1話
「あぁ…それな。俺にもよく分からないんだけどな。遠出とかしたりして、変な物買ってくるんだよな。ま、そこにある物は大丈夫だ。本当に変な物は奥の倉庫にしまってあるからな」
山上はそう言うと、奥にあるロッキールームと兼用している倉庫に入って行った。奥から片車輪を呼ぶと、片車輪も大人しく向かっていった。髭面の強面のわりには、付き合わされても文句も言わないし、大人しく言う事を聞いている。前に会った時は、そんなんじゃなかった気もした冬四郎は首を傾げていた。
パソコンが立ち上がると、パスワード画面が出てきた。パスワードとID入力がなくても開かないかと、冬四郎は試してみた。すると、普通に開けた。冬四郎は、おっと思いマウスを動かして並んでいるフォルダをクリックしてみた。だが、そこに入っているのは写真だけだった。一緒に写っているのは、どれも冬四郎が知っている面々だった。次にメールボックスも開けてみたがどれも空だった。ダミー用だな、と冬四郎は直感し1度シャットダウンさせた。
そして、やはりIDとパスワードが必須なんだなと思った。すぐに思い付く誕生日や生年月日なんかの分かりやすい物を打ち込んでみたが、どれも違う。冬四郎はうーんと唸った。こういう時に困るから、パスワード設定なんてして欲しくはないと思ったが、警戒心の強さが出ているなと思っていた。
だが、この仕事場でそこまでの警戒心が必要なものかと少し悩んだりもした。




