2話
「で?何にも掴めなかったか?」
「無理ですね。むつがよく行く所って限られてはいるんですけど…一緒に行くのは限られた人だけか1人でか、って感じです」
西原は片車輪をぽんぽんと叩いて、溜め息を吐いた。そして、疲れたようにどさっと椅子に座った。当直明けで、朝から動いていて流石に限界なのだろう。ふぁふぁと欠伸をしている。
「西原はもう休ませないとだな。それに、そろそろ…夕方か。早いな」
そう呟いた山上はキッチンに入って行った。山上がコーヒーをいれる準備を始めると、冬四郎も疲れたように椅子に座った。今の所は手詰まりとなってしまっている。何となく重苦しい雰囲気の中、廊下をばたばたと走る足音が聞こえてきた。そして、ばんっとドアが開いた。
「しゃちょ、うぅっ‼」
息を切らせながらやってきた線の細い青年、アルバイトの谷代祐斗は入るなり目の前の片車輪を見て、驚いて固まっている。ふるふると肩を振るわせながら、腕を持ち上げると片車輪を指差した。
「人を指差すなや」
「人じゃないだろ‼そんなのどうでもいいよ。どういう事ですか?社長は?」
祐斗はどさっとリュックを置いた。そして、山上が居ないのを分かるとずんずんとキッチンに入っていった。
「ちょっと社長‼湯野さんからのメール見ましたよ‼」
「おぉ、学校終わったか?お疲れ。ほれ」
「あ、ありがとうございます」




