2話
「山上さぁーん、ダメっす。なーんにも分から、な…い?」
西原は疲れたような声を出していたが、目の前の水車のような物を見て、ゆっくりと顔を上げた。そして、ぱっと笑った。篠田に至っては、にこにこと嬉しそうにしている。
「片車輪じゃんか‼何してんだよーお前」
友達のように話しかけ、西原は火の消えている車輪をばしばしと叩いている。
「お前より先に来てたやろーが」
「だって、人の姿って見慣れてなくてさ。キモかったんだよな」
疲れた顔をしていた西原だったが、けらけらと笑っている。篠田も何だか嬉しそうだった。だが、もう1匹大きいのが居るのに、2人共反応を示さない。冬四郎はそっと振り向いてみた。ついさっきまで、犬の姿だったはずの京井はしれっと人の形をしていた。そして、きゅっきゅとネクタイを直している。その早業に冬四郎は驚いていたが、目があった京井が悪戯っ子のように人差し指を口に当てて、くすっと笑った。意外な仕草を見て、冬四郎は唖然としていた。
「で、何でこいつここに居るんですか?」
「お前っ…大丈夫か?話聞いてたか?」
片車輪がにゅっと太い腕を伸ばして、西原の肩を掴むとがくがくと揺さぶった。
「冗談だーって。おっさん姿やめたのか?」
「疲れたんやわしも歳だ」
けらけらと笑う西原と片車輪の様子はどう見ても、以前に1度会っただけ以上の気安さがあった。




