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第29話 愛しき妹

エーリの妹のお話です。


ちょっと長いですが、どうぞ。


2017/12/27 読みにくい箇所を修正しました。

「おぎゃぁ! おぎゃあ!! んぎゃあ! おんぎゃあ!!」

「お母さん! 産まれたよ!!」

「良くやったぞミリア!! 女の子だ!」


 その日、俺に妹が出来た。


 妹はとっても可愛い。俺の天使だ。

 この子を泣かす奴は……殺す♡


 ……冗談だけど。


 ただ、この子を大切に思っているのは本当だ。

 血の繋がった兄妹。

 前世一人っ子だった俺は、初めての妹が可愛くて仕方がない。

 そのうち「にーたん!」とか呼んでくれるんだろうか……。


 …………いい。


『なぁ〜〜にが「いい」よ!』


 ん? どうしたミルク?


『……はぁ。まさかエーリがシスコンになるなんて……』


 そう言うなよ。初めての妹だぞ? デレもするわ。

 それに、俺より酷い奴がいる。


『あぁ〜〜。ルーク、ね』


 ルークは毎日早めに帰っては妹にベッタリである。


「天使ちゃーーーーん!」

「あい! んきゃぁ!」

「…………っはぁ!!! あ〜〜、なんて可愛いんだ。もう食べちゃいたい!! ちゅっちゅっちゅっちゅ!!」

「きゃははは!!」


「……ルーク」ガシッ!

「?!!!!!!」


 瞳のハイライトが消えたミリアが、ルークを連れて『お話し』をしに寝室へ向かう。

 これが毎日である。

 別れたり、しないでね?


『はあ……で、今日だっけ? 名前が決まるの」


 そう! 村長が変な名前を付けたらキレる自信がある!!


『何なのよその無駄な自信は! っと、来たみたいよ」


 トントン!


 家のドアがノックされ、村長が入ってきた。


「村長様! 遅いよ!」

「時間通りだろう!! はぁ。お前はこの子のことになると途端にダメ人間になるな」

「え? 何言ってるの?」

「はぁ〜」



「エーリ? いらっしゃったの?」

「………………」


 寝室からミリアと(ルーク)が出てきた。


「おお、ミリアとルークも相変わらずだな!」

「今日はよろしくお願いいたします」

「村長! 変な名前付けるなよ!!」

「黙れバカ親が!! ……はぁ。な〜んでこんなのになってしまったのだ」

「本当に。流石にそろそろ別れようかと悩む時もあります」

「お母さん?!」「ミリア?!」


 このままだと本当に別れそうだ。

 ……ミリアについて行こう。


「茶番はここまでだ。この子に名を授けるぞ」


 村長が何かもごもご言いながらうんうん唸っている。

 村長独自のルールに従って付けているらしい。



 やがて



 クワッ! っと目を見開いた村長が叫んだ!



「この子の名は『ステファニー』だ!!」


「「合格!!」」 ビシ!!

 俺とルークが村長にサムズアップする。


「ステファニー……あなたの名前はステファニーよ」

「あうう。だぁあ。ぁい!」

「そう、気に入ったの。良かったわね、ステファニー」


 ステファニーも気に入ったようだ。

 やるではないか村長。


「村長、いい名前をありがとう!!」

「ありがとうございます」

「村長様ありがとう!!」


 三人で深く頭を下げる。


 思っていたよりもいい名前でホッとした。


 こうして、ステファニー、愛称ステフが爆誕した。



 ……この子が後に数々の二つ名で呼ばれることになろうとは、この時の誰も知る由はなかった。



 ステフはすくすく育った。

 女の子だからだろうか、言葉を覚えるのも早く、1歳を迎えるまでには


「まんま、ぱんぱ、えーい」


 と、俺たち三人のことを言葉にできるようになった。

 ミリアは俺の時と変わらず愛情を注いでいる。

 でも、やはり同性だからか、着せる服を作っている時は少し嬉しそうだ。


 俺たちはと言うと……


「ステフ!! お兄ちゃんと遊ぼうな!」

「いや俺だ!! パパと遊ぼう!! お兄ちゃんは修行で忙しい! きっとそうだ!」

「仕事してよお父さん!!」

「今日の仕事は終わりましたー!」

「適当言いやがって!」

「んきゃぁ!! えーい! ぱんぱ! めぇ!!」


「「か、可愛い……!!」」


「ほら二人とも。ステフに怒られてるわよ。仲良くなさい」

「「はーい!」」


 バカ父、バカ兄ではあるが、一定の制御は出来るようになった。

 ……『お話し』のおかげで。




 そんなある日。

 ステフの鑑定を行うため、鑑定士がやってくることになった。

 俺の時はオードリーだったが、その後【神域】を通れる上級鑑定士が見つかったため、毎年その人が行ってくれている。

 温和なおじいちゃんで、みんなからも好かれている。


 しかし


「今年はあの方、来れないそうよ?」

「な、なんでですか?!」

「ギックリ腰ですって。棚のものを取ろうとした時に……」

「代わりの方、すぐに見つかるかしら?」

「どうかしら。エーリの時も結構かかったものねぇ」


 心配である。

 とっとと鑑定してもらって、俺が魔法を教えるんだと息巻いていたのに。

 そんなことを考えていると、


「「鑑定士」様がいらっしゃったぞ! 【神域】も問題なかった!」


 そう言ってルークが飛び込んできた。


「本当!?」

「ああ、今ここへ村長が案内してる!」

「さ、準備するわよ。二人とも動いて!」


 ミリアの号令の下、慌ただしく準備する。

 よし、準備万端整った!


