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お・し・お・き・確定だあああああ!

「時間がないものでな、直球でいかせてもらう。この中で、龍族に恨まれる憶えのある者は手を挙げろ」


 いやあああ!? いやあああああ!?

 やばいやばいやばい。まさかあんな出会い頭な勢いでヤっちゃった事がここまで発展するとは思ってないよ!?

 ……はあ、でも仕方がないよなぁ。ちょっとした事なら「しーらない!」と言い張ってやるところだが、流石に国一つを存亡の危機に晒してまで隠そうとは思えないわ。

 眼を瞑り、大人しく片手を挙げる。後は断罪の時を待つばかり。

 ……………………

 …………?

 ばかり……のはずだが?

 恐る恐る眼を開ると、まず映ったのは深く、それはもう深淵にまで届きそうなほどに深くため息を吐く学園長の姿。

 何だと考えるまでもなくとてつもなく呆れているのが丸分かりだ。一体どうしたのかと、周囲の様子を窺ってみると――


「「「「……」」」」


 なんと……!

 ミハイル以外、全員が手を挙げている……だと……!?

 っていうかミルヴァ……お前もかっ。

 そいつら全員俺と似たような心境だったのか、瞑っていた眼をゆっくりと開いている。そうして学園長の様子を見て、周囲を見回す動作まで全く同じ。

 そして、お互いの目線が合ったところで。


「「「「「……」」」」」


 全員(俺含む)一斉に眼を逸らした!

 ミハイルらしき人物のため息が聞こえた気がするが気のせいだ!


「――――」


 お互い何かを探り合うような気配を感じる。

 よし、ここは先手必勝だっ。


「はっ! お前ら、偉大なる龍族様に何かましてやがんだよああん?」


 明後日の方向を向いたまま、自分の事など棚の上に放り投げて言ってやった。

 速攻で反発してきたのが、付き合いの長いミルヴァだった。


「手を挙げているセツナさんには言われたくないですがね! 貴方こそ、その礼儀知らずな口調で龍族の怒りでも買ったのではないですか? ええ?」

「ふっ……生憎と俺はその上をいってんだよなあああ! これがあああああ!」

「威張れた事ですかそれえ!」

「そーいうお前は何をしでかしたんだよ? 怒らないから言ってみ? 爆笑はしてやるけど」

「け、喧嘩を売っていますね? いいですよ買いましょう。さっきの決着今ここでえええ――!」

「はい止まりましょうね」


 ミハイルがあまりにも綺麗に間に入ってきた。まじか、あまりにも自然な動きで、気配を感じなかったぞ。

 こいつ、俺達を仲裁する腕が上がってきてないか?


「……不思議そうな顔をされてますが、ここまで何度もやらされれば嫌でも身に付くかと」


 なんとも複雑な表情で言ってくれたものだ。そんなにやってたっけ?


「じゃれ合いはその辺で良いか? なら端から順番に、どんな心当たりなのかを詳しく話してもらいたい」


 学園長だけが、冷静そのもので話を進めている。

 まず指名されたのは、あの変態生徒だ。

 手にした扇子を慣れた手付きで広げ、口元を隠す。

 隠すのはいいんだが、あいつの口元は常にニヤけている印象しかないんだが、意味あんのかそれ?


「ふっ……実は先日、竜の幼子を学園の外にて発見しましてね。あまりに愛らしい成り形であった為、ついつい住処に戻るまでを一部始終ついせ――――見守っていたので、迎えに来た親竜に気付かれてしまいまして。私はただ幼子……竜の子が無事に帰れるのかどうか心配していただけだと説明したのですが何故か拗れてしまい、少しばかりの死闘を演じてしまいました」

「……ちなみにどれだけストーキングしていた?」

「八時間くらい――――はっ!? いや、ストーキングなどではなくですね――」


 有・罪・確・定。

 こいつ、人型とか関係なしだと……!?


