1話
奥の倉庫から戻ってきた山上は、片車輪にファイルの束を持たせていた。そして、それらをどさっと机に置かせた。
「何かあったか?」
「いえ、パスワード設定されてて開けませんね。無しでも開けたんですが…そっちは空でした」
「用心深いやつだな。パスワードなぁ…そういや、あいつ何かあってもパソコンからデータ引っ張ってなんて誰かに頼んだ事なかったな」
「そうなんですか?念のいった事で…何か思い付きませんか?俺はデスク系はさっぱりですよ」
お手上げのポーズを冬四郎が見せると、山上も首を傾げながら片車輪を見た。だが、片車輪にはもっと分からない。
「そうだなぁ…むつの事だからなぁ…その辺にメモがあったりしないか?」
「…それなら設定なんてしなくて良いですよね?」
そうは言ったものの、むつもアナログな所がある。よくパスワードを忘れたりするようで、携帯の設定の時にはメモを取っていたのを冬四郎は思い出した。それに、本当に大切な物は紙に書いて残しているのも知っている。冬四郎は、椅子に座ったままでどこに置いたらすぐに手を伸ばせるか考えてみた。とりあえず、引き出しだなと思い、上から順番に開けていった。
以外と引き出しの中には物が入っていない。入っていても、札の束やボールペンの芯だった。冬四郎は奥に何かないかと手を突っ込んでみた。だが、何もない。仕方なく手を抜こうとすると、シャツに何か触れた気がした。




