第44話 『お話し』と初めて
続きです。
キャッキャウフフなお風呂の翌日です。
もうキャッキャウフフでいいじゃないですか。
2018/02/03 読みにくい箇所を修正しました。
「エーリきゅんごめんなさい!」
「おはよう皆。よく眠れたかい?」
「はいエーリ様。落ち着けました。また一緒に寝たいです」
「私も久し振りに人肌を感じて安らいだわぁ。毎日でもいいわよぉ〜」
「なんかミルク村を思い出すね! アンジーちゃんとももっと仲良くなりたい!」
「はい。私ももっと皆さんと仲良くなりたいです」
いやー、昨夜はパーティメンバー皆で、キングサイズのベッドで寝た。
その効果か、皆の結束は大分固まってきたな。
「ごめんなさい! ごめんなさい! もうしません! 許してください!」
「今日は天気もいいし、観光しようか」
「いいね!」
「ジャンヌさんに相談すれば、いい観光ルート教えてくれるかな」
「あの子なら問題ないわねぇ」
「あー、アンジーのパーティメンバー登録もしよう」
「エーリ様。ありがとうございます」
「お願い無視しないでぇ!!」
さあ、出発だ。
グイ!
「エ、エーリきゅん……ごめんなさい」
「……何が?」
顔は見ない。
「あ、あの……昨日のことです」
「気持ち良かったんでしょ? なら良かったんじゃない?」
「エーリきゅんの気持ちを考えずに突っ走ってしまって……自分勝手でした」
「俺が止めてなかったら、最後までイクつもりだったでしょ?」
「……恐らくは」
「オードリー」
目と目を合わせ、ニコっと微笑んであげる。
「あ、名前。えへへ」
「今までありがとう。さようなら」
「……え?」
「パーティメンバーに手を出すような奴は、いらないと思うんだ。赤ちゃんの時も含めれば、2度目だよね? 反省していないってことだよね? ミリアとの約束を破ったんだよね? アンジーも入って人数も増えたし、鑑定もルイーズがいれば大丈夫だ。【集団鑑定】のメリットも、連携を強化すればいい話だし。あれ? オードリーがいる意味って、何? ないよね」
「え……あの……わ、私」
目が泳いでいる。
アイデンティティを揺さぶられる気分はどうだ?
「オードリーは冒険者になるって夢を叶えたじゃないか! もう、一人でも大丈夫だろ?」
目が見開かれる。
その目から大粒の涙がぼろぼろと流れ出す。
「うあぁああああああ! そ、そんなこと言わないでぇ!! もうエーリきゅんなしじゃ生きていけないのぉ! 何でもするから、許してぇ!! エグッ! ヒック! うえええぇえん……」
「ふーん。何でも?」
「グス……うん」
「悪い。皆先に下に降りてくれるか? ちょっと『お話し』するから」
「ヒィ!」
「わかったー。ほどほどにね〜」
「いけないことしたらダメよぉ?」
「わかりましたエーリ様」
パタン。てってってって。
「オードリー。何でも言うこと聞くんだよな?」
「は、はい」
さぁ、調教しようか。
「じゃあまず、今日からそのエーリ『きゅん』てのやめような? オードリーはもう17歳の大人だろう? その大人がその呼び方は恥ずかしいよ」
「は、はい。あ、あの……なんと呼べば……?」
「エーリでいいだろ? 旅の最初の頃はそうしてくれたじゃないか」
「わかりました、エーリ」
「わかってくれて嬉しいよ。じゃあもう約束破らないよな? 今後昨日みたいに俺だけじゃなく、誰かの都合を考えずに行動して相手に迷惑をかけたら……」
「か、かけたら……?」
「消えろ」
目のハイライトを消して言ってあげる。
「は、はい……」
「3度目はないぞ?」
オードリーの顔が絶望に沈む。
世界が終わることを告げられたかのようだ。
無表情のまま涙を流すその姿。
……そろそろだな。
「俺はさ、初めて見たオードリーが忘れられないんだ」
「…………え?」
「俺が赤ちゃんの時だよ。覚えてるだろ?」
「はい。誰も通れない結界があるって言われて……。全能神様の結界だから通れたら実績になると思ったんです……」
なるほど、冒険者になるための実績作りだったのか。
「最初はあまりに遠くて嫌でした。結界を通る時もドキドキしてて。でも、エーリk、いえエーリを見た時、何故だか『この人だ』って、思ったんです」