「なるほど、まあ分かった。では次、ヴァルガよ。何をしでかした?」


 語尾長おっさんの名前が判明。ヴァルガというらしい。

 無駄にカッコ良さ気なのが微妙な気分にさせられる。


「実ぁぁこないだ、竜の奴隷を買っちまったんだぁぁぁ」


 おう、奴隷とな?

 日本では聞きなれない響きではあるが、良いものではないのはなんとなくわかるぞ。


「……なるほど、それで龍の怒りを買ったか」

「いやぁ、それがよぉぉぉ……」


 何か言い淀んでいるヴァルガ。それ以外にも何かあるっていうのか?


「まだ幼子でなぁぁ、しばらくそいつを育ててたんだが――」

「幼子!?」


 反応した変態の頭は殴っておいた。続きをどうぞ。


「……元々、そいつを取り返しに来た親竜と戦り合うエサのつもりだったんだがぁ、こいつが懐いちまってなぁぁぁ」


 ……んんん? なんか話が変な方向に向かっている様な……


「いよいよ親竜が取り返しにきた! って時によぉぉ、その子竜が俺と離れたくねぇぇって鳴きやがってよぉぉぉ。最初は親に返してやるつもりだったんだがぁ、その時つい情が湧いちまって、親竜が伸ばしてきた手を振り払っちまったんだぁぁ」


 当然、竜は激怒した。だが、その人間と離れたくないと泣き喚く我が子の姿に、怒りを抑えてその場を立ち去ったのだという。

 このヴァルガというおっさん、見た目や態度のわりにいい人かもしれん。


「もしかしたら、それを恨みに思っての事かもしれねぇぇと」

「ぐすっ……いい話じゃないですかぁ」

「最後は竜の怒りを買ってるがな」

「余計な事言わんで下さい!」


 涙ぐんでいるミルヴァに怒られた。事実じゃんかよぉ。


「ふむ、あのムスペルはその手の情には理解があるヤツだから、おそらくそれは違うだろうな。では次だ」

「はい」


 返事をした眼鏡の女教師は、指先で眼鏡を押し上げて、鋭く光らせた。

 えらい自信満々だけど、自分は関係ない確信でもあるのだろうか?

 さっき手ぇ挙げてたくせに。

 

「先日、龍の死骸を解剖しました」


 いきなり爆弾ぶっこんできました。


「「「「「「……」」」」」」

 

 原因それじゃねぇ!? と、女教師以外の心が一つになった気がした。


「それが龍族にばれたと?」

「いえ、私の情報防衛は完璧です。あれを見たものは、ネズミ一匹逃しはしませんでした」


 いやそんな事言い切られてもむしろ怖えよ!?


「ではなぜそれが理由だと思う」

「それは……相手があの龍神ムスペルであるからとしか言えませんが……」


 情報は絶対に漏れていない自信がある。しかしやってきた相手があまりに強力で、そいつであれば自分が気付かないなんらかの方法でそれを知る事ができた可能性を否定しきれないと。

 自信はあれど、確信にまでは至らないわけか。通りでどっち付かずな反応してるわけだよ。

 ……ちなみに竜を解剖して何に使ったのかは、後でこっそり訊いてみるつもりだ。ちょっと興味ある。

 

「次は――とある村娘さんどうぞ」

「はい!」


 いや待て。

 今の短いやりとりにツッコミどころがあり過ぎんぞ!?


「私はもう何年か前になるんですが、以前国に親交を深めにやってきた龍族の御曹司に村娘神の教えを説いて、この世における真に正しき道へと導いて差し上げました!」

「待てやコラ」


 聞き捨てなってたまるか!


「つまりあれか? お前は竜の若貴族を一匹、変態教に洗脳して帰したとそういう事か?」

「変態教違う! 村娘教ですよ! ぶっ殺されたいんですかヒモ野郎!?」

「てんめええええええ!」


 言ってはならん事を言いやがったなキサマぁぁぁ!

