださいよ。全くせっかちな人ですねぇ、ハイ」
「お前――」
「ヨダ」
ヨダはいつものように軽口を叩いてジャックをからかおうとするが、ショウに一蹴される。
「あー、すみません。まぁ、皆さんのご想像通り敵兵が待ち伏せていました。狙撃兵の末路は御察しの通りです。パーシー少尉の部下の死亡を確認後、そこにも多量の爆弾を叩き込んでおきましたので、敵兵に関してはご安心を」
「砦内を狙撃される心配はないわけだな」
「保証しましょう」
ヨダの報告に、ショウは頷く。
「で、肝心の少尉殿はどうしたんだ?」
エリックが少々面倒臭そうに発言する。
「砦を制圧した頃には既に撤退していた。後方の方が砲撃の被害にあったろうしな」
「はっ! 怖気付いて逃げたってか? 大人の癖にだらしねぇな」
ジャックは偉そうにしていたパーシーの顔を思い出し、悪態をつく。
「あ、中隊の被害ですが、撤退の最中にやられた人が殆どで、重傷者が多数出ています。ですが、その殆どが……」
「治療をする必要もなかったか」
「で、でも、それってマズくないか?」
コナーの報告にエリックが冷たく言い放つと、ティムは少し焦ったような顔をしだす。
「何がだ?」
「何をビビってんだ? お前はよ?」
「だって! 俺達より被害が多いとなると……」
ティムはおどおどと目を泳がせるが、エリックとジャックは真逆の様子だった。
「ああ、そんな事か」
「そんな事って!」
「撤退中に被害が出たって事は、背中を撃たれたんだろ? 俺達が気にすることは無い。そうだろう? マクレイア」
エリックの言葉を受けて、ショウは静かに笑った。
「ああ、責任は俺が取る約束だし、何も問題ない」
「問題ないって――」
「隊長ー!!」
司令室の外からロニーとマルクスが慌ただしく走って来た。
「どうした?」
「パーシー少尉が到着しました! 真っ直ぐこっちに向かってますよ!」
「なんかヤベーですよ! 滅茶滅茶怒ってる!」
二人の報告に、ショウは大きく溜息をついた。
「やっと来たか。ロニーとマルクスは退がれ」
「あ、は、はい!」「失礼しました!」
ロニーとマルクスは慌ただしく戻って行った。
「ど、どうする?」
「どうするも何も、取り敢えず整列しておくか」
「そうだな」
「チッ、面倒クセェ」
部隊ごとに横一列に整列すると、ショウはその列の前に立ち、パーシーの到着を待つ。足取り荒い様子が、見ていなくてもわかるくらいの足音を聞き、司令室で待つ少年達の間に緊張が走る。
パーシーとその部下が司令室に入って来たのを見て、ショウは顔色を変えずに対応する。
「パーシー少尉殿、ご到着お待ちして――」
ショウが言葉を言い終わる前に、パーシー少尉から重い一撃を頰に食らう。
ショウは倒れずに堪える。
「ショウさ――」
その様子を見て駆け寄ろうとしたコナーを、ヨダが制止する。
「このガキども!! お前ら自分の立場ってのわかってるのか!?」
「中隊の皆様方に多大な被害が出た事に関しては、心中お察し致します」
「何ぃ?」
「後方で敵の砲撃の注意を引いてくださったおかげで、当初の作戦とは少し違う形になりましたが、砦の制圧がスムーズに行きました。我々への配慮、心から感謝しま――」
ショウは裏拳で殴られ、口元から血が流れる。
「黙れ! スラムの犬っころが! 俺たちをおちょくるのもいい加減にしろ! ん? なんだその目は?」
鋭い目つきで自分を睨んでいる少年達を、パーシーは顔を真っ赤にして睨み返す。
「お前らもだぞ! 何故命令に背いて陣形を崩した! おい、そこのお前! 答えろ!」
つまらなそうな顔をしていたエリックを指差した。
「我々はマクレイア上等兵の指示に従いました。彼は我々と同じ階級ではありますが、マクレイア上等兵は我々のまとめ役。いわゆる上官のようなものですので」
エリックは淡々と発言する。
「では責任は全て、マクレイア上等兵が持つ事になっていると?」
パーシーはビクついているティムの方へと視線を向ける。
「そ、そのように言われています!」
「ほう? 貴様の仲間は随分と冷たいなぁ? 全部お前に責任を押し付ける気だぞぉ? マクレイア上等兵」
「彼らの言っていることは間違っていません。全て小官の指示です」
顔色を変えないショウに、パーシーは面白くない顔をする。
「責任を全て自分が負うと? 命令違反は立派な軍規違反だぞ? ちゃんと教官に習わなかったのか?」
「わかっています」
「そうか、そうか。わかってやっているのか。だがな! お前一人では足りん! 連帯責任だよな?」
