2話
京井が臭いに苦しんでいる間に、つい先程まで気絶していた1人が、猛然と片車輪に突っ込んできていた。後ろから飛び付き、押し倒すと短いナイフを突き刺そうとしていた。だが、寸前の所で山上が相手の顔に蹴りを食らわせた。
顔には布1枚だけなのか、ぐらっと倒れた。何とか上体を起こしたものの、視界が揺れているのか、頭を振っていた。すぐに動けないと分かったからか、山上はそのまま手を伸ばし、布を剥ぎ取ろうとした。それだけは嫌なのか、ばしっと手を払い除けると転がって、距離を開けた。
相手は膝をついて上体を起こして、いつでも動けるようにはしているがまだ立ち上がれるほどではないようだった。京井と山上から与えられたダメージは、相当の物なのだろう。そして、ちらっと冬四郎の方を見た。冬四郎は京井に手伝って貰い、動けずにいた者の手を後ろにさせ、ネクタイで縛り上げていた。縛り上げられると、流石に動けないからか抵抗もなく大人しくしている。
仲間が捕らえられ、逃げるつもりなのか窓の方に目を向けていた。だが、事務所は5階にあり、飛び降りるとなると生きてはいれないだろう。ドアの前には冬四郎が居るし、その前には京井も山上も片車輪も立っている。