 俺達がガッチリと腕を組み合っているが、もはやミハイルは処置なしと首を横に振るばかり。

 学園長や他の連中も、俺達がどんなヤツなのか知れたのか、チャチャも入れてこない。


「組み合ったままで構わんから問いには答えろよ? キラノ・セツナ。お前は一体何をやった?」


 むぅ、とうとうきやがったか。さてどう答えたもんかなぁ。

 まあ……最初に決めた通り、正直にいかせてもらうか。他の連中もなかなかのもんだが、やはり直近で言うのなら俺が一番危険だろうからな。


「えー、龍を一匹ぶっ殺しました。てへっ」

「「「「「「――――」」」」」」


 おいやめろよ。そんな今にも顎が外れそうな眼で俺を見るなよ。興奮なんかしないからな!

 いち早く立ち直ったのは学園長だった。さすがの年の功か。


「いや、なるほど。そうでもなければヤツが動くほどではないか。……とはいえ、素手で龍を屠る者がこの世に居たとはな……」

「信じるのですか学長様!?」

「俺ぇも、にわかには信じがてぇ話だなぁぁぁ」


 えー、そこまで厄介な相手だったっけか?

 ああ、こいつらはヘイトの事知らねぇからか。いや、それにしたって、そこまで対処できない相手じゃなかった気がするけど。

 ちょいちょい突かれ振り向くと、ミルヴァが物言いたげな眼でこちらを見ていた。


「なんだよ?」

「セツナさん。龍族とは、強大な力を持つ反面、基本的に温厚な種族なんですよ? さっきの皆さんの話を聞いていても分かると思いますが、こちらが何かしか相手を刺激しなければ、向こうから襲い掛かってくる事はありません」

「うん、それはまあ、なんとなく分かった」

「龍族の中でも、特に強い力を持つ者ほどその傾向が強いのです。セツナさん……貴方一体、どんな龍を倒したのですか?」


 ああ、俺が倒した龍とやらがどんなヤツなのか気になるのか。

 異世界における最初のファンタジー遭遇だったからな、良く憶えてるよ。


「全長三十メートルくらいの、全身蒼い鱗で覆われた、綺麗な水龍だったな。うん、あの水飛沫の息吹はなかなか強力だった――」


 そこまで言ったところで、連中が頭を抱えているのに気が付いた。


「じょ、序列43位の水龍『ヒュドール』!? 冗談でしょう!?」

「おうぅ……流石にそりゃあ、見逃してはもらえねぇわけだぁなぁ」

「はっはっはっ! そんな事より、学園長の驚愕の表情を堪能しようではないか!」


 約一名の変態を除き、皆が口を開いて驚きの声をあげている。


「セツナさん。さっきも言った通り、龍族とは位が高いほど、より温厚になる傾向にある種族なんです。まして序列五十位以内に入るほどの龍族となれば、それこそ『神域魔法』でも使わなければ反応しないはずなのです。……本当に、何をしたんですか?」


 神域魔法? 言葉の響き通りに解釈していいのなら、文字通り『神の領域』に届くほど強力な魔法なのだろう。

 バカな、俺は魔法ド素人であって、そもそも魔法のイロハを学びたくてここまでやってきたんだぞ?

 んなもん、心当たりなどあるわけが――


「い、や――待てよ……?」


 神域魔法……神域……神様?

 神様といえば? アルティ。アルティが俺を送還する時に使ったものは?

 神・域・魔・法!


「あ、あ、あ……」

「あ?」

「あんの駄神めがああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」




 ――その絶叫は、遙か神域にまで届いたという。


「おおう!? な、何故か、背筋に悪寒が走ったの……?」


 このしばらく後、自身が送還した人間の手により、かなりきついおしおきを受ける事になる事を、創造神たる少女はまだ知らない。

アルティの魔法は強力すぎて、龍達を刺激し過ぎる為、異世界に送還されたばかりのセツナにも、最初から攻撃モードで襲い掛かってきました。

元凶はアルティです。しかしセツナも嬉々として応戦していたので、結局のところどっちもどっちですが……

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