1話
片車輪が持ってきた毛布を受け取り、冬四郎はむつの使っている椅子の上で、山上はソファーの上で、片車輪は床でそれぞれ仮眠を取る事にした。ソファーを使うように、山上にも片車輪にも言われたが、冬四郎は座ったまま腕を組んで眠る事にした。眠ると言っても、あと数時間もしたら、篠田たちも来るだろう。冬四郎はとても眠る気にはなれなかった。だが、休める時には休まなくてはならない。今は何も考えずに、目を閉じて身体を休める事にした。
少し眠っては目覚め、また眠る。そんな浅い睡眠を繰り返しているうちに、とんとんっとドアをノックする音が聞こえた。はっとした冬四郎がドアを開けると、そこには大柄な男が立っていた。
「あ、まだお休みでしたか?すみません」
「京井さん。おはようございます…わざわざ申し訳ありません。山上はまだ眠ってますので」
小声で話ながら大柄な男、京井はそっと事務所に入った。それと同時くらいに、エレベータの止まる音がした。冬四郎が待っていると、颯介がやってきた。
冬四郎がドアのまえで待っているのに気付くと、颯介は驚いたような顔をしていた。
「おはようございます。もういらして…泊まったんですか?」
「えぇ、山上と片車輪と一緒に」
「そうでしたか…すぐにコーヒーいれますよ」
颯介は先に来ていた京井とも挨拶をすると、そっと奥のソファーを見た。そして、何も言わずにキッチンに入っていくとお湯を沸かす準備を始めた。