一目惚れ、とは違うのかな。
なんか感じるものがあったんだろうか。
「あの時のオードリーは、自分の仕事に誇りを持って凛とした表情をしていて、精神世界で下着姿になった時だって、余りに完璧で、見惚れてしまった」
頰に赤みが指す。
「まあ、その後すぐに一度目の裏切りにあうんだけど」
「ぐ!」
「なんであんなことしたの? 他の子にもああだったの?」
だとしたら本当にヤバいぞ。
「いえ! ……信じてもらえないかもしれませんが、あんなに理性が飛んだのは、エーリの時だけです。他の子の時は、普通に抱っこしたり遊んで終わりでした。……下着姿にはなるんですが」
そこはなるんだな……。
「私、子どもの時に感情を抑えて育ったせいか、ああやって時々爆発してしまうことがあるみたいで……。そのせいで昔、両親を殺しそうになりましたし……」
「俺も産まれた直後にやりかけたよ。でもな、オードリー。俺達は魔法とか才能面で、優れたところを持ってる。俺だって暴走したら、簡単に人なんか殺せる。どの属性の魔法でも、ゲムでも、一瞬だ。でもさ、だからこそ俺達は、自重を覚えなくちゃならないんだ」
「はい……」
力なく項垂れるオードリー。
「昨日だって、普通に入れば俺もドキドキして、皆で楽しい時間を過ごせたと思うんだよ。でもあんなに無理やり、俺の気持ちも考えずに欲望のはけ口みたいにされたらさ、誰でも楽しくないと思わないか?」
「ヒック……。ごめんなさい。久しぶりに訪れたエーリと一緒の時間が嬉しくて、楽しくて……。最近はルイーズさんに取られ気味でしたし、魔力でも勝てなくて、胸も負けてますし……。チャンスだと思ったら頭が沸騰して……」
あー……最近ルイーズと色々接触が多かったか。
鑑定して負けたって聞いた時は驚いたけど。
そりゃ専門分野でトップクラスが負けたら落ち込むわな。
「その件は俺も悪かったと思ってる。オードリーの気持ちは痛いほどわかってるけど、どうもがっつかれてその気持ちに応えようと思えなくてな」
「すみません……。これからはちゃんと我慢します」
「じゃあテストだ。本当に抑えられるか」
くい、チュ。
「え?」
唇を抑え、キョトンとしている。
「俺の初めてだ。二人だけの秘密だぞ?」
さあ、どうなる?
もしも、これで暴走するなら、その時は……。
ポタ
ポタポタ
「……嬉しい」
涙を流しながら、そう呟いた。
良かった。 大丈夫みたいだな。
「私で……良かったん、ですか? 初めて、なんですよね?」
「ああ、言ったろ? 初めて見たオードリーが忘れられないって。あれ多分、一目惚れだよ。俺はオードリーが好きなんだ。だから、気持ちは同じでいたい」
「こんな……私で、いいんですか?」
「ああ、そんなオードリーがいいんだよ。まあ、夢の一夫多妻制を目指すかもしれないけど」
「……エーリは魅力的ですから、きっと今後も集まっちゃいますね。でも、1番目は私、なんですよね?」
「ああ、そうだ。これからはスキンシップも増やすから、俺が好きな、今のオードリーでいてくれるか?」
「……はい!」
そう返事をするオードリーは、今すぐ抱きしめて襲ってしまいたくなるほど、可愛らしい笑顔をしていた。
「……エーリ?」
「! ああ、じゃあ行こうか。皆が待ってる」
「はい」
外に出ると、3人が待っていてくれた。
「終わったの?」
「ああ、待たせたな」
「皆さん、ご迷惑をおかけして、申し訳ありません。これからもよろしくお願いします」
「うん! なんかキレイになったね、オードリー」
「あらあらぁ? なぁ〜にかあったわねぇ? 」
「お風呂、楽しかったです。これからもよろしくお願いします」
「ふふふ。ありがとうございます」
ふう……。
正直ホッとした。
オードリーを失うかどうかの瀬戸際だったからな。
告白も出来たし、良かった……。
「さあ、今日は観光しよう。いっぱい楽しんで親睦を深めたら、夜に鑑定だ」
「「「「はーい」」」」
俺達は笑ってギルドに向かった。
オードリーを残すために頑張りました・・・。
見ていただいた皆様に感謝を!




