2話
すぐ後ろに壁があるからか、避けきれずにまともに蹴りをくらうと、ごぼっと咳き込んだ。流石に立ち上がらないだろうと思われたが、素早く立ち上がると前をはだけさせていた服を脱ぎ捨てた。ごとんっと重たそうな音だった。服を脱ぎ捨てると、肩から吊るしてあった大型のナイフを抜き取ると鋭く投げてきた。京井が避けると、その後ろでかんっとナイフが弾かれる音がした。
京井が振り向くと、すぐ後ろには男が迫っていた。男は京井の横を通りすぎると、覆面の者に迫った。手にしていたナイフを持ちかえると、空いた手で覆面の者の頬をばちんっと叩くと、京井の方に放り投げた。よほどに軽いのか、ぽーんと飛んできた者に驚いたものの、京井が見事に抱き止めた。だが覆面の者はそんな京井の襟を掴むと、すとんっと降りると襟を掴んだままくるっと回りながら、腰を落とした。ふわっと京井の身体が浮き、床に叩きつけられた。その上を転がり、覆面の者は再び男に向かっていった。
「京井さんっ…大丈夫ですか?」
「えぇ、どういう状況なのかさっぱり分からなくなってきましたね」
冬四郎に起こして貰い、京井はシャツをぱたぱたと払うと入り乱れるように戦う、覆面の者たちと男を見ていた。
「とりあえず、下がりましょう」
「そうですね…しばらくは静観ですね」
山上と片車輪も静観と決め込んでいるのか、窓際に立っている。