「ルーク、鑑定士様をお連れしたぞ」

「どうぞ!」


 ガチャっと扉が開き、部屋に入った鑑定士様がファサッっとフードを取る。


 そこには



「お久しぶりです。皆さん。……エーリきゅん」



 大人っぽく成長した、特級【鑑定士】オードリーが立っていた。



 ……場に緊張が走る。


 ミリアは笑顔だが、いつのまに持ってきたのか、手にはドス黒いオーラを滲ませた【絶望】を握っている。

 なぜこの包丁が【神域】内に存在できるのか、ミルクにもわからないとのこと。


「オードリー、久しぶりだね。随分大人っぽくなったみたい」

「あ、ありがとう。エーリきゅんのために一生懸命お手入れしてるから……」


 そう言って頰を赤くするオードリー。

 昔よりも感情が外に出やすくなっている。

 これくらい大人しければ、本当に完璧なんだけどな。


 なお、転生者であることを明かした翌日辺りに、オードリーにはバレていることは両親に伝えてある。

 それにしても……


「……お母さん、殺気が漏れてて怖い」

「あら、ごめんなさいね。つい……」


 殺気を収めてくれはしたが、【絶望】は離さないミリア。


「そ、そういえばなんでオードリーが来てくれたんだ? 特級「鑑定士」様は暇なのか?」

「暇じゃないよ! 普通は来れないんだけどね。そんなことよりエーリきゅん。私、ついにやったよ!」

「? 何を……って、まさか!」

「うん! 私、冒険者になったの!!」


 そう言ってギルドプレートを見せてくれるオードリー。

 材質はわからないが、D、と書いてあるようだ。


「そっか! 良かったなオードリー! おめでとう!」

「ありがとう! あっ理由だったね。それで、近くまで来てた私に声がかかったの。【神域】を通れる鑑定士を探すのも手間だし。私はフリー扱いにしてもらったから、出来る範囲で鑑定士の仕事をするって契約」

「そうか。じゃあ今日はよろしくお願いします。鑑定士様!」

「もう。ふふ、任されました」


 俺が努めて和やかにするように振る舞ったお陰で、場の緊張感は少し和らいだ。


「えっと。この子ですね」

「ええ、お願いします。名前はステファニーです」

「わかりました。では早速。我、オードリー・アールの名において、ミルク村、ステファニーの鑑定を行う。我が問いに答え、汝が全てを我に見せよ。我は神が汝に与えし進物の名を汝に与える。我は汝を害さぬことをここに誓う。汝が我を受け入れるのなら、魂の扉を開き給え。【鑑定】」


 紫の魔法色が出て、オードリーとステフを包む。

 俺の時と違って、ステフを襲うこともないだろうし。


 そう思って見ていると、オードリーの額に汗が浮き出ている。

 時々ビクっとなったりして、どこか様子がおかしい。


「何か、あったのかしら」


 俺の時と大分違う反応に、ミリアも不安そうだ。


 やがてゆっくりと魔力が消えていき、オードリーの目が開いた。


「なにか、あったのか? 途中汗掻いたりビクっとしたりしていたぞ?」

「え? ああ、そう、でしょうね」


 オードリーは心底疲れた、という感じで椅子に座る。


「え、と。まずは鑑定結果からお伝えします。まずステファニーは魔力を持っていません」

「え?」

「? 珍しいことではありませんよ。5人に1人はそうですし」

「……魔法を、教えてあげたかったんだけど」

「こら、エーリ。自分の都合を押し付けないの。他のことでも大丈夫でしょう?」

「そっか。そうだね!」


 遊ぶのに魔力は必要ないしな。


「それで、続きですが、特に先天性の病気も持っていません」

「良かった」


 ルークがめっちゃ安堵してる。

 いつもの様子だと、なんか持ってても態度が変わるわけでもないだろうけど。


「ただ……」

「た、ただ?」


「普通と違うところが何点か。まず、この子は天才です。私の言葉を理解して、精神世界ではありますが、言葉を発しました。『初めましてオードリー。私はステファニー。よろしくね』そう言われたんです。どうやら産まれてからのことも全て覚えているらしく、『お父さんとお兄ちゃんが時々ウザい』と言っていました。……エーリきゅん」


「「ハグッ!!」」


 ルークと俺が膝をつく。

 痛恨の一撃を喰らってしまった。


「あと、私の記憶も見られたので、過去に何があったか、……エーリきゅんのことも知られました」

「?!」


 理解、できるからか。


 これは、後で家族会議だな。


「私の暴走も見られたので、『家族に迷惑かけないでね。かけたら言いふらすから』と脅しも……」

「す、ステフ」

「んきゅ?」

「可愛い!!」

「違うでしょ!」スパン!!


 すぐ誤魔化されたルークをミリアが叩く。



「天才なのは他にも。魔力の流れから、魔力の基本的な考えはすでに理解しています。正直末恐ろしいですね。……それと、これが今回一番の驚きだったのですが……」

「まだあるの?!」

「ええ。この子、『絶魔』体質です」


 ? 聞き慣れない言葉だな。


「『絶魔』というのは、魔法を任意で無力化出来る、魔法使いの天敵のような体質です。この任意というのが恐ろしくて、自分に都合がいい魔力、回復魔法などは受け入れても、攻撃魔法などはレジスト出来ます。どんな魔法でもです。私も過去に一人だけいた、としか聞いたことがない、超レアな体質です」


 ミルク、何かした?


『何も……。私も驚いて、他の神に連絡取ってるくらいだもの」


 マジか……。




 どうやら俺の妹は、天才で、魔法使いの天敵だそうです。







やっぱり普通の話は落ち着きます。


諸事情により、本日はこれが最後になると思います。

また明日の投稿をお待ちください。

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