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1話
呼び出し音はするものの、電話に出ない。しばらくすると、留守番電話に切り替わった。颯介は1度、切ると再びかけ始めた。だが、やはり電話には出ずに留守番電話になるだけだった。
「出ないか?」
またタバコを吸い始めたのか、山上は顔だけを出している。それなりに、気にはなっているようだ。
「出ませんね…」
「ちっと、あいつ弛んでるんじゃねえのか?ったく、しょーがねぇやつだな」
「どうします?」
「んー…ほっとけ。遅くても昼には来るだろ。ったく、甘やかすんじゃなかった」
ぶつぶつと文句を言いつつも、山上は怒っているわけではなく、呆れているのか笑っていた。
「そうですね」
颯介は携帯をしまうと、パソコンの電源を入れた。そして、コーヒーを飲みながらメール画面を開くと、1件のメールがあった。仕事の依頼かと思い開いてみると、むつからだった。颯介は少し不振に思った。
「社長、むっちゃんからメール来てます」
「はぁ?パソコンにか?」
「えぇ…」
「何だって?」
「体調不良の為しばらくお休みします、って…」
颯介が読み上げると、マグカップを持って山上がキッチンから出てきた。