2話
「湯野さんと谷代君はちゃんとタクシーで帰って行きましたよ」
持って出た紙袋を置いて、京井は頷いた。先に出た京井だったが、後から颯介と祐斗が出てくるのを確認すると人混みに紛れて、2人がそれぞれタクシーに乗り込むのを見ていた。タクシーが走り去り、見えなくなると京井はまた事務所に引き返してきたのだ。
「何となく、湯野ちゃんは俺らが何かするんじゃないかって思ってるみたいだったけど…帰ってくれたか」
「たぶんは…宮前さんが篠田さんたちを戻ってくるみたいな言い方しちゃったからでしょうね」
京井がそう言うと、山上はあぁと唸った。冬四郎にしても悪気があったわけではないのだろうが、やはり疲れてぼんやりしているのか言い方にまで気を配れないでいるようだ。
「宮前さんは、かなり参ってますね」
「そりゃあそうだろ…目に入れても痛くないってくらいに、可愛がってるんだからな」
「そうですね…山上さん今のうちに仮眠とられてはどうですか?まだ人通りも交通量もあるうちなら、何も起きないと思いますよ」
壁掛けの時計に目を向けた山上は、そうだなと言うと、立ち上がった。そして、奥のソファーに向かって行った。くるっと毛布を身体に巻き付けると、さっさと横になった。あっという間に寝息が聞こえてきた。京井も少し休みたいのか、ネクタイを外して首もとを緩めた。




