第4話 制圧、勉強、練習
このお話を読んでくれている方々がいらっしゃるようで嬉しいです。
最初の方はどうしても説明が多くなってしまいますが、世界観の把握に必要ですのでご容赦ください。
2017/12/05 読みにくい箇所を修正しました。
初めて魔法を使った俺は動揺していた。
ルークに『魔力』を放った時とは違い、意識的に対象(山賊)に向かって『魔法』を放ったのだ。
「オ、オギャア(ど、どうしよう)オギャア|(あいつ殺しちゃったのかな)オギャア(どうしよう)……」
『ちょっとは落ち着いて! 大丈夫、生命反応はあるから死んでないわ』
「オギャアァ(良かったぁ)」
『そんなことより、その垂れ流しっぱなしの魔力を抑えて』
そんなことよりって、結構大事なことだと思うんだけど。
魔力を抑える?何を言って……?!
俺の身体からなんか出てる?! 虹色の、光?
虹色の光がオーロラのように変化しながら、
俺の身体から止まることなく出続けていた。
『それがあなたの魔力光よ』
魔力光って、何?
『魔力持ちって、生まれながらに適合属性を持っているの。分かりやすい例だと、火属性なら赤、水属性なら青、みたいにね。今みたいに感情の高ぶりが激しい時なんか、オーラ?みたいに身体から出てくるのよ。まあ練習して出さないようにするんだけどね』
なるほど。じゃあ俺のこの虹色って……。
『まあ、全属性よね。レアなやつも含めて、正真正銘ぶっちぎりの全属性。多分歴史上初めて』
歴史上初って……俺、まったり生活を望んでるのに、そんないらなくない?
『普通は才能にも向き不向きあるはずで、設定時にも影響受けるんだけど。エーリって前世から素直?っていうか断りきれないっていうか。その影響か、これは無理って才能がほとんどなかったのよ。破滅的なのは私の方で弾いたけど、選ぼうと思えば選べるっていう感じだったわ。どうせだからかなり詰め込んでみました! 』
そう言うミルクは、どうだと言わんばかりに胸を張っている。
服を着ていてもわかるいい胸である。
……ふう。
ようやく冷静になってきた。
そういや出さないようにするのはなんで?
『見た目で属性モロバレだからよ。赤一色だったら火属性以外は苦手だってわかっちゃうでしょ。戦闘時にそんなことバレたらすぐに死ぬわよ。まあ、エーリの場合は違う意味でヤバイけどね』
はい?
『だってそうじゃない。歴史上初めての全属性持ちなんて、国が放っておくと思う?両親から引き離されて、赤ちゃんの時から人体実験。大きくなったら戦争への投入。属性って結構遺伝するから、望まない結婚、または生殖とかもあるでしょうね。まともな人生送れないわよ』
ヤバイじゃん! すでにモロバレじゃん!
『あ、それは大丈夫』
え?
『周り、見てみたら?』
周り?
言われて俺は、お包みの中からできる限りの周囲を確認した。
見える範囲では立っている人がいない。
『あんな高威力広範囲の音魔法食らったら、事前に防壁張ってない限りは防げないわ。山賊村人関係なく、みーんな気絶してるわよ』
音魔法ってのを使ったのか。死んだり、重症者とかは?
『誰も死んでないわよ。一番の重症といえば、エーリが吹き飛ばしたあの山賊ね。全身打撲で、全治2週間てところかしら。その他はせいぜい擦り傷程度よ。まあ、起きたらちょっとクラクラするでしょうけど』
とりあえず、よかった。
『なら、次は魔力を抑えましょう。いい機会だから練習だと思いなさい』
練習って……。いや、わかった。どうすればいい?
『魔力が作られているのは、お臍のちょっと下。エーリには丹田って言ったほうがいいかしら?そこから出てるわ。まずは意識を集中させて、魔力の流れを把握しましょう』
丹田か。
意識を集中すると、確かにそこから温かい何かが出てきているのがわかった。これが魔力か。
そこから全身、それこそ細胞ひとつひとつにまで魔力が流れ、満たしているのがわかる。
流れはわかった。後はどうすればいい?
『そこまでわかったら、どんな形でもいいから、調整するの。今が100として、ゆっくりと下げていくイメージね』
今が100。ゆっくり下げる。少しずつ。少しずつ。
念じるように自分の身体と相談しながら、出てくる魔力を減らしていく。
抑えようとすると反発するようだ。なだめるように、ゆっくりと減らしていく。
『そう、上手よエーリ』
ミルクが微笑みながら見守ってくれている。
赤ちゃんが立とうとするのを見守るように。
まあ、実際赤ちゃんだけど。
そうして、長い時間をかけて俺の魔力放出は終わった。
暫くすると、何人か気がつく人が出始めてきた。
「う、な、何が」
「頭が……」
「うぅ」
起き上がろうとするが、フラフラでまともに立てないようだ。
グルグルバットの後みたいだな。
ミルク先生、これからどうしたらいいんでしょう?
『とりあえず気絶したふりして様子を見ましょう』
は、はーい。