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2話
「デカいな…」
山上は京井の腕から抜けると、片車輪を見上げていた。そして、京井を見た。まじまじと上から下まで見て、ふーんと言った。
「背中に乗れそうだな」
「乗りますか?むぅちゃんは乗せた事ありますよ」
「いや、いい…男の上に乗る趣味はない。それより、お前人の姿に戻れるか?デカくて邪魔だな」
邪魔と言われた片車輪は悲しそうな顔をした。髭面で強面のくせに、そんな顔を見せると何となく庇ってやりたくなるから不思議だった。
「すぐには無理でしょうね。慣れてないなら、人の形で居るのはかなり疲れるんですよ」
「京井さんも犬の姿の方が楽ですか?」
「私ですか?私はもう慣れてますから…どっちでもいいですね。けど、たまに戻るといいなって思っちゃいます」
ぶるぶると身体を振るわ、京井は太い尻尾をふりふりとしている。冬四郎はそれを見て、喜んでるんだなと思っていたが口には出さなかった。
「あ、西原さんと篠田さん戻ってきますよ」
大きな耳をぴくぴくと動かして京井が言った。山上と冬四郎がドアの方を見ていると、本当に2人が戻ってきた。




