2話
「よし…出来ましたよ」
タッパーを渡された祐斗は、嬉しそうな顔をして礼を言った。京井もそんな祐斗の顔を見て嬉しく思ったのか、微笑むとそっと頭を撫でた。
「ちょっと、京井さん」
「あ、すみません。つい…」
つい、何だよと祐斗は思ったりもしたがそれは言わなかった。嫌だったのではなく、恥ずかしかっただけなのだ。
「祐斗、それ持ったら湯野ちゃんと帰れ」
「社長は?」
「俺は片車輪とここに泊まる。こいつをどっかに連れて行くのも…心配だからな。急に妖の姿に戻られたら、騒ぎになる」
洗い物を済ませて戻ってきた颯介は、じっと山上を見ていた。颯介の探るような目に、山上も気付いているのだろう。だが、山上はいつもと同じ態度だった。颯介は何かを言いかけて、口を開いたが何も言わなかった。
「京井さんはどうされますか?」
「私も帰りますよ」
京井はそう言い、朝持ってきた重箱とさっきの重箱を風呂敷で包むと、紙袋の中に入れた。そして、ジャケットを掴んだ。
「祐斗も湯野ちゃんもタクシー使え。領収書忘れないようにな。京井さんも。迷惑かけてますか、そのくらいはこちらで落としますから」
「分かりました。そうさせて貰います」
そう言うと、京井は先に出ていった。祐斗と颯介も帰り支度をして、山上に挨拶をすると出ていった。




