表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/76

芋煮会、再び。

芋煮会。これは神聖な行事。

この街に住む皆が楽しみにしている年に一度の冬の行事。

芋煮会。それは笑顔も争いも生む行事。

味噌かしょうゆか。豚肉か牛肉か……争いは尽きない。

……そして、この街に住む皆が、年に一度だけ理性を手放す日。

もう1年経ったんだなあ……

私、アルドはそんな事を思いながら警備員の白いホイッスルを吹いた。


「並んでください!芋煮は逃げません!はい!そこ、列を乱さない!」


2度目の芋煮会ともなれば、大体の手順が分かってくる。

……そして、今回もうちのパーティしかいないのかここの警備員……

なんとも微妙な気持ちで、警棒を列整理に使った。

見た目は冷徹冷酷非情参謀系。

よくそう言われるアルドだったが、今はただの大イベント警備員であった。

しかも2回目。慣れている。


「アルドさん!お疲れさまです!これ、ネロさんからお昼のおにぎりですって!」

「エルナさん!ありがとうございます。ネロさんにもお礼、伝えてもらえますか?」

「でも、ほら、ネロさんは……去年と同じ、あそこですから……」


指さされた方を見る。広場で一番高い家の屋根の上で、ネロさんは全体を見張っていた……


「ここまで同じだと、エンツォさんが心配ですね……彼、去年みたいに芋煮論争とかしてサボってないでしょうね?」

「今年は大丈夫みたいです!きちんとミアさんと鍋から配り分けてましたから!」

「今年は……まだゴブリンの姿は見えませんか?」

「見えたらネロさんがホイッスルで教えてくれる手はずになってます!」


ビシッと敬礼!のポーズをとるエルナさん。

微笑ましいが、前回は大変情けないところを晒してしまったのだ、危機感を感じるのは許してほしい。

1年前は、街の人達の芋煮愛にすら負ける程度のへっぽこ冒険者だった私たちが、この1年。

どれだけ頑張ったことか!

ゴブリンの3体や4体、来るがいい!

……と思うときほど、来ないんですよね……

向こうの鍋のジオさんも、列整備頑張っているようです!私も……!

そこへ、

ピーーーーーィ!ピーーーーーィ!

ネロさんのホイッスルの音……?けど、2回も鳴らすなんて……?

ネロさんがあちこちを指差します。

子供のような影……ゴブリンが……

何匹いるんだ!?こんなの私の計画には無いぞ!?

街の人たちもすっかりいきり立っています……!


「今年も来やがったなゴブリンめ!!!」

「今年も私の芋煮を渡すものですか!!!」

「シメて鍋に入れてやる!!!」


……いや、最後のは止めましょうよ。

おいしい芋煮会をテロ会場にするつもりですか?

私たちは、ホイッスルを吹きながら集まります!


「皆さん!下がってください!ここは警備員に任せて!……ジオさん!エンツォさん!ミアさん!」

「おう!」

「正義のために!」

「まかせといて〜!」


前衛3人。


「エルナさん、ネロさん……準備は!?」

「い、行けます!」

「…………済まない、遅れた。」


後衛2人。


そして中衛に私!

いつものパーティの形の、完成だ!


「広範囲魔術を使います!前衛!できる限り……叩いちゃってください!」



「水よ、」


カウント1。

ミアさんが盾で吹き飛ばしたゴブリンに、ネロさんがボウガンで矢を放つ。


「わが力を持って……」


カウント2。

ゴブリンと切り合うジオさんに、横からエンツォさんの突撃!

キレイに決まって、ゴブリンは吹き飛ばされます。


「目の前の敵を……」


カウント3。

ゴブリンの反撃で腕に棍棒を叩き込まれたジオさん!

武器を取り落とすのはどうにか免れたものの、腕がしびれて動けない!

そこへ、エルナさんの回復!

再びジオさんはゴブリンと斬り合い……今度は斬り倒しました!


「氷となって討ち滅ぼさん!」


詠唱、完了!

ビシビシビシィッ!

ゴブリンたちは纏めて5体ほど氷像と化しました。


「おう、兄ちゃんたちやるねぇ!」

「だから一般の方が鍋でゴブリンをしばき倒さないでくださいよ!!!」



そうして……私たちはなんとか10体ほどのゴブリンを倒したものの、やはり残りのゴブリンは芋煮愛に狂った街の人達に鍋やおたまでボッコボコにされていたのでした……

だから一般の方は武器を置いてくださいって言ってるでしょう!!!


「去年よりはずいぶんマシじゃねえか!10倍だぞ10倍!」


ジオさんは笑って慰めてくれますけど……

やっぱりかっこよく街の人達を守れるようになりたいですね。


「アルドさんったら、高望み〜!」

「うん!正義のためには、良いことだ!」

「……芋煮に被害がない……それが一番。」

「……やっぱり、街の人が一番強かったような気がしますけどね……」

「そうですね……」


そうして、私は、考えるのをやめた。

芋煮愛、恐るべし!

……いや、愛というか、執念では?

なんでこの街の人達、こんなに芋煮会が好きなんでしょうね?

……まあ、私たちも、もうこの街の一員なんですけどね。


最終回となります。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