1話
山上は冬四郎の方をちらっと見ると、片車輪のしていた作業を終わらせて、颯介の机の固定電話を引き寄せた。そして、夜中にも関わらず電話をかけた。片車輪は、はぁと溜め息を吐きながら目頭を揉んでいる。
「もしもし?夜分に申し訳ありません、よろず屋の山上と申します…えぇ。そうです。先日はお世話になりまして…えぇ、実はむつがトラブルに巻き込まれまして…えぇ、はい…今は事務所に宮前と居ます…えぇ…はい。申し訳ないですが、宜しくお願いします。はい、失礼します」
電話を切った山上は携帯を取り出して、また電話をし始めた。その間に、片車輪はファイルを整理して片付けると、持って奥の倉庫に向かっていく。
「お、篠田。悪いなこんな時間に、ちょっと良いか?あぁ…実はな…」
山上の電話が終わるのを待っていようと思った冬四郎だったが、自分の携帯が鳴っている事に気付くと急いでジャケットから取り出した。画面を見て、相手が誰か分かると途端に嫌そうな顔をした。
「…はい」
『はい、じゃねぇ‼むつが行方不明ってどうなってんだ?いつからだ‼』
「それはまだ捜索中でして…おそらく昨日の昼以降ではないかと…」
『あやふやじゃねぇか‼どういう事だ?何だ、お前はむつの所に行ってないのか?』
「行きましたよ。鍵開いてまして、帰った所ですぐに何かあったのか、買い物袋なんかが落ちてました」
『襲われたって事か?』
「だと思います。俺は管轄違うので資料とか見れませんが、俺は俺で探しますから」
『当たり前だろ…俺は俺でやる。襲われたんなら、仕事絡みか俺かお前に恨みでもあるやつだろうな』




