第5話 1日の終わり
2017/12/05 読みにくい箇所を修正しました。
俺の音魔法(らしい)で倒れた山賊と村人が、少しずつ起き上がってくる。
「クソ、何が起こったというのだ・・・」
「ミ、ミリア無事か。アルフレッドも動けるか?」
「え、ええ」
「頭がクラクラしやがるが、なんとか無事だ」
よ、よかった〜。ミリアは無事だ!
ルークやアルフレッドはどうせ大丈夫だろうとは思ってた。
それにしても、なんか村人の方が早く復活してるような。
『まあ初めての魔法でほぼ無差別だったとはいえ、元々山賊に向けた魔法だったからね。そこに差が生まれたんでしょう』
なるほど、自分でやっておいてなんだが、威力が半端ない。
魔法はいっぱい練習しよう。
そうこうしているうちに、かなりの数の村人が復活し、山賊に立ち向かっていった。
「奴らまだ態勢が整ってない! 今ならやれる。抑え込め! 」
「うおおおおお!!! 」
アルフレッド、ルークを筆頭に、復活した村の男達が山賊に襲いかかる。
山賊達はまだフラフラしており、抵抗らしい抵抗が出来ないまま縛り上げられていく。
最終的に先ほどとは真逆の構図となり、山賊を300人越えの村人が取り囲むこととなった。
「形勢逆転じゃな」
勝ち誇った顔をした村長が、リーダーに向かって言い放つ。
めっちゃ腹たつ顔してるな。さっきまで青い顔してたくせに。
「何だったんだあれは。この村にあんな魔法の使い手はいなかったはずだ! 」
「くっ! 」
リーダーが叫ぶ。村長がたじろぐ。
「か! 」
か?
「加護だ! あ、あれはこの村に施された神の加護だ! 」
「加護?・・・・・・! あの魔法色、まさか全能神の!?」
全能神?そんなのいるんだ。
『う、うん。いる、よ』
ふーん。
「その通り! この村には、全能神様のご加護が施されておる! 」
「おお! そうだったのか! 」
「さすが全能神様だ! 」
「ああ、全能神様・・・」
「マジかよ・・・」
「とんでもねえ村を襲っちまった」
「でも村の奴らも気絶してなかったか?」
村人達から歓声と全能神連呼。
山賊達からは恐怖と疑問の声が聞こえる。
「お前達は全能神、ミルク様の御力に敗れたのだ! 」
全能神、ミルク様?
ミルク様って、ミルクのことか?
『いやぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 』
顔を真っ赤にしたミルクが両手で顔を覆い、イヤイヤをしながら走っていく。
「ミルク様だ! 」
「やはりミルク様は偉大だ! ! 」
「全能神ミルク様! 」
その後もミルク様コールが300人越えの村人から発せられる。
ミルクフェスである。
それにしてもなんか叫ばれてますよ? ミルク様?
『ふええええ〜。もうやめてよぉ〜。恥ずかしいぃ』
ミルク様は両手で顔を覆ったまま、しゃがんで小さくなっておられる。
とても可愛くていらっしゃる!
「ミルク様ー! 」
「ああ、ありがとうございますミルク様」
「さすが全能神のミルク様だ! 」
「ミルク様ばんざい! 」
村人のミルク様コールは止まらない!
ミルク様は体育座りをして足の間に顔を埋めていらっしゃる!
もうただのイジメにしか見えない!
「静まるのだ皆の者! 」
そんな中、村長が村人を制する。
「ミルク様への感謝は、この後宴として盛大に執り行うとして、
まずはこの者達の処遇を決めねばならぬ」
ミルク様への感謝の宴が、この後執り行われるようである。盛大に。
ミルク様からはすすり泣く声が聞こえる。
「全能神の加護とて、おいそれと起きるわけではないはずだ! なぜ今回に限って・・・」
リーダーから苦渋の声が聞こえる。
まあやられた方にとっちゃ訳わかんないよな。
村人を襲ってる時には何もなかったのに、いきなりだったもんな。
「そ、それはな」
村長が目だけを動かして言い訳を探している。
・・・なんかこっち見てるな。
口元が悪い感じに引き上がったぞ。
「それはな。今宵この村に新しい生命が生まれたからである」
バッと皆の視線がこちらに注がれる。
「この子が・・・」
ミリアが驚いた顔で俺を見つめる。
凄く久しぶりに見たけど、驚いた顔もかわいいよ、ミリア。
「今宵生まれた新しき生命を、あろうことか害そうとしたお前達は、全能神ミルク様の怒りを買ったのだ」
まあ、俺に色々才能与えてくれたのはミルクだから、
あながち間違っているわけでもないか。
「くぅ! まさか伝説の全能神の加護とは。やはり国軍を追われた我らには、不運ばかりが付きまとうというのか! うおおおおお! 」
涙を流しながら地面に額を擦り付け、リーダーの慟哭が村に響き渡る。
なんかとてもめんどくさい背景を聞くことになりそうだ。
・・・リーダーがノリノリで話しているが、もはや聞く気になれんな。
ふわあ。色々ありすぎて眠くなってきた。
『生まれてからここまで展開が早すぎたわね。私もなんだか・・・とても疲れたわ』
全能神ミルク様もお疲れのようである。
遠くを見ているその目に色がないが、俺は悪くないと思うんだ。
「オギャア(ミリア)オギャア(眠くなってきた)オギャア(あやしてくれ)」
「おーよしよし。怖かったわね。あら、オシメが濡れているわ。ルーク」
「ん?ああ、もうこの場は大丈夫だろう。先に家に戻らせてもらおう。少なくともこの場に赤ん坊は必要ない」
ルークがノリノリの村長に許しを得てきてくれ、俺は家に帰ることが出来た。
めんどくさい話はノリノリの村長や過去を語り出した山賊に任せて、とりあえず眠ることにする。
家のベッドで、生後数時間で経験したことを思い返してみる。
魔力の暴発、山賊の襲撃、魔法の行使と山賊の撃退(村人もみちずれ)、魔力の抑制練習。さらにはミルクフェス前夜祭と、イベントは盛りだくさんだったな。
退屈しないとみるべきか、前世より忙しいというべきか。
まあ、明日ゆっくり考えよう。
おやすみ、ミルク。
『ん。おやすみ、エーリ』
こうして俺の誕生1日目は、ようやく終わりを告げたのであった。