パーシーはティムの胸倉を掴むと拳を振りかぶる。ティムはぎゅっと目を瞑り、顔を背けた。
「少尉殿」
ショウの殺気のこもった鋭い視線を感じ、パーシーは殴ろうとした拳を止め、振り向く。
「作戦が成功したにもかかわらず、あなたは先程から何に腹を立てているのです?」
「はぁ? 貴様何を言い――」
「腹を立てているのは自分の部下が死んだからですか? それとも自分の無能さにですか?」
「貴様!」
パーシーは掴んでいたティムの胸倉から手を離し、顔を真っ赤にしてショウの胸倉を掴みあげる。
「まさか、少尉殿は後方が安全な場所だとでも思っていましたか? 部隊を動かさず、的に変えてしまったあなたを、無能でなければ他に何と――」
ショウはパーシーから繰り出された膝蹴りを鳩尾にもろに食らう。
「黙れ黙れ黙れ!!」
せき込むショウの胸倉を掴み、無理やり立たせる。
「俺はっ……間違って……ない。そもそもっ……命令違反を犯していない」
「何だとぉ?」
パーシーの口元が小さく痙攣する。
「あんたは俺達に前へ進めと……攻めろと言った。砲撃を避けるなとは……言ってない」
「はあぁ?? 何を!? 貴様、陣形を崩した事はどう説明するつもりだ!? 俺は貴様らに陣形を崩すなと言っただろうが!」
怒鳴りつけるパーシーに対し、ショウは冷静に息を整える。
「戦場では、臨機応変に対応するのが当然の義務。現場の判断に委ねられる事は至極当然の事。今回のも、命令違反を犯している事にはならないはずだ」
「貴様! その様な戯言を――」
「俺達が仮に命令違反を犯していたとして、じゃあ、あんたはどうなんだ?」
冷たい目でパーシーを見据える。
「敵前逃亡は、立派な軍規違反じゃないのか?」
「な、何を――」
「コナー、敵前逃亡の軍規違反は?」
コナーは突然の指名に驚き、一瞬頭が真っ白になるが、すぐに冷静さを取り戻す。
「は、はい! 敵前逃亡は重大な軍規違反で、その行為は重刑になる事があります! 戦闘を放棄して逃げ出した部下を上官はその場で射殺することも認められています!」
コナーの言葉を、パーシーは笑い飛ばした。
「それが何だよ! そんな事誰が気に留める!? ここでのトップは俺だぞ!? それに誰がお前らスラムの犬の話を信じると思う!? 俺が逃げたなど誰が信じる!? そんな事が通用すると思うなよ!」
「いいや、通用する」
パーシーは再びショウを殴ろうとした拳を止めると、聞き覚えのあるその声に顔を青くしながら目を向ける。
「ハ、ハミルトン大佐!? な、何故ここに!」
パーシーの視線の先には、ペトロフと共に司令室へと足を運んだハミルトンの姿があった。その姿を見たパーシーはただ、呆然とした。手に込められていた力が抜け、ショウはパーシーから解放される。
「私がいてはいけないのかね?」
ハミルトンの射貫くような視線が、パーシーに降り注ぐ。
「い、いえ! 決してそのような事は!」
「話は聞かせてもらったぞ」
「た、大佐!? まさか、この犬どもの言うことを信じるのですか!?」
ハミルトンは鼻で笑った。
「信じるも何も、先程自分で言っていたではないか。〝俺が逃げたなど〟と。あと、ここのトップは貴様ではない、私だ」
「あ、え? あ……」
「これ以上、パーシー家の家紋に泥を塗るような行為は慎むべきでは? 言ったであろう? 上手く使えと」
パーシーは言葉一つ一つに萎縮していく。
「う、あぁ、た、大佐、しょ、小官は――」
「まだ、口を開くのかね?」
パーシーは膝から崩れ落ち、目を見開いたまま項垂れた。
「おい、こいつを今すぐここから連れ出せ」
「は、はい!」
ハミルトンはパーシーの部下に命じ、司令室の外へと連れ出させた。
「全く、使えない奴め。銃殺刑にならんだけでもありがたいと思って欲しいものだ」
ショウは痛みに耐えながら立ち上がり、すぐに敬礼の姿勢をとった。
「お待ちしておりました。ハミルトン大佐殿。このような汚れた場所で申し訳ありません」
ショウはハミルトンの後ろに控えているペトロフの姿を見つけ、少し気が緩んだ。
「いや、構わん。しかし、今回の作戦だが、見事だったぞ、少年達よ。今後も是非君達の活躍を大いに期待したい。貴様、マクレイア上等兵だったか?」
「はい」
名を呼ばれたショウはハミルトンの目をまっすぐ見据える。
「貴様の働きには目を見張るものがある。貴様には野戦任官として、伍長の階級を言い渡す。今後作戦の指揮は貴様に任せる」
「謹んで拝命いたします」
首を垂れるショウに、ハミルトンは機嫌よく笑った。
「本当によく躾けたものだな。ペトロフ准尉よ」
「は……」
