第2話 誕生
2017/12/05 読みにくい箇所を修正しました。
暖かい。
全身を包むこの温もり。
気持ちが休まっているのを感じる。
ああ、このままずっとこうしていたい……。
……。
……。
……。
ん?なんか、圧迫感があるぞ。
ちょ、待っ! まだ寝てたい!
くっ! 俺は負けん! 負けんぞ!
「はやく産まれなさい!」
ミルク!? 産まれなさいって……あっ! あーーーーー!
「オギャア! (寒い!)オギャア! (よく見えん!)オギャア?! (ここはどこだ?!)」
「おめでとう! 男の子だよ!」
ん? おばさんぽい声だな。産婆か?
「はぁ、はぁ……。私の、赤ちゃん」
「オギャア! (俺のお母さんか!)オギャア! (よく見えん!)オギャア……(美人でありますように)」
いい声だ。きっと美人のはず……!
「よく頑張ったな、ミリア。それにしても、鳴き声がときどきおかしいような……?」
「オギャア! (ソンナコトナイヨ!)オギャア! (フツウダヨ!) OGYAA」
「はぁ、はぁ、元気に、産まれたんだからいいじゃない。ルークったら」
ふう。どうやら問題なく産まれることが出来たようだ。
異世界言語がわかるか心配していたが、問題なく聞き取れている。
母親の名前はミリア。父親はルークか。アナ某とかじゃなくてよかった。
だがよく見えないな。
赤ちゃんの目が認識してるのは白黒で、ほとんど見えてないという話は本当だったか。
『見たい?』
白黒の砂嵐の中に、小さいミルクが出てきた。
すぐに会えるってのはこういうことね。見れるのか?
『ちょっと待ってね〜。よっと』
急に目の前が真っ白になる。
「オギャ! (明る!)オギャアァ(うーんと)オギャア!! (見えた!!)」
初めてみた母親は、声から予想していた通り美人だった。
父親、もイケメンだな。……くそう、リア充爆発しろ!
『あ、ダメ!』
ボン!! 部屋に置いてあった花瓶が割れた……。
「キャア!!」
「なんだ!?」
「オギャ? (は?)」
おい、ミルク。何が起こったんだ?
『あー、ごめん。説明不足だった』
どういうことだ?
『魔力持ちの赤ちゃんって、魔力を抑えることが出来ないの。だから、感情が高ぶると魔力を放出しちゃうんだけど、普通はちょっと風が出て髪が揺れるとか、その程度なのよ。でもほら、エーリは転生者だから、全体的に能力が高くて……」
産まれてすぐ父親を爆殺しかけた、と?
『て言うか何よ? 爆発しろだなんて」
わ、悪かったよ。でも前世はフツメン……だった(はずだ)から、イケメンで美人の奥さんがいるとか、殺意が湧いても仕方ないだろう?
『仕方なくない』
ミルクの目が冷たい。
ごめんて! なるべく感情を抑えるようにするから!
『わかればいいけど。危ないから本当に気をつけてね?」
「オギャア! (任せとけ!)」
「! あっ、ビックリしたわねー! よしよし」
ミリアは俺が爆発に驚いたと思い、あやしてくれる。うん、とてもいい。
「なんだったんだ? うーん、まあ、怪我がなかっただけいいか。おーヨチヨチ。ビックリちまちたねー」
「オギャアー(赤ちゃん言葉とかないわー)オギャアー(引くわー)」
ま、心配してくれるだけいいか。
そんなことより現状把握だ。
適当に泣きながら、周りを見渡す。
俺を包んでいる布は、綿ぽいな。
この場にいるのは俺の他にこの世界の両親と産婆。
母のミリアの服装も綿の服か。
ルークも同じ感じだが、ところどころ革を使ってるのを見ると、農民ではなさそうだ。
壁は木がそのまま見えてるし、窓にガラスが嵌ってないから、少なくとも貴族とかの上流階級ではないことはほぼ確定、と。
てことは、どこかの村の猟師の息子、的な?
『ピンポンピンポーン! 正解でーす。産まれてすぐ父親を爆殺しようとした赤ちゃんとは思えない推理力だね!』
あの、ほんとすいませんでした。
『ほんとだよ。まったり生活を目指してるくせに、産まれてすぐ殺人とか笑えないから』
ミルクだって説明し忘れてたじゃないか。
転生する前に教えといてもらえれば俺だって感情を抑えることぐらい出来たぞ。
『ごめんなさい……』
まあお互いに反省したところで、他に注意事項ってあるか?
『そうね。赤ちゃんらしく振舞うことと、「鑑定士」には気をつけてね』
「鑑定士」ってのは?
『国家公務員て言うのかな? 生まれた子供のステータスを確認して、戸籍に登録するの』
戸籍もちゃんとあるんだな。それの何が問題なんだ?
『ステータスを確認できるって言うことは、その子の才能もわかるってことなの。国にとって有用だと判断したら国の養成所にいれるし、害がありそうだと判断すれば……排除するわ』
排除って、殺すのか!?
『ええ。昔「下克上」と言う才能を極めた人がね、国を乗っ取っちゃったことがあるのよ。結局鎮圧されたんだけど、この世界の支配者階級の人たちは余程恐ろしかったんでしょうね。見つけたら殺すっていう裏の法律を作ったの。表立っては戸籍の作成と、優秀な人間を国に召抱えるって名目でね』
親には国に召抱えられたと思わせ、国の治安も守れるってわけか。腐ってるな。
『為政にはきれいごとだけではダメってことらしいけど、人間族だけよ、こんなことするの』
人間は可能性の塊だって、誰かが言ってたな。よくも悪くも、どんなものにでもなれるって。
『そうね。そう思うわ』
そう言ったミルクの表情は、悲しみに満ちていた。
何か思い出させちゃったか。よし、話題を変えよう。
他、他に注意事項はもうないか?
『え?うーんと……あ! 科学知識は話しちゃだめよ?」
? なんで?
『魔法と科学って相性が良すぎるのよ。もしも科学知識が持ち込まれたら、
私の予想よりもずっと早く、世界の終焉が来るでしょうね』
流石に言い過ぎじゃないか?
『転移するミサイル』
……なるほど。危険だな。肝に銘じる。
『とりあえず最低限これだけ守れればいいと思う。鑑定士は私がごまかしておくわ』
できるなら頼む。
『ん。任せて』
よし、これでなんとかなりそうだ。
それにしても、生まれてまだ数十分なんだが、色々あり過ぎて疲れたな。
赤ちゃんだし、寝てしまっても大丈夫か。
ミリアにあやされるに任せて、寝てしまおう。
あー、癒される。まったり、正にまったり。このまま続けばどれほど幸せか。
バターーーン!!
「ルーク! ミリア、無事か!?」
その時、部屋の扉が勢いよく開けられ、髭面で大柄な男が入ってきた。
手には武器、剣を持っている。
「おいおい、アルフレッド! なんだよ、どうした?!」
ミリアが出産中だというのは知っているだろうに。
「山賊が来た。お前たちは早く逃げろ!」
……俺のまったり生活は?




