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第3話 山賊と初体験

2017/12/05 読みにくい箇所を修正しました。

「アルフレッド、山賊ってのは本当か? 数は?」


 ルークは先ほどとは打って変わって、真剣な表情をしている。

 むう、少しカッコいいとか思っちゃったぞ。

 おちゃらけた態度から真剣な態度に急変させることによって、

 いわゆるギャップ萌えを引き起こしているのか。

 ミリアもこれで……くっ!


『はいはい。バカなこと言ってないで、ちゃんと聞いた方がいいわよ。エーリにも関わって来る話なんだから』


 わかってるよ。えーと。


「ああ、見える範囲で騎馬が10。歩兵が20はいる。周囲にも隠しているだろうから、全部で40はいるだろう」


 40か。はじめての山賊だから多いのかどうかわからないな。


『おつかいみたいに言わないでよ。まあこの村の規模からして妥当かしらね』


 この村の人口は?


『えーと? 318人ね。あなたが生まれたから今は319人』


 ふーん。そういや、なんで俺こんなに冷静なんだ?

 前世はよくテンパってあたふたしてたと思うんだけど。


『色んな才能を詰め込んだからねー。大抵のことには対処できると思う。

 まあ赤ちゃんだから出来ることは限られちゃうけど』


 何も出来ないよりは、少しでも出来た方が俺もいいと思う。ありがとな、ミルク。


『えへへ。良かった。やりすぎちゃったかな、とか思ってたけど、そう言ってくれて嬉しい』


 そう言うミルクは、髪をくるくるさせながら頬を染め、チラチラこちらを見ている。


「ルーク、どうするの? 逃げると言っても、この子は……」

「ミリア、生まれたんだな、おめでとう。こんなことがなければ盛大に祝ったんだが」

「ありがとう。でもいいのよアルフレッド。こんな時代ですもの。それよりも」

「ああ、これからどうするかだな。防衛の方はどうなっている?」


 俺がミルクとイチャイチャしている間も、大人達は真剣に話していた。


「村の奴らもそこそこ戦えるはずなんだが、山賊達が強い。

 ほとんど何もさせてもらえずに制圧されていってるな。

 予想よりも早くここまで来るぞ。急げ!」


 外からは悲鳴や物音が聞こえて来る。どんどん近づいて来ているようだ。


「わかった。ミリア、準備しろ」

「ええ、わかったわ」


 二人はいそいそと準備を始める。

 俺も産婆やミリアの手によって、おくるみに収まった。温い。


「よし、いくぞ!」

 バターン!! 扉が蹴破られた。山賊であろう奴らが数人部屋に入って来る。


「動くな! ケガしたくなかったら大人しくしてろ!」


 山賊の一人が剣を向けながらこちらに叫ぶ。

 他の奴らは周辺警戒を行なっている。素人目に見ても練度が高い。


「く! もうここまで」


 この部屋の出入口は一つ。

 戦って勝てるならいいが、ここまで来た速度を考えると増援もすぐだろうし、現実的じゃないな。

 何よりここにお荷物(俺)がいる。


「……何が望みだ」


 剣を持ち、ルークが訪ねる。その目は油断なく山賊に向けられている。


「金と食糧。武器と馬。とりあえずはな。大人しく渡せば殺しはしない」


「わかった。アルフレッド、武器を置け。言う通りにしよう」

「はぁ。しょうがないか。ほらよ」


 ルークはそう言うと、剣を鞘に納めて山賊に渡した。

 それを見たアルフレッドも、息を吐いてそれに倣う。


「話が早くて助かる。ではこちらへ来てもらおうか」


 山賊に促されて移動する。初めて外に出るが、夜だったのか。

 向かった先は、村の広場かな? そこには多くの村人が集められていた。

 周りは武器を持った山賊に取り囲まれている。


「おお、ルーク、ミリア。無事だったか。子も無事に生まれたようだな。おうおう、可愛いのう」

