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「わたしのために死んでちょうだい」と言われて殺されるモブ令嬢に転生しましたが、生き延びるため魔法騎士を目指します  作者: 倉本縞


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30.お客さま


「とりあえず執務室に行くか。……ん?」

 ルーディガー様は首を傾げた。

「珍しいな。もう一人、来客のようだ。……これはジェラルド殿下か」


 ルーディガー様の言葉に、わたしはギョッとした。王太子殿下!?

「王太子殿下が、なぜ……」

「知らん」

 ルーディガー様は興味なさそうに言うと、わたしの手をつかんで歩き出した。

「とりあえず、執務室に行くぞ。そこで転移魔術を見せろ」

 王太子殿下の来訪よりユニーク魔術に興味津々なのが、いかにもルーディガー様という感じ。


 だがわたしは内心、混乱していた。

 なぜ王太子殿下が魔術師の塔に?

 たしかに殿下は、学院卒業後に第二王子側の勢力を一掃するため、魔術師の塔にも仲間を増やしていた。だがそれはあくまで水面下の話で、こんな風に表立って魔術師の塔を――それも魔術師団長の許を――訪れるようなことはなかったはずだ。


 なにかの間違いかと思ったが、ルーディガー様の執務室に入ると、そこにはジェラルド様がいた。くつろいだ様子でソファに腰を下ろしている。

「殿下、何か用か? 今からマティルドに転移魔術を見せてもらうから、殿下の話は後で伺わせてもらう」

「ちょっと待ってください!」

 わたしは慌てて言った。ルーディガー様、いくらなんでも王太子殿下に対してその態度はマズいのでは。


「魔術は逃げませんわ。まず、殿下のお話を先にお伺いいたします」

 わたしはジェラルド様に向き合い、頭を下げた。

「殿下、失礼いたしました。本日は……」

「ああ、気にしなくていい」

 ジェラルド様は、ひらひらと片手を振ってわたしの挨拶をさえぎった。


「ここに来たのは私用だからね。……それに、私もマティルド嬢のユニーク魔術には興味があるし」

「そうか。じゃ問題ないな。さ、マティルド」

 ルーディガー様が嬉しそうにわたしを見る。


「わたしのユニーク魔術ですか……」

 うーん、とわたしは少し考えた。

「あの、わたしのユニーク魔術は、別の地点へ瞬間移動するというものなのですが、今のところルブラン領にしか移動できないんです」

「かまわん。それより私の情報によれば、マティルドは自分だけではなく、その体に触れた物も一緒に転移させられるはずだが」

「……おっしゃるとおりです」

 なんで知ってるんだ。

「では、マティルドがルブラン領に転移する際は、私も一緒に連れていってくれ」


 ルーディガー様に軽~く言われ、わたしはのけ反った。

「は!?」

「大丈夫だ、私はこの国の魔術師団長を務めている。たとえ魔獣がうじゃうじゃいる森に落とされても、無事に王都に戻ってこられるから問題ない」

「ルーディガー師団長」

 ジェラルド様が片手を上げて話を止めた。


 よかった。王太子殿下が止めれば、さすがの魔術師団長でも無理強いはできないだろう。


 しかし、

「それなら、私も一緒に連れていってもらえないだろうか?」

 ジェラルド様がにこにこしながら言った。


「は!?」

「私はユニーク魔術を見たことがないんだ。マティルド嬢がユニーク魔術の使い手と聞いて、ぜひ見てみたいと思ってね」

 今日もそれで魔術師の塔を訪れたんだ、と明るく言う王子様に、わたしは呆然とした。


 ええー……。そりゃあユニーク魔術は珍しいけど、それだけでジェラルド様がわざわざここに?


 わたしは疑いの目でジェラルド様を見た。

 ひょっとしてジェラルド様は、わたしの力を確認するためにここへ来たんじゃなかろうか。

 たしかに、もしわたしがドミニク様のような伝説の大魔術師クラスの力を持っているなら、なんとしても自分の味方に引き入れたいと思うだろう。

 わたしとしても王太子殿下側に付きたいのは山々だが、わたしの力はジェラルド様のお眼鏡に適うだろうか。


「……わかりました」

 ちょっと迷ったけど、わたしは頷いた。


 わたしのユニーク魔術はそこまで使い勝手のいいものではない。しかし、緊急事態――手練れの暗殺者集団を送り込まれた等――には役に立つだろう。一瞬で追手を振り切ることができるのだから、身を守る手段としては有効だ。そこら辺を評価してもらいたい。


 ただ行先を指定できないのが問題なんだよなあ。

 ルブラン領にいた時、寝室ではなく屋敷の前に移動できたけど、あんな感じでもっと自由に行先を指定できないだろうか。


「マティルド嬢?」

 考え込むわたしに、ジェラルド様が声をかけた。

「どうかした? 何か心配なことでも?」

「ああ、いえ、ただルブラン領ではなく、別の場所へ移動できないかと考えていたのです」

「できるさ」

 ルーディガー様が簡単に言った。


「マティルドは一度、ルブラン領の自室以外の場所にも転移できただろう。報告書にそう書いてあったぞ」

 その報告書にはいったい何が書かれていたのか、非常に気になるのですが。

「そうなのか。それでは、ルブラン領以外の場所に転移できるかどうか、試してみては?」

 ジェラルド様まで転移って言ってるし。


「……わかりました」

 まあ、移動先を指定できればラクだしね。やるだけならタダだ、やってみよう。

「でも、最初は魔術師団長様だけを伴うということでお願いいたします」

 いくらなんでも王太子殿下を魔術の実験に付き合わせるわけにはいかない。


 ジェラルド様は残念そうだけど、ここは譲れませんよ!


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