「貴様らはもう下がって良い。マクレイア伍長、次の作戦までに手当を受けるように」
「サー・イエス・サー」
「誰か、マクレイア伍長に肩を貸してやってくれないかい?」
ペトロフが気を利かせ、ショウの元にヨダとコナーが駆け寄り、肩を貸す。ショウは緊張の糸が解けたようにもたれかかった。
「ペトロフ准尉……」
「酷い有り様だね、マクレイア上等兵。今は昇進を喜んでいる暇はない。すぐに手当てを受けなさい。ヨダ二等兵、コナー二等兵。彼を頼んだよ」
「は、はい!」
「では、我々はこれで失礼しますね、ハイ」
ヨダとコナーの後に続き、各小隊長達も司令室の外へと出る。
「ショウさん……大丈夫ですか?」
「全く、あんなに挑発するなんて、隊長らしくないですねぇ、ハイ」
「はは、挑発すれば、お前らに手を出す暇がないだろ?」
ショウの言葉に、ヨダは理解できないといわんばかりに首を振った。
「全く、無茶しますねぇ、ハイ」
「ご苦労さん。俺は自分の部隊に戻る。何かあったら呼んでくれ」
エリックは、彼なりの労いの言葉を掛けると、自分の部隊へと足早に去って行った。
「相変わらず、淡白なやつだな……」
「チッ、胸糞悪りぃ。俺も勝手にさせてもらう」
ジャックも悪態をつきながら自分の部隊へと戻っていく。
「ジャックさんは終始あの様子ですねぇ。カルシウム足りないんじゃないですか? ハイ」
ヨダの言葉に、コナーは苦笑いを浮かべる。
「それにしても、ハミルトン大佐がパーシー少尉を切るとは意外だったな……」
「そうですよね。てっきり僕もパーシー少尉の肩を持つものだと……」
「確か、パーシー家は代々ハミルトンに仕えているんだよな?」
ヨダに確認するように問いかける。
「ええ、そうです。まぁ、私も驚きましたよ。身内を切ってスラムの犬の肩を持つなんて――」
「何も不思議じゃない」
ヨダの言葉に被せるようにティムが口をだし、三人はティムに注目する。
「何も不思議じゃない、とは?」
「ハミルトン家は代々貴族を従えるくらい権力のある貴族だ。従えている貴族には、力のあるもの、そうでないものなど様々だ。従えると言っても、あそこは損得を特に気にする。金の亡者のクルード家よりも。だから使える貴族は手元に置き、使えないとわかるとすぐに切り捨てる。そういう家なんだよ」
いつも以上に饒舌に語るティムに、ショウは違和感を覚える。
「なんでお前がそれを――」
「いや~さすがですねぇ、貴族の内情などは私なんかよりも詳しいですよねぇ? ティモンドさん」
ヨダの言葉に、ティムは目を見開いて固まった。
「な、何で……おまえが!」
「ティムさん、あなたはグレンヴィル家の嫡男ですよね?」
ティムは心臓を一突きされたような衝撃を受けて、どうしようもない不安にかられ、冷や汗が湧き出ていた。
「グレンヴィル家の嫡子は代々金色の瞳を持つとか。いやぁ、珍しい瞳をしていると思いましてねぇ」
ティムはハッとしたように、顔を覆う。
「ヨダ、その辺に――」
「グレンヴィル家は長くハミルトン家に長年仕えてきたにもかかわらず、バッサリ切られて没落してしまいましたっけ? 没落してしまった貴族の末路は悲惨でしょうねぇ」
「くっ……」
ティムは歯を食いしばり、顰蹙し、その場から逃げ出すように走りだした。
「あっ、ティムさん!」
「おやおや?」
「おやおやじゃない! なんでお前はいつも……」
ショウは、喋り出したら止まらないこの男の制御に、ほとほと疲れ切っていた。
「すみません、つい」
「もういい、もう喋るな。俺はティムの後を――」
「ダメですよ! ショウさんはまだ治療が済んでませんから!」
コナーは後を追おうとするショウの腕を離さない。
「いや、大した事は――」
「ダメです! こうやって肩貸さないとダメなくらいじゃないですか!」
「いや、別に肩を借りなくても――」
「ダメです。逃がしませんから!」
「あー……」
ショウは治療を後回しにできないと観念した。
「ヨダさん、そっち持ってください!」
「隊長はコナーに頭が上がりませんねぇ、ハイ」
「誰が喋っていいって言った?」
「さて、早く野戦病院に連れて行かなくては」
しらばくれるヨダを尻目に、ショウはティムが走っていった方を見やる。
「おい――」
「ダメです」
「まだ何も言ってない……」
ショウはコナーとヨダに連れさられるようにして、野戦病院へと運ばれて行った。
どうも、朝日龍弥です。
ショウが野戦任官とはいえ、上等兵→伍長へ昇進しました。
よろしくお願いします。
次回更新は、1/23(水)となります。