「村長も無事で何よりだ。皆無事か?」

「ああ、抵抗した時に何人かケガはしておるが、死んだ者はおらん」


 村長らしき人物が話しかけて来る。

 俺を見て優しい眼差しを向けて来たが、どうせなら若い女性を希望する。


 それにしても山賊強いな。


『山賊だって色々な過去を持っているからね。元冒険者だったり、元兵士だったり』


 うーん、山賊に落ちる理由が思いつかないが、そう言うものなんだな。


 そうこうしていると、山賊のリーダーらしき人物が馬に乗ってやって来た。

 革の鎧に身を包み、一目で鍛えられた身体を持っていることがわかる。

 俺たちの部屋に来た奴らの練度を考えて、相当な強さであることは想像に難くない。


「村長はどこか」


 渋めのハスキーボイスでリーダーが訪ねた。


「私でございます」


 村長も負けじと渋めの声を出して来た。張り合うなよ。


「すでに伝えていると思うが、我らは村の食糧ひと月、武器は剣と槍を10ずつ。矢束を50、馬を10頭、金貨100枚を望む。大人しく出せば村人に危害を加えないことを約束しよう」


「そ、それは……」


 ミルク、金貨100枚って地球だといくら?

 この村って他の要求含めて出せるの?


『大体100万円くらい。他のも含めて出せるけど、村の運営考えるとギリギリってとこかしら。このリーダー、かなり正確な予想してるわね。多分事前に調べてないと無理よ』


 こちらの情報は筒抜けか。これじゃ嘘も言えないな。

 村長も青い顔してるし。おい、声で張り合ったりしてた時の威勢はどうした。


「返答はいかに?」


 リーダーの圧力が高まる。

 こ、こえー。ゴゴゴとか効果音聞こえて来そうだ。

 前世だったら確実にチビってるわ。


 ……つか尿意が。?!


 にょ〜〜〜〜


 あれ、我慢できん! おいミルク! これなんでだ!?


『赤ちゃんだからに決まってるでしょ。出したい時にだして、飲みたい時に飲むの。当たり前じゃない』


止まらない! ヤバイ!ヤバイ ヤバイ!ヤバイ!


「オギャア! (マジか!)オギャア! (33にもなって!)オギャア!! (恥ずかしい!!)」

『ちょ?! エーリ!!』


 思わず泣き出してしまった。さすがに動揺する。

 出来てたことが急に出来なくなることの衝撃は、他人が思うよりも大きいのだ。


 !!


 感情を高ぶらせてしまった俺から、膨大な魔力が溢れ出す。

 それは鳴き声を増幅させ、大音量となって村に響いていく。


「なんだ?!」

「うわあ!」

「キャアァ!!」


 山賊、村人関わらず、突如おこった出来事に対応できずにいた。

 そんな中、俺たちの近くにいた山賊が、音の発生源が俺であることに気づき近づいて来た。


「くっ! この馬鹿でかい鳴き声はそいつからか! 女、その赤ん坊を寄越せ!」

「汚い手でこの子に触らないで!!」


 バシッ! 山賊が伸ばした手をミリアが弾く。


「このアマ!」

「キャア!」

「やめろ!!」

「離せこの野郎!」


 ドカッ!


 山賊がミリアの髪を引っ張り、ルークが山賊に掴みかかった。

 ルークは殴られて倒れてしまう。


 その間も俺の鳴き声は止まらない。


「うるせぇんだよこのガキャア!」


 剣が振り上げられ、ミリアが俺をかばう。





 ……この女性(ひと)





 触るな!





 キイン!

 ドン!


 その瞬間、自分の魔力が何かに変換され、体外に放出されたのがわかった。

 山賊が10メートルほど吹き飛び、小屋を破壊して見えなくなった。


『凄い……ちゃんと魔法が発動してる』


 ミルクは驚いているが、仕出かした俺が一番驚いている。


 あーーーーー、これ、どうしよう。

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